《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第7-28話 本と攻略者たち!
「くっそぉぉおおおおおおお!!!」
アメリカダンジョンでやらかした経験から、今度こそはちゃんと報酬がもらえると思ってたのにこの仕打ちである。ハヤトはわずかに涙をためながら走った。それはもう、全力で走った。
全力で走って、地面を蹴った。『地』を利用した高速移。空気が粘のように重たくなると、その中をたった一つの拳で貫いていく。
「『星走り』っ!」
空気が避ける音と、ハヤトの拳が『核の』に激突した炸裂音はほぼ同時に響いた。『核の』はハヤトの拳の一撃を右手でけ止めた。
「ォぉおおッ!!」
吠えると同時に拳を振りぬく。『核の』は大きく後退。荒野に2本の筋を殘して遙か後方へとバックした。その瞬間、の背後からヒロが出現。『核の』の背後からぞっとするほどの速さで首に短刀を押しあてると、そのまま橫に引いた。
だが、聞こえたのはを切り裂く音ではない。
重たい金屬同士を激突させたような異様な重低音。の首には僅かに傷がるものの、それは短刀でつけられたものとは到底思えない代で。
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「せいッ!」
『核の』はヒロの腕を摑むと、そのまま大きく背負い投げ。ズドンッ! とヒロのが宙を舞うと、そのまま地面に叩きつけられた。背骨を強かに打ち付けたヒロは痛みに顔を歪める。
のまでがら空きになった隙を見逃さず、ハヤトは氷柱(ツララ)を生。空いた線に叩き込まれた5つの氷柱(ツララ)の直撃を嫌っては飛び上がった。それもそのはず。この氷柱(ツララ)は貫通特化の攻撃タイプではなく、直撃した場所を凍らせるための代。
流石の『核の』でも、きを止められるのは嫌がったのだ。
ハヤトは追撃の氷柱(ツララ)を撃ちながら、『核の』に薄。の視線はハヤトに向いている。ハヤトは槍を構えたまま疾駆。
“【槍神】【狩人の神髄】【墮天】をインストールします”
“インストール完了”
ぐん、とハヤトのが加速する。生み出した紅の槍が、ハヤトの手に吸い付くとハヤトは槍を投擲。【槍神】のスキルに包されている『投擲』関連のスキルを全発。『核の』のを貫くための一撃は、しかしの両の手でしっかりとけ止められる。
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ハヤトはそのタイミングで槍を霧散。『核の』の投げ返しを警戒したそのきは、が投擲モーションを取った時に上手く働いたと思った。ハヤトは新しく生み出した槍で踏み込むと、『核の』に連撃を叩き込む。
ハヤトの腕はスキルによって自駆。空気が圧され、熱を持つほどの神速の連撃にはしかし対応した。だがその顔には余裕の笑みは浮かんでいない。真剣な表でハヤトの攻撃全てをいなしきった。
だがそこに待ち構えていたのは、ハヤトの手の平。そっとの頭に手が添えられると両足が撃発。
「『星穿ち』」
自壊を伴わない『星走り』を頭部にもろにけたの頭は大きく後ろに吹き飛ぶと、はなんとか対応するべく地面に手をついて一回転。しかし、それだけでは衝撃が吸収しきれず、何度かを縦回転させながら地面にしりもちをついた。
「ちょっとー! それはあまりにもひどくないですかぁ!?」
「何が酷いって?」
上から舞い降りたアイゼルは流れる様に剣を振るった。は脳震盪を起こしているのか、回避にわずかにれが見える。ハヤトはその時、何か大(・)き(・)な(・)力(・)がヒロの方に渦巻いているのをじた。
何か大技を放とうとしている。アイゼルもそれに気が付いている。ならばこそ、ハヤトはアイゼルともつれ合うようにしている『核の』に向かって氷柱(ツララ)を5連。アイゼルはそれら全てがに當たるように立ち回る。
