《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第8-8話 師と踏破者!
「飛ぶぞッ!!」
ハヤトはメイを両手でしっかり擔ぎ上げると、ヒロと揃って跳躍。ぐん、とにGがかかって宙に浮かぶと、そのまま高速道路の上まで飛び上がった。地面に著地した瞬間、2人は先ほどの2人組を探した。
だが、逃げ足が速いのか。既に見える範囲の中にはいなかった。
「どーする? ハヤト」
「どうすると言っても、あの2人をどうにかしなきゃダメだろう」
「そんなのは流石に分かってるよ」
しかしこちらは2人ともそれぞれ1人ずつ抱えたままなのだ。この狀態であの2人……恐らくは師だと思うが、あれを相手するのは相當にしんどい。何故なら、師のメイン火力は呪いと式神である。
ハヤトは反呪のやり方を知識としては知っているが、実際には出來ないし式神の量でごり押しされると2人は対処のしようがない訳で……。
と、そんなことを思っていたら耳をつんざくような重たい金屬音と何かが砕ける重低音が辺りに響いた。続けて視界が斜めになると、思いっきりの重心が前方へと傾く。いや、これは重心が傾いているんじゃない。地面が傾いているんだッ!!
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慌てて2人は倒れる高速道路を駆け上がると、思いっきりジャンプ。近くにあった建に剣を突き刺して壁にくっついた。
ちらり、と下を見ると咲桜(さくら)さんがどっからか取り出した日本刀を楽しそうにぶんぶん振っている。
あの人、スキル持ってないはずなのに斬撃が飛んでるんだよなぁ……。
【鎌鼬(カマイタチ)】を手にれてイキっている新人探索者にぜひこの景を見せてあげたいものである。人間、スキルを使わなくても斬撃飛ばせるんだぞ、と。
「なあ、何で日本刀で鉄筋コンクリートの塊があんなに綺麗に斬れるんだ?」
「さぁ……?」
ヒロが指さしたのは高速道路の支柱だったものだ。見るとバターをナイフで斬った時みたいな切斷面をしていた。あの人、剣を片手間で極めてるからなぁ……。
「つか、これこんなに暴れて大丈夫なのか?」
「……問題ないんじゃない? 別の世界だし……」
この世界は“異界”ではない。“異界”というのは遙か高みにある生きが持つ特有の世界のことを指す。だが、いまハヤトたちがいるのは明らかに東京を下地にして作られた世界。零から生みだされていないからここは“異界”ではない。
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恐らくは何かしらの結界の中だと考えられる。
「じゃああの結界は全部草薙さんに任せる?」
「うん。それが良いと思う。っていうか、下手に手をだすとこっちのが危ないし」
そう言った瞬間、ハヤトたちが足場にしていた建の、隣の建が縦に両斷された。
「2人とも! ここは私に任せてください!! さっきの2人を探しに行ってください!!!」
「それは良いんですけど、なんでそんなに時間かけてるんですか!?」
地面に立っている咲桜(さくら)はハヤトたちを見上げると、ハヤトはそれに疑問を返した。この人なら10秒もかからずに全滅させられるだろうに。
「相手を油斷させているんです! ここで私が全滅させると、あの2人は襲い掛からずに逃げる一方になるかもしれないでしょ? でもここで苦戦っぽいことしておけば、もう一回同じことをやるために姿を現わすかもしれませんから」
「刀で建を両斷する人を苦戦してるとは言わないんですよ?」
「まあ、そう思う人もいるでしょうね」
「よっぽど馬鹿じゃない限り、そうとしか思われないと思いますよ……」
とか何とか言っていたら後ろからやってきた式神の蹴りを飛び上がって避けて、鬼の頭を摑んでそのまま凄い勢いで全を捻って式神の首をちぎると前方からやってきた鬼に向かって投げた。
式神のを式神の頭が貫通して、2つとも機能を停止。元の紙へと戻っていく。
……どう見ても苦戦してるっていうよりは楽しんでるんだよなぁ。
「んじゃ、俺達は俺達で行くか」
「運転手さんはどうするの?」
「置いてくわけにもいかないだろ」
