《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第7-30話 進む世界と攻略者!

“対象に適を確認“

“全【覚醒】スキルをアンロック”

“使用を許可します”

今までの“スキルインストール”がそうであったように、“覚醒”したとしてもスキルがインストールされれば使用方法が勝手に頭の中に描かれる。だから、ハヤトの腕はひとりでにいていた。

手には刀。描くはシオリ。

「力を借りるぞ、シオリ」

『核の』はハヤトの行を察知。ハヤトの攻撃を防ぐべく距離を詰めてきたが、それよりも先に刀が振るわれる。

「“萬象斷つは我にあり(エスト・ウルティネス)”」

ルザルの敗因は、“覚醒”スキルを引き起こすための現実の誤認が上手くいかなかったことにある。だから、それを見ていた“スキルインストール”はそれを踏まえて“スキル・インテリジェンス”を構築した。

宿主が現実を誤認できないのであれば、自らがしてしまえばいい。

さすれば、結果はこの通り――。

ハヤトの振るった剣は、『核の』を斷ち切り、空気を斷ち切り、雲を斷ち切り、空に浮かぶ三日月すらも斷ち切った。

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「ちょっと!? それはズルじゃないですか!!」

「ズルなんてねえよ」

が両斷されたままの『核の』にハヤトは照準を合わせる。

「言い殘すことはあるか?」

「何で負ける前提なんですか!!!」

ハヤトは納刀。腰を低くし、居合の構え。

天原に居た時は、自分に才能がない事を悲観した。どれだけやっても上達しない刀の腕に、自分の才能を憎んだ。けれど、今なら思う。あそこで學んでいてよかったと。

神速の抜刀。描くは澪。

「“神に至るは我が剣なり《イグジティウム・デウス》”」

次の瞬間、ハヤトのは『核の』の背後にあった。斬るという過程を排除し、斬ったという結果だけをもたらす神の抜刀は一切の防が不可能。どれだけくても、どれだけ強くても。発した時點で斬れることは確定だ。

そして、『核の』はついに首を刎(は)ねられた。だが、は生きている。そんなことは分かっている。

「【誓約(ルール)】:『核の』に告げる」

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紡ぐは言葉。描くはルザル。

「そ、それは駄目ですって!!!」

首だけになったぶ。

「今後一切の延命活ずる」

「人殺しィ!!!」

“正義を詠え、(オムニオ・)言葉でせ(ヴォルカルム)”。それはしっかりと、『核の』を縛り上げた。

「……人じゃねえだろ」

「まあ、そうなんですけどね」

すとん、と首が砂浜の上に落ちた。

「……喋れんの?」

『核の』は首だけになったというのに、何も無かったかのように口を開いた。

「殘り數分の命ですけど」

「はぁ……」

勘弁してくれ……。と言わんばかりに顔を手で覆ったハヤト。

しかし、これで終わりだ。

「これで終わりだと思わないことですよ! いずれ第二、第三の私が!!!」

「お前、そんな雑魚キャラみたいなこと言う奴だっけ?」

「雑魚キャラ!!?? 名譽棄損ですよ! 名譽棄損!!!!」

「ダンジョンに名譽なんてあんのかよ」

「無いですね」

「うぉい」

いちいちやり辛いんだよなぁ……。

こいつ……。

「どうです? 達はありますか?」

「達?」

「これで地球に落ちてきた7つのダンジョンは全部クリアですよ。おめでとうございます」

「……終わった気がしないんだよなあ」

「ああ、そう言えば突破報酬しがってましたね。要りますか?」

「え、今くれんの? 貰う貰う」

「そこに私のが転がってるのでそれあげます」

「要らねえ……」

ただの首無しの死じゃねえか。

「冗談はさておいて、今回は皆さんの勝利です」

「……なあ、お前さ。本當に地球がしかったのか?」

「はい?」

「『アイツら』は人を進化させたがってた。『星蝕(ほしばみ)』は地球の核までびて、側からエネルギーを全部吸い取るんだと言っていた。お前さ、どっちがしたかったんだ?」

