《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第7-27話 突破する攻略者たち!

「朽ちろ」

ルザルが一言そう呟いた。階層主(ボス)部屋の真ん中で、言ったルザルのがわずかに宙に浮かぶ。次の瞬間、階層主(ボス)部屋全が線のように走ると、それらが一瞬だけ間をおいて、が消えると共に階層主(ボス)部屋の壁や石が全て々に砕け散った。

「……ッ!」

ハヤトはそれに巻き込まれないように地面を蹴ってルザルから離れる。ルザルはを流し過ぎたのか、ぼうっと焦點の合わない瞳でハヤトを捉えようとしているが微妙に視線がずれている。

ハヤトは好機だと見抜き、指を掲げた。ぼうっとが輝き氷柱(ツララ)が生。3つの氷の棘が回転を伴いながら発。ドドドッ!! 連続して撃音が響くとルザルに向かって氷柱(ツララ)が飛ぶ。

しかし必殺になるはずの氷の槍は、ルザルの前で見えない何かに直撃して靜止。

「流石に止めるか」

元よりこの程度で決著が決まるとは思っていない。相手は“覚醒”スキルの持ち主。勝つためにはそれに匹敵するほどの“めちゃくちゃ”で相手に挑まなければいけない。

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「天原ハヤトを……」

きがスローになっていくルザルの口がいた。ハヤトの足が地面を離れる。相手の“覚醒”スキルは言葉にしたものをし遂げるスキルだ。ならば、口に出す前に終わらせるだけの話。

ハヤトは近づくと同時に氷柱(ツララ)をルザルの背中に生、発。彼のに氷柱(ツララ)が刺さると、ルザルは大きく態勢を崩して地面に足を付けた。

「俺のよ、治れ」

ルザルがそう言うが、彼のに変化は訪れない。彼はそれをじたのか、ぐっと歯を食いしばると立ち上がった。

(何で何も起きなかったんだ……?)

《“覚醒”スキルは萬能ではない。スキルを発するにはスキルの持ち主が、発結果を現実と誤(・)認(・)しなければならない》

(ああ、流石にそれは知ってるが……)

のシミュレーションが正確であればあるほど“覚醒”スキルはり立つ。逆に言えば、ここが出來る人間がいないから“覚醒”スキルの持ち主はないのだ。

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の治癒は、の構造を正しく知っておかなきゃならない》

(ああ)

《だから、発しなかった》

(…………そうか)

その時、ハヤトの心の中に一つの冷たいが流れ込んだ。それは、哀れみであった。もし、自分でスキルの“覚醒”へと至ったのであれば、ここで彼は自分のを治せていたのだろう。だが、彼は人の力で“覚醒”へと至った。だから、こうなった。

《……アイツの“覚醒”スキル、“正義を詠え、(オムニオ・)言葉でせ《ヴォルカルム》”は言葉で出したこと対する想像力が詳細でなければならない。だからこそ、今まで“覚醒”に至っていなかったんだ》

ルザルは立ち上がろうとして、何度か地面に足をついたが自分のって転んでしまった。

《……“覚醒”スキルはただのスキルじゃない。あれは普通のスキルのように技の伝達手段として簡易的に梱包(パッケージング)されたものじゃないんだ》

ヘキサの言葉がハヤトの耳を打つ。

《人間の3本目の腕、そういっても過言じゃないほどに本人の能(・)力(・)そのものに近しいものなんだ》

ハヤトはルザルを止めるべく地面を蹴った。彼の目はこちらに向いていないが、それでもやらなければいけない。ルザルの口がき、ハヤトの直上に巨大な巖が生み出されるとそのまま落下。『星穿ち』で地面を蹴り上げると、『彗星(ほうきぼし)』で撃力を地面に撃ち返して出。

《腕のかし方が分からない人間に、無理やり腕を付けたところでどうしようもないんだよ》

(モノは、それを知っていたのか……?)