の両足に3発。右手と腹部に1発ずつ當たった氷柱(ツララ)は凄まじい速度で氷つくと、のを完全にホールド。それを見計らったかのようにアイゼルは全力でから離れると、天を突き破って1つの飛翔が落下してきた。
大きさは5mほど。秒速數キロという信じられない速度で落下してくるその飛翔は巖石に鉄が混じった隕石。それは荒野を覆っていた曇り空を突き破って出現すると、『核の』に向かって落ちていく。
《無茶苦茶だな……》
(……俺もそう思う)
は凍り付いたで何を思ったか。ヒロの隕石は、彼のに直撃した。轟音と衝撃波に耐えるべくハヤトは耳を塞いで目を閉じた。『星界からの侵略者』の時でもそうだったが、凄まじいエネルギーだ。
どれだけが頑丈な『核の』と言えども、流石にこればっかりはどうしようもあるまい。
しばらくして、全ての塵が落ちるとの姿が見えた。『核の』は、全を震わせながら、それでもそこに立っていた。だが、右足と右手が無くなっておりぼたりぼたりとが地面に滴っていく。
の皮はいたるところが焼け、熔け落ちていたが底から見える骨は明らかに鈍で、とうてい人のとは思えなかった。
「……隨分、ド派手な技ですね」
「初見じゃあ、どうしようもないだろ?」
ヒロはふらつきながらそう言った。前はあれを撃っただけで気絶していたが……と思って見ると、手にはMPポーションが握られていた。あの技って撃てばMP全消費する技なのかな?
使い勝手クソ悪そう……。
しかし、これはチャンスだ。ハヤトは槍を生み出すと投擲。全スキルを使ったその一撃に、はわずかに視線をかしただけで、なにもしなかった。ズドンッ! と、到底生のに激突したとは思えない音を立ててのに槍が突き刺さった。
そこにアイゼルが飛び出す。彼の剣が黒く煌めくと、のを上半と下半に両斷した。『核の』の上半が重力に引かれて地面に落ちる。そして、沈黙。
「……え、終わり…………?」
最初にそう言ったのは、アイゼルだった。
「いや……。流石に、もうちょっとあるだろ…………」
「うん。俺もそう思う」
ヒロもハヤトもまさか『核の』がこの程度で終わるだなんて思っていない。
「だいせいかーい!!」
ぴょーん、と飛び上がったのが凄まじい速度で修復されていく。
「実は私、皆さんに倒されてから々考えたんですよ」
ハヤトは素早く槍を生み出して構える。ヒロも、アイゼルも、に向かって武を構えた。
「ちょーっと私個人の力じゃあ勝てないなぁって。飴をあげすぎるのも考えものですよね」
「……何が言いたい」
「だから、あの人たちに協力してもらったんです。ほら、いっつも同じ戦い方してたら皆さんも飽きちゃうでしょ? だから、これは私なりのサービスですよ!!」
そう言ってが手を叩く。その瞬間、4人は一瞬にして移。
次はギラギラとした太のと信じられないほど乾燥した空気。地面は足が埋まるほどの砂漠。
「私だって強くなってるんですから!」
『核の』がにっと笑って手を叩くと、上から巨大な口(・)が落ちてきた。それだけではない。人間のパーツ。腕や目や鼻や耳がいくつもいくつも上から落ちてくる。
「想像力ってのは厄介ですよね。人間の本當の価値ってそこにあると思うんです、私」
唄うようにそういうの背後から巨大な口がハヤトめがけて襲い掛かってきた。
「だから、私もそれをに著けたいと思いまして」
ハヤトはその口を一突きすると、巨大な口はわずかに震えるとそのまま消えた。ということは、これは幻覚なのか。
「ちょっと頑張ったら、“覚醒”しちゃったんですよね」
てへっとは笑う。
《ふざけてるな》
(……ああ)
“覚醒”スキル、“え、全ては夢の中(マニア・グロウリア)”。
ち(・)ょ(・)っ(・)と(・)でたどり著けるようなものではない。
ハヤトたちは歯噛みすると、最悪の2段階目の口火を切った。
リターン・トゥ・テラ
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