「両方ですけど」

「両方?」

「いや、何で片方だけしかやっちゃダメなんですか!? 誰かがそうやって決めたんですか!!?」

「めんどくせえな。お前……」

小學生かよ。

「二兎を追う者は一兎をも得ずと言いますか、まあどっちも出來なかったんですけどね! 貴方たちのせいで!!!」

「おう」

「どうせ私は都合の良いですよ!! 都合が悪くなると捨てられるところまで含めてぴったりですね! 私に!!!」

「お前よく地球壊そうとしてたくせにそんな偉そうに出來るよな」

「良いじゃないですか! 貴方だって中卒のくせにそんなに稼げてるの誰のおかげですか!? 私ですよね!! 謝してくださいよ!!!」

「いや、ヘキサのおかげ」

「浮気だ浮気!!!」

「ぶっ殺すぞ!」

その時、砂浜の幻覚が崩れてきた。

……これは、者が力盡きた時に起きる現象だ。

「ああ、やっと死ぬんだな」

「は? 何でそんな清々しい顔なんですか?」

「いや、ようやく地球の寄生蟲が死んでくれると思うとやり遂げたーって思えるよ」

「くっそー! 私はヒキニートか!!!」

「リアクションが取りづらいなぁ、もう」

「ちくしょう! 変のザムザみたいな扱いしやがって!! 怒りましたよ!」

「黙って死んでくれねえかなぁ。しかも例えが分からんし……」

「あ、そうそう。私のを見てくださいよ」

「あん?」

ちらり、とそちらをみると首が無くなりぐったりしているは人差し指でグッドの構えをしながら砂浜に沈み込んでいく最中だった。

「……二度と戻ってくんなよ」

「あ、こっちは分かるんですね」

「まあ、シオリが映畫好きだから……」

「ふへへ」

はそう笑うと、

「また、會いましょうね~」

そう言って、黒い霧になって消えて行った。

ハヤトはヘキサと顔を見合わせると、互いにうなずいた。

「……終わりか」

《終わりだ》

「本當に……?」

《ああ、本當に。これで、ダンジョンはこの星を蝕むことは無くなった》

「……そうか」

これで、ようやく終わりなのか。

「思えば、ここまで長かったな」

《半年……。短い様で、長かったな》

「まったく、疲れたよ。俺は……」

《……今日は、よく寢ろよ》

「なあ……ヘキサ……」

ふらり、とハヤトのが地面についた。

《どうした?》

ハヤトの目がとろんとしている。スキルの“覚醒”における脳にかかった負荷を回復するために、猛烈な眠気に襲われているのだ。

(ありがとな)

《それはこっちのセリフだよ》

そして、眠りについた。

「ハヤちゃんがダンジョン全クリしたんだって?」

スマホの向こう側から聞こえてくる1番聞きたくない聲を聞きながら咲桜(さくら)はため息をついた。

「なんで私の番號を知ってるんですか? というか、その報どこから手にれたんですか?」

「婚約者(フィアンセ)のことを知っておくのは義務だよ~。義務」

「切っても良いですか?」

「わぁ~待って待って!! 伝えたいことがあるから電話かけてるんだけど!」

「何かあったんですか?」

「音、聞こえる?」

ツバキが黙り込むと、代わりに電話口から激しい金屬音。戦闘音が聞こえてきた。

「何が起きてるんです?」

「カチコミみたいだね」

「カチコミって……。今日日聞きませんよ。そんな古語」

「あのね。多分、狙われてるのは私だけじゃないと思うの」

銃聲音と悲鳴。その中で“三家”のトップにたつは平然と言葉を紡ぐ。

「多分ね、これ。”三家”が狙われてる」

「クーデターですか?」

「うん。しかも相手は人(・)間(・)じゃない」

薄々じ取っていたそれを、咲桜(さくら)は黙って聞いていた。

「本命は、あなたとハヤちゃん」

その時、後ろで一際大きな悲鳴が聞こえて。

「んじゃ、あとは頑張ってね」

そういって、電話が切れた。

「まったく、暢気な人ですね」

咲桜(さくら)は車の中で思考する。そう、ハヤト側からダンジョンを攻略したという連絡をけたと同時刻。行方不明だった天也(アマヤ)が見つかったという報告がったのだ。しかも意識不明の重で。

ツバキからの電話は咲桜(さくら)が詳しい話を聞くべく病院に向かっていた最中の出來事である。

「狙いは私と、ハヤトさんですか……」

赤信號が青へと代わり、車が次第に加速。

「『百鬼夜行』。まさか、ここまでしぶとい相手だとは思ってませんでしたね」

咲桜(さくら)はそう言って、スモークガラスの外側を見た。流れる車を見ながら考えを整理しようとしたのだが、あいにくと窓の外に車は1臺として走っていなかった。

「……?」

おかしい。この時間の通量は多いとは言えないの決してなくない量の車が走っているはずだ。それが1臺も走っていない? そんなことがあるわけが。

その時、運転手が慌ててブレーキを踏んだ。

前方、フロントガラスの向こう側に1人のが立っている。車はの前方10mで完全に停止。ちらりと運転手を見ると、からを垂らし絶命していた。……いつの間に。

咲桜(さくら)は和傘を持たず、車から降り立つ。

「“草薙”家當主、草薙咲桜殿とお見けする」

10ほどに見えるは、咲桜(さくら)のそれと似たような和服にを包んでいた。

「“草薙”家を知っていて、この対応。相応の覚悟はあるのですね」

咲桜(さくら)は目の前のを見下ろす。

……勝てるか? 勝てるはずだ。

今の自分に敵はいない。そのはずだ。ならこの騒ぎはなんだ。

「覚悟? 下らないことを聞くの」

その時、桜(・)吹(・)雪(・)が(・)吹(・)き(・)荒(・)れ(・)た(・)。見ると、今まで自分を見下ろしてたビル群は無くなり、その代わりに道の端を所狹しと満開のソメイヨシノが敷き詰められている。そして、視界のギリギリ端には天を貫かんとするような巨大な鳥居がいくつも立しているではないか!

なるほど。ここは世界のどこでもない。

「“草薙”の者は腑抜(ふぬ)けたかの?」

「名乗りもしないのに口だけは達者ですね」

ここは、超級の“魔”がもつ自分だけの世界。自分だけの空間。

つまりは、“異界”。

「うむ。確かに名乗ってなかったの」

は獣の様に笑った。

「『百鬼夜行』が頭目。天(・)原(・)天日(あまひ)」

「……天原……あまひ?」

その時、咲桜(さくら)の目が驚愕に見開かれた。

馬鹿な。その名前は。

「それとも、こう名乗った方が良いかの」

はよく通る聲で名乗りあげた。

「“天原”家、初(・)代(・)當(・)主(・)。天原天日」

そして彼は右腕を大きく引き、左手を前に突き出す。

「草薙咲桜。その命、頂戴する」

語は、終わらない。

To be continued!!!!

これにて第2部終了です!!!

次に控えるは第3部!!!

楽しんでいってくださいなっ!!!

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