《知らないはずがないさ。アイツはそれを知っていた。ルザルも、多分こうなることは分かっていたんだろうさ》

(………………馬鹿だな)

《…………だから、ハヤト。止めてくれ。私の仲間の過ちを、ここで止めてくれ》

(分かってる)

“【投擲】【エネルギー増大】【運作】をインストールします”

“インストール完了”

ハヤトのにスキルがる。彼は先ほどと同じようにルザルの背後から氷柱(ツララ)を撃ったが、今度はあらぬ方向へと無理やり矛先をずらされた。

《偏向力場の展開だ》

何を言っているのかは分からなかったが、何が出來ているのかは理解出來た。遠距離ではこれ以上攻撃出來ない。

「天原ハヤトを、拘束する」

ルザルがくようにそう言うと、ハヤトの足にガチン! と足枷がハマった。

「クソッ!」

一歩踏み出そうとした瞬間に仕掛けられた金屬製の足枷を、ハヤトは足を大きく広げることで無理やりに引きちぎった。彼の尋常ならざるステータスにかかれば金屬製の拘束など効果はないに等しい。

ルザルはハヤトが足枷をちぎった音を聞いたのか、再び何かをしようと口をかした。だが、そこにヒロが飛び込んで。

「黙れ」

彼の顎を右ストレートで砕いた。

僅かに視線をかすと、ヒロが戦っていた敵が彼の後ろから迫っていた。どうやら自分の敵をほっぽりだしてハヤトの援護に回ってくれたらしい。その心意気に謝して、ハヤトは生み出した氷柱(ツララ)を2発、ヒロの戦っていた敵に撃った。

真橫から援護撃が飛んでくるとは思っても見なかったその年の両足をハヤトの氷柱(ツララ)が貫く。彼はバランスを崩して地面に倒れ込んだ。そのまま僅かに地面をってヒロの足元にやってくると彼は冷徹に短刀を敵の首に添えた。

ハヤトはその一連のきが終わるよりも先にルザルに駆け寄ると、何もしゃべれなくなっていた彼の口の中に特濃の治癒ポーションを流し込んだ。彼はわずかに震えたが、それを確かに嚥下すると、一際激しいが彼のを包み込んだ。

流石に部はズタボロ、心臓には肋骨が刺さっており、大量失で死にそうになっている。さらにはヒロの渾の右ストレートで顎まで砕かれるという全ズタボロ狀態だったルザルのでも、流石に治癒ポーションLv5があれば完治まで持っていける。

「……毒かと、思ったぜ」

「…………」

ルザルは治ると同時にそう言って、その場に倒れ込んだ。

「……負けだ。流石にこんな終わり方は想像していなかった」

「うん。まあ、俺も正直こんなじに終わるとは思ってなかった」

「なあ、天原ハヤトよぉ」

「うん?」

「これまでのお前の人生、楽しかったか?」

「まさか」

「人を恨んだか?」

「ああ……」

「社會を恨んだか?」

「そりゃあ、そうだよ」

「それでも、ダンジョンを攻略するのか?」

「勿論」

「そうか。ああ、お前はそうなんだな」

ルザルは全てをれたようにそう言った。

「羨ましいよ。まっすぐなお前が、本當に羨ましい」

「そうでもないぜ」

彼はそっと目をつむると、そのまま靜かに眠りに落ちた。

「…………よくこの狀況で眠れるな」

《無理やりな“覚醒”のせいで脳に負荷がかかったんだ》

ヘキサがそう言った。

「こっちも終わったぞ!」

アイゼルがそう言うと、両方の剣が砕かれた二刀流の剣士が地面に崩れ落ちていた。次の瞬間、ルザルたちの姿が白いに包まれるとぼうっと丸く変化してすっと上へと飛んでいった。

「やりますね! やりますね!!」

階層主(ボス)部屋の天井、その中心から『核の』が顔をだす。

「よくぞここまで來ました!」

託は良いからさっさと死ねや」

ヒロがそう言って襲い掛かる。

「待てヒロ! まだ俺たちはダンジョン突破の報酬貰ってない……」

と、聲を出すよりも先にヒロの短刀をいなして『核の』はヒロの腹部に一撃。次の瞬間、ヒロのが弾丸のようにはじかれて階層主(ボス)部屋の壁に直撃した。

「うん。好戦的なのは何よりですけど、ちょっと生き急ぎすぎじゃないですか?」

そういって核のが両手を2回たたいた。

「ダンジョン突破の報酬を……」

ハヤトの言葉が『核の』に屆くよりも先に世界がぐるりと回った。剎那、4人が立っていたのは何も無いただの荒野。

「ここなら存分に戦えるでしょう」

「ダンジョンの……報酬を…………」

「ああ。そうみたいだなァ!!」

アイゼルは魔劍を抜くと同時に斬りかかる。『核の』はそれを左の手の甲で流すと、右の手でアイゼルの服を摑んで、ジャブを三連撃。

ドッ! ドッ!! ドッ!!!

目に見えて分かるほどにアイゼルのが陥沒して、彼はを吐いた。

「突破の……報酬は…………?」

《…………諦めろ》

「そんなぁ……」

(´;ω;`)

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