《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第8-3話 邂逅の踏破者!

「じょ、冗談ですよね……?」

ハヤトは掠れた聲でケイにそう尋ねた。自分でも顔が真っ青になっているのがわかる。咲桜(さくら)さんが意識不明の重? あのツバキが行方不明?

まさか……あり得ない……!

何を言われようとあの2人は“三家”のトップなんだぞ!!

護衛のレベルだってあり得なくらい高いはずなんだ。そして、何よりも……。

(咲桜さんが……ッ)

《にわかには信じがたいな……》

(こんなこと信じられるわけが無いじゃんか……)

ハヤトは震える心を抑えるようにそう言う。

「僕たちは君た(・)ち(・)の護衛だ」

「たち……?」

「ああ、『來訪者』たちも歓迎しろと言われていてね」

ケイたちの後ろを見るといまいち狀況を摑めていない顔をしたアイゼルとヒロがいた。

「ああ。そういうことですか……」

「悪いんだが、人が集まる場所には長くいられない。場所を変えよう」

「はい……」

ケイは心底疲れたようにそう言った。

「……この狀況を“伏見”はなんて言っているんですか」

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ハヤトはケイにそう尋ねた。こんなヤバイ狀況なら預言者である彼がなにも言わないはずがない。そう思って聞いたのだが、

「そうか。君たちは知らないのか。數ヶ月前に京都でテロ事件があっただろう? あれ以來、“伏見”の方は行方不明のままだ」

「……そう、ですか」

聞きたく無かった話を聞きながら、ハヤトはケイと藤堂に著いて田空港を後にした。エリナと澪はシオリに護衛を頼んだ。下手に自分の近くに居させるよりもそちらの方が安全だと思ったからだ。

「帰國早々災難だな」

「……まったくだ」

ハヤトとヒロは短いやりとりをしながら黒い乗用車の後部座席に乗り込む。

後部座席に3人詰め込むとヒロ、ハヤト、アイゼルと言った合になった。何で俺は真ん中なのさ。

「今から東京に向かう」

助手席についた藤堂がそう言う。

「安全なのか?」

「さぁ?」

「おいおい……」

「今、日本で安全な場所があったら教えてほしいくらいだ……」

彼は疲れからか見た目よりもいっそう老けて見えた。相當心労が溜まっているものだと思う。

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「つーわけでざっと1時間のドライブデートだ。楽しんでいこうぜ」

「男しかいないじゃん……」

俺がぼやくと。

《私がいるではないか》

と返された。

……そりゃそうなんだけどね。

ケイは周りの車と同じような速度に合わせると次第に加速。法定速度をきっちり守りながら、東京へと進み始めた。どうやらハヤトたち以外にも東京まで自車で移しようとする人たちは思っていたよりも多かった。

「なあ、“天原”の。お前、『百鬼夜行』って知ってるか?」

「……妖怪どもが歩き回るやつか?」

「違う。団名だ」

「知らない」

「……そうか。ここ最近、ずっと“天原”が追っていたやつだ。お前の近隣だと、三枝(さえぐさ)咲の両親を殺したのが奴らだ」

「……ああ」

“貉(ムジナ)”の件か。

人間を殺してり代わる。それは彼らの質だが、裏があったのか……。

「それが、ツバキと咲桜(さくら)さんをやったんですか?」

「そうだ」

「でも何でそんな奴らがのさばってるんです? 天也(アマヤ)は??」

「お前の弟は2日前に意識不明で見つかってる。こっちも重癥だが、“草薙”の當主よりは軽(・)癥(・)だよ」

「そ、そうですか……」

果たしてそれは喜んで良いことだったのだろうか。

それとも、悲しむべき容だったのだろうか。

「天音(アマネ)は?」

「“高原”が保護してる。つっても右足が無くなったらしいけどな」

「は、はぁ……」

あったら殘ってる治癒ポーションを譲ってやろう……。

全然兄らしいことも出來てないし……。

「話を戻してもいいか?」

口を開いたのは隣にいたヒロだった。その口調はハヤトと藤堂の両者に問いかけるようで。

「『百鬼夜行』の目的は何だ?」

「國家転覆」

「「は?」」

藤堂が言った言葉にハヤトとヒロは驚きのあまり口を開いたまま呆けた。

「國家転覆だよ。アホくさいと思うか? だが既に要所要所で國はボロボロだ。今はまだ“八璃(やさかに)”も“草薙”も殘った分家の連中が回しているが……もう一回襲撃をけたら危ないだろうな」

