《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第8-11話 誓いの踏破者!

絶対者の剣がアカネを真っ二つに両斷した。まだ替えの形代はある。そう思ったアカネの視界に突然、ってきたのは暗闇に染まった東京の路地裏。しかし、それは先ほどのような廃墟の東京ではない。どこまでも生活にあふれた路地裏だった。

「……ここは?」

「結界を張るときに使う道があるんでしたっけ?」

咲桜は刀を納めながらそう問いかける。

「壊してしまえば、結界は保てないですよね」

「……斬ったんだね。私ごと」

「ええ。あなたがあの弟子たちに任せるとは思えませんし、どこか別な場所に置いてくるとも思えません。だから、持っていたんでしょう。ずっと」

「……そうよ」

「だから、そこを斬らせてもらいました。あなたを15回も斬るほど時間に余裕があるわけでも無いですし」

咲桜はすぐにでも立ち去るだろう。そんな雰囲気を出していた。

「……ハヤトくんを、連れていくんだね」

「はい。天日(あまひ)さんを倒すためには、同じ“天原”である彼の手助けが必須ですから」

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「だから、どうして貴方たちは彼を利用するのっ!」

「文句があるなら、ここでもう一度やり合います?」

そっと咲桜が微笑む。近くの通りでは通行人がこちらに気づくことなく歩いていく。車の通りもかなりある方だ。そんな中で戦ったらどうなるか。確実に通行人が犠牲になる。咲桜は元よりイカれている。人を殺したところで痛む心を1つとして持ち合わせてはいないだろう。

だが、自分には弟子がいる。あの2人に、人を殺すような師匠がを張って技を教えられるか?

「私の負けだね」

だから、アカネはそう言った。

自分の世界に引き込んだ。命を15個用意した。【英霊降ろし】で戦った。だが、それら全てをたった1振りで覆した。勝てない、と思う。どうやっても勝てないと。

それもそうだろう。積み重ねてきたが違うのだから。

だが、どこかでそれは言い訳だとも思った。

「それで、聞きたいことがあるのですけど」

「私が答えるって思ってるの?☆」

アカネは笑顔でそう言った。

アカネと咲桜では持っている報が違う。だからアカネは咲桜を煽る。白兵戦では勝てないけれども。こっちなら勝てる。ささやかな意趣返しだ。

「今日、『百鬼夜行』はどこに押し寄せるのですか?」

「それ、私もしらなーい♪」

「は?」

ひたすらに煽る。

「“人”に報を教えてくれるわけないじゃーん」

「ああ、そういうことでしたか。じゃあもう良いです。こっちはこっちできますので」

「ハヤトくんによろしくねっ♡」

「そういうのは自分で伝えたらどうですか。アカネさん」

「やーだよ。ハヤトくんのトラウマ時代の人間がハヤトくんと喋ったら彼のトラウマを掘り返しちゃうかも知れないでしょ☆」

「だから會わないと? 隨分と獻的ですね」

そう言って咲桜はそっと笑った。

「そう思うなら、そう本人に伝えてあげればいいと思いますけどね」

「だーかーらー、さくらちゃんはそう言うところ本當に駄目だよ。デリカシーってのがない」

「いいえ、違います。アカネさん、あなたはハヤトさんのことを過小評価しすぎなんです。彼はあなたが思っているより數倍タフですよ。だから、本人に直接言ってあげてくださいね」

そう言って咲桜(さくら)が踵(きびす)をかえすと、そこに両手にアカネの弟子を抱えたハヤトが顔を真っ赤にして立っていた。

……これどういう顔して會えば良いのよ。

《ほら。いつも接してるみたいにいけよ》

(無理だって、あんなの聞いた後ならさぁ……)

こっちの世界に戻ってきた時に、ハヤトは自分たちの居場所の相関関係から現実世界のどこに2人が戻ってきたのかを大検討を付けれた。なので、アカネに弟子を返すべく抱えてやってくると、ちょうど2人が路地裏で喋っておりその容を全部聞いてしまったのだ。

思わずそれを聞いて極まって泣きそうになってしまった。

まさかここまで自分のことを考えてくれる人がいただなんて知らなかったのだ。

「あ、あの……。アカネちゃん……」

アカネさんって呼ぶべきなのかな。

しだけそう思ったけれど、やっぱり呼び方を変えるのは良くないと思った。

「どうしたのかな?」

対するアカネは無表。よく見ると顔の筋がぴくぴくといているので、恥ずかしいのを我慢しているというのが分かる。けれどハヤトも照れに照れまくっているので、これに気が付かず……。

「あの、弟子を……。弟子を……」

思いっきりどもりながらハヤトは両手にそれぞれ抱えたアカネの弟子をアカネに差し出した。彼たちを摑んでいた手を放すと兎のごとくハヤトから離れてアカネに抱き著いた。

「ししょぉおおおおおっつ!!!」

「怖かったよぉぉおおおおお!!!」

2人はそう言って大號泣。

何だかこうやって見ると、ちょっと澪っぽさがあるよね。やっぱり弟子っていうのは似るものなんだろうか……。なーんてことを言ったら澪に怒られるか。

「ありがとね☆」

「い、いや……。良いんです」

こんな時になんと言えばいいのか分からない。

ここまで自分を大切にしてくれた人に出會うのは初めてだったから。

《ひどい奴だ。私のことを忘れてないか?》

(いや、人間じゃないし)

《(´・ω・`)》

だから、ハヤトはじいっとアカネの目を見た。頭の中でいろんな謝の言葉が渦を巻いた。渦巻いて、渦巻いて、渦巻いて。そして、ゆっくりと口を開いた。

「ありがとう」

「うん♡」

まっすぐ伝えた謝の言葉に、アカネは大きな笑顔で返した。

「それで、あの、教えてしいことがあるんですけど」

「なぁに?」

「これから『百鬼夜行』がどこに向かうのかってのを教えてしいなって……」

咲桜さんが無視されたってのが理由じゃないけど、これからの『百鬼夜行』の向を知りたいのだ。

「“八咫”に行くって言ったよ♡」

「ほんとですか!? ありがとうございます!!」

ハヤトも踵を返して走っていく。アカネは泣きじゃくる弟子たちを抱きかかえると、“九鬼”の家に帰るためにタクシーでも拾おうかと考えていると、

「あの、アカネちゃん!」

路地裏の出口でハヤトが立ち止まって、アカネに振り返っていた。

「また會おうね!」

そう、言い殘してハヤトは立ち去った。

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