ヒロに抱えられた運転手は高速道路崩壊からのビルの壁面著地で気を失ってしまっていた。
「それともお前のスキルで見つけてくれんのか?」
ヒロはハヤトにそう言ったが、
「うんともすんとも言わん。自分でどうにかなる範囲ってことっぽい?」
「なるほどな」
そうは言っても簡単に見つかるはずもなく、ハヤトたちはビルの壁面からひたすらにキョロキョロとあたりを探すもののそれで見つかれば苦労はしない……。
「見てみて! あの人、あれで“草薙”當主なんだって!」
「意外でしたね。式神452でこんなに苦戦するなんて。もしかして、“草薙”って言われてるほど強くないんじゃないでしょうか」
いつの間にか現れたたちはハヤトたちの対面にある建で、咲桜(さくら)を見下ろして高笑い。
(……噓やん)
《よっぽどの馬鹿だったな》
たちは苦戦しているっぽくふるまっている咲桜(さくら)に向かって再び紙吹雪を撒いた。だが、明らかに対面にいるハヤトたちに気が付いていない。
「……罠だと思うか?」
ヒロが若干引きつった顔でそう言う。
多分、俺も似たような顔しているんだろうな……。
「罠であってしいと思うよ」
「じゃ、行くか」
ハヤトとヒロは同時に壁面を蹴って、
「「急急如律令!」」
たちの聲を聞いた。紙吹雪の1つ1つが3m近い鬼になる。
「どう? さっきのおかわり!!」
「今度はさっきの2倍くらい強いんですよ」
「あれ? そういえばあの2人はどこに……」
と、そこまで言った瞬間にハヤトがを取り押さえた。その隣ではヒロがどこからか取り出した縄でをぐるんぐるん巻きにしている。それ後で俺もしいわ。
「どうです? 作戦勝ちですよ!」
「これ作戦って言えますかね?」
新しく生み出した無數の式神を瞬きする間に全て斬った咲桜(さくら)さんが普通に建の上まで壁を蹴って上がってきた。マジでこの人スキル持ってないのよね……?
「ちょっと! どこってるの!!」
「騒ぐな騒ぐな」
そう言ってハヤトは取り押さえたの服に手をつっこんで札を取り出していく。
師の札には様々な種類がある。式神用、呪い用、占い用に起用。そして中には自用の札を持ち歩いている師もいる。それを警戒して、ハヤトはの完全武裝解除をするべく狩(かりぎぬ)のいろんな所に手を突っ込んで隠している札を全部を取り出した。
「……自用の札は無し、か」
ハヤトは札に書かれた印を読み取ってそう言った。
「一安心、で良いのか?」
「とりあえずそっちの方も全部出させよう」
ハヤトは手にした師を咲桜(さくら)に預けて、ヒロが縄でぐるんぐるん巻きにしたに近寄った瞬間に、咲桜(さくら)の手の中にいたが大聲でんだ。
「た、助けてぇッ! 師匠ぉーっ!!!」
「へ? 師匠??」
そう言った瞬間、街のいたるところからハヤトたちの頭上に向かってが集合。
空中に集まると同時には強まり……そして、発。
「最強アカネちゃん! ここに見參☆」
がぜ終わると空中に浮かんだままが頭上に立っていた。著ている服は師の狩を自分用に大膽にアレンジしたもの。ほとんど原型とどめないが、本人の得意げな顔をみるに相當アレンジに自信があるらしい。
銀に近い白い髪の、目は紫と日本人どころか人間離れしただが、立派な日本人だ。
しかも最悪なのが、
「……お久しぶりですね。あかねさん」
「やや!? さくらちゃん!?」
この2人。知り合いである。
アカネは驚いたようにそう言って、
「ハヤトくんもいるじゃん! 久しぶりだね♡ やっほー!! 元気してたぁ?」
ヘキサとヒロが苦しい顔しながらこちらを見る。
「《誰?》」
2人とも咲桜(さくら)さんでもなく、アカネちゃんでもなく俺に話しかけて來た。いや、多分説明してくれると思うよ。本人が……。
「“厄災十家”の九鬼が1つ! 九鬼あかね!! ここであったが百年目だよ。さくらちゃーん!!」
あかねの手がひらめくと、そこにはマジックのようにどこからか無數の札が握られていて。
「どっちが最強か! いざ尋常にぃー!」
無數の札に蓄えられたエネルギーがを伴って放出されると、
「勝負っ!!!!」
その一言で、起した。
ヤメロ【完】
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