《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第8-7話 発見と踏破者!

「桃だよ! 桃なんだ!!」

「分かった。分かったから落ち著けって」

するハヤトを抑え込むためにヒロが、ハヤトに深呼吸を促す。

「んで、桃が何だって?」

「桃太郎の桃があるだろ。あれだ」

「あれだって……。どれ?」

「桃太郎の語にはいくつも種類があるんだ。大きく分けて3つの種類があるんだけど、その中の1つ。桃を食べたらおじいさんとおばあさんが若返って子供が出來たってやつがある」

「おー? おお! あれか! 昔ネットの雑學で読んだことがあるぞ!!」

「多分あれは仙境の桃なんだ」

「仙境?」

「桃源郷って聞いたことあるだろ」

「まあ、流石に」

「あの桃源郷に桃ってってるのはこの仙境の桃のことだ。あれは高位の“魔”が持つ“異界”……。そこに人間が巻き込まれて、帰ってきたのが元ネタって言われてるけど。その“異界”の桃は食べれば若返る。あるいは數百年生きれるようになるってのがある」

「人魚のみたいだな」

「人魚のは若返らないよ」

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「數百年の方を言ってんだ。ぶっ殺すぞ」

「…………。ま、とにかく天日(あまひ)……っぽい人は、“仙境”の“魔”と接したんだろう。そこで、どうにかして桃を手にれ、口にした。そうすれば若返るし、數百年もの間生きることが出來る」

「……なァ、お前の家って“魔”祓いなんだろ? “魔”祓いなのに、“魔”に頼ってもいいのか?」

ヒロの疑問は最もだろう。だが、天日(あまひ)は1200年前にその問いへの答えを殘しているのだ。

「良いんだよ。頼っても」

「……それ、どういう理屈なんだ」

「そもそもの話、“魔”って何だと思う?」

「は? そりゃ、幽霊とか妖怪とか……ああいうのだろ」

「まあ、そうなんだけどさ。じゃあ1つ聞くよ。悪魔と天使って何が違う?」

「何が違う? 見た目だろ。仕えてる相手……あとは、まあアレか。人を地獄に運ぶか天國に運ぶか、か」

「それは習なんだ。生きとして何が違うと思う?」

「生き? ありゃ想像上の……ってその顔じゃ現実にいるんだな……。マジか……」

ヒロはハヤトの顔をみて骨に嫌そうな顔をすると、腕を組んで考え始めた。

「あったこと無い生きを判斷できねえしなぁ……。ああでもあれか、ルシフェルとかは元々天使か。あん? じゃあ悪魔と天使って一緒なのか?」

「そうだよ。悪魔も天使も、同じ種類の生きなんだ」

「それ、怒られません?」

助手席からバックミラーを眺めて咲桜(さくら)がそう言った。

「怒られませんよ。っていうか、元々向こうの人が見つけたんですよ。同じ種族なんだって」

「そういうもんなんですかね」

「そういうものなんです。ほら、同じ人間でもアホみたいに良い人もいれば人を殺せる犯罪者だっているでしょ? あれと同じなんです。ただ、同じ種族でも人間を救ってくれる方を天使と呼んで、人を仇す方を悪魔と呼んだだけなんです。だから、厳に言えばどちらも“魔”であって、“魔”じゃないんです」

「ふーん?」

咲桜(さくら)はそう言ったが、あまり納得できていない様子を浮かべていた。

「明王の中にだって元々ごりっごりに世界をぶっ壊してた破壊神(シヴァ)が含まれてるでしょ? でも、不明王として仏の道に進む人を守ってくれる。神だって仏だって人だって誰しもが1つの側面で出來てるわけじゃないんです」

「お前の言いたいことは分かった。それで、お前のご先祖さんはその“魔”に協力を仰いだってわけか」

「うーん。もしかしたら仙人に會ったのかもね。ああ、仙人ってあれね。道教を極めた人たちのことで、凄い長生き出來るんだけど中には仙境の桃を持っている人がいるとかいないとかで……」

「お前のウンチクは大分かった。とにかく、そういう理由で若返って長生きしてるわけだな」

「そういうこと」

天日(あまひ)はそれに気づいた時に【神降ろし】を果たし、そして自分が殺してきた“魔”たちを自分の都合で殺してしまっていたことにひどく悔いたという。

もしかしたら、今の『百鬼夜行』はその償いのためにやってんのかな……。

《……そこまで分かってるなら、“魔”を祓う“天原”の中にも同じことを考えて“魔祓い”を辭めるような“天原”は出なかったのか?》

(うん? 今の“天原”には“草薙”のが流れてるんだぞ??)