「今までずっと國に潛伏していた“魔”が徒黨を組んでね。天也くんが敵の中心にり込んだ時には既に“天原“の手に負える狀況じゃなかったらしい。しかも最悪なのがこの狀況を嗅ぎつけて國外からも“魔”がり込んでいるらしい。もう、めちゃくちゃだよ」

「待ってください……。”魔“が徒黨を組む? そんなことありえるんですか?」

ハヤトは顔を真っ青にしながらそう尋ねた。

“魔”は我が強い。基本的に団なんてできない。何しろどいつもこいつも自分が1番だと思い込んでいるし、弱い“魔”は弱い“魔”で強い奴らに従っているように見えて下克上を果たすタイミングを今か今かと狙っているに過ぎないからだ。

「それは、僕たちよりも君の方が詳しいだろう?」

ケイは尾行が無いかどうかを確認するためバックミラーをちらりと見た。

「……そうですね」

“魔”が連攜を組む。その可能があるか無いかで言えば……ある。例えば、“魔”を収めるための絶対強者がいた場合。下克上をどうやっても狙えないような圧倒的強者がいたら、“魔”は纏まるだろう。その強い意志のもとに無理やり軍門に下らされると言ってもいいかもしれない。

《そんな強者が出たのか……? それこそ、咲桜(さくら)を倒せるような……》

(……そんなのがいたらこの國は終わるぞ)

《それも……そうかもしれないが……》

「なあ、俺は田から東京まで自車で移したことないからなんとも言えないんだが……」

突然、ヒロがそう口を開いた。

「やっぱり平日の晝間だと、通量ってこんなもんなのか?」

「うん?」

たしかに周囲はほとんど田んぼだ。車通りがないのもうなずける。だが、まったくの零ということがあるだろうか?

「チッ。お出ましだ」

藤堂がため息をついて、元から馬鹿でかい拳銃を取り出した。ケイと藤堂がシートベルトを外す。

「お前らも外しとけ」

訳も分からないままその指示に従う。ケイが窓際にあるボタンを押して全て扉のロックを解除した。

その時、フロントガラスの向こう側に1人のが立っていることに気がついた。咲桜(さくら)さんのような和服を著て、妖艶な笑みを浮かべている。だが、歳は10ほどに見える。そのアンバランスさが異様に際立って見えた。

「ケイ」

「はい」

「轢(ひ)け」

「はい」

その瞬間、ケイがアクセルを全力で踏んだ。

噓でしょ? マジで行くの???

狀況を察したヒロとアイゼルは既に扉に手をかけている。なるほど、衝突と同時に逃げ出すのね。

…………俺は?

《天井を突き破ったらどうだ?》

(無茶言うなよ……)

「今だッ!!」

ヘキサのボケにツッコミ返した瞬間、激しくヒロの方に引っ張られてハヤトのが宙に舞う。時速にして120kmを超えた車がに激突――――する瞬間、ばした腕に車がれるとふにゃり……と車はあらぬ方向に衝撃を作されて、れることなく後方へとけ流された。

「無茶苦茶だなッ!」

ヒロが地面を転がりながらそう言った。

い、今のは“天原”の技……それも最難関と言われている『星(まどいぼし)』だぞッ!

“天原”の防技といえば『天降星(あまだれぼし)』がある。あれは自分のを通してエネルギーを自分以外に押し付ける技だが、『星(まどいぼし)』は全くの別ってきたエネルギーを、れた場所から角度をつけて外側に返すことでにエネルギーを流すことなく攻撃を逸らすことができる技だ。

技の難易度は高いが、功させれば絶対にが傷つくことのない防だぞ……ッ!

「化けめッ!!」

藤堂はデザートイーグルをに向かって連。だが、に當たった銃弾は當たると同時にボテボテと地面に落ちていく。どれもこれも貫通しない……。

有効打に、ならない……ッ!!

ハヤトはを見ながら思わず息を飲んだ。銃弾がれると同時に『天降星(あまだれぼし)』を使うことで銃弾の衝撃を地面に流しているのだ。そんなことができる人間がこの世にいるとは……ッ!!

「さて、誰が“天原”かの?」

は悪鬼のような貌を浮かべ、嗤った。

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