《愚問だったな》

流石はヘキサだ。分かりが速い。

「ね。運転手さん。他の車はどこに行ったんですか?」

「あれ? そう言えばありませんね」

気が付けば前と後ろを走っていた“八咫”関係の車がどこにもなかった。とは言っても前も後ろも車でぎっちりなので、普通に見えなくなっただけだろう。何しろ通量が多いのだし……。

「あー、これやられましたね」

「どうやって、見つけてんだろう。分かりますか? 草薙さん」

ヒロと咲桜(さくら)がそう言いあうが、ハヤトの頭の中は「???」である。

この2人、何を喋ってるの……?

「多分、“伏見”の占いでしょう。あの人を敵に回すと恐ろしいとは言いますが、まさかここまで手ごわいとは思っていませんでしたよ」

「はっ。なるほど。そういうことですか」

「ちょ、ちょいちょい、ヒロ君さ」

「なんだよ急に気持ち悪いな……」

「これどういう狀況?」

「……気が付いてないのか?」

「何が?」

「外見てみろよ」

ヒロに促されるままに外を見ると、自分たちの前にある車も後ろにある車も廃(・)車(・)だということに気が付いた。見ると、車の上には苔がうっそうと生えている。しかも、先ほどまでこちらを見降ろしていた天樓には無數のツタが張っている。

「俺こういう廃墟好きなんだよなぁ……」

ヒロは他人事のようにそう言って、車から降りる。咲桜(さくら)は運転手に車の中に留まるように指示して、車から降りた。ハヤトはちらりと最後列で眠りこけてるメイをどうするか迷ったが、まあ放っておいても構わないだろうと思い車を降りる。

「やっぱり來たよ! あの狐さんが言った通りだね!」

「時間も場所もぴったりですね」

「しかも人數まであってるよ! 凄いね! あの狐さん!!」

見ると高速道路の淵に腰かけて2人のがこちらを見降ろしていた。彼たちは手に持っていた紙にほうっと息を吹きかけると、それらは無數の紙吹雪となってハヤトたち3人の上を彩る。

「「せーのっ」」

は息を合わせて、

「「急急如律令!」」

その瞬間、無數の紙吹雪。その1つ1つが形を変えると3m近い巨大な“鬼”となって地面に落下。周囲の車を廃車からただの鉄塊に変えながら、空から地面に落ちてきた!!

まさにそれは巨大な質量撃。

「おォッ!!」

「はぁッ!!」

ハヤトとヒロは乗ってきた車の上に落ちようとしている“鬼”を蹴ったり毆ったりして無理やりどかす。運転手は戦闘員では無いからだめだ。

「何だこいつ等!!」

「式神でしょ」

ヒロの怒聲にハヤトが返す。

「囲まれちゃいましたね」

咲桜(さくら)は困ったようにそう言った。

「これどうします?」

ハヤトがそう尋ねる。

ちらりと先ほどまでのたちを見ると、その姿はそこには無かった。既に逃げ切ったらしい。ハヤトは未だに眠っているメイを“鬼”たちをどかせながら車から救出。一方では、ヒロが運転手をおぶっていた。

「……面倒ですね。これ」

そういって咲桜(さくら)は刀を抜いた。ぞっとするほどの殺気。自分に向けられているのではないと分かっていながら、肺を無理やり握られているかのような呼吸のしづらさ。周囲にいる“鬼”は式神であり、命を知らないはずだがその場にいる絶対強者の殺意には流石に怯んだ。

「だから、さっと終わらせましょ?」

ハヤトとヒロは顔を見合わせると、一目散に逃げだした。

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