《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第8-13話 百鬼夜行と踏破者!

「……探索者の何が知りたいの」

ハヤトは押し倒されたまま、スミレにそう聞いた。

「ダンジョンってホントにモンスター倒したらアイテム出てくるの!?」

「出てくるよ」

「凄い! なんか見せて!!」

なんか見せてって……。

なんかあるかな、子供けするようなやつ。

と、ハヤトが考え込んでいるとヘキサが助け舟を出してくれた。

《アイテムボックスとかどうだ?》

(良いね)

確かにあれなら見栄えも良いし、便利さも伝わるから子供けもするだろう。

「ほら」

ハヤトが差し出した手から、黒い立方が飛び出すと空中で靜止。幾何學的な展開で持って、大きく開く。それを食い気味に見ていたスミレは激。驚きのあまり、黙りこくって全てを見ていた。

「す、すごいっ!! しい!!! 私これしい! ちょうだい!!!」

「いや、無理……」

「じぃじ! 私これしい!!」

そう言ってスミレは“八咫”の當主に飛び込んだ。彼は孫に頼られたという誇らしさと、無理難題を押し付けられたという苦々しさが混じりあって形容しがたい顔を浮かべていた。

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……すっげえ顔に出やすい人だけど、この人ほんとに政治に向いてるの?

「……一応、聞いておくが譲ってもらうことが出來るか」

老人は絞り出すような聲で、そう言った。

「無理です……」

「ということだ。スミレ、諦めなさい」

「そ、そんな……。じぃじ嫌い!」

「ちょっ……!」

スミレはそういってそっぽを向いてしまった。その隣にはあからさまにショックをけた顔を浮かべている“八咫”の當主。

あーもう、襲撃前なんだからもうちょっと持っても良いんじゃない?

《“草薙”が護衛についている。その安心だろうさ》

(……咲桜(さくら)さん、負けてるんだぞ)

天日(あまひ)は明らかに向こうの切り札(ジョーカー)だ。そう簡単に投してこないと思うが、しかし“草薙”と“八璃(やさかに)”を襲っておいて殘るは“八咫(ここ)”だけ。ここを決著の付け所と見るなら、普通にやって來てもおかしく無いだろう。

《……お前は次に戦って勝てると思うか》

(思う訳ないだろ……)

100戦やって100戦とも負ける未來が見える。だから、戦わない方法を考えなければならないのだ。何も馬鹿正直に拳をぶつけあうのが、戦いとは限らないのだから。

「ねえ。あなた“天原”なら、“魔祓い”なのよね」

「まあ、そうだけど……」

「幽霊って本當にいるの?」

スミレは怯え半分、興味半分といった合で聞いて來た。

「いるぞ」

「ほ、本當に……!?」

「ああ。運が悪ければ今日中に見ることになるかもな」

「……そ、そう」

「まあ、大丈夫だと思うよ。咲桜(さくら)さんも何も考えてない訳じゃない。守り切るための考えがあるんだろうさ」

そう言った瞬間、ぶつん! と音を立てて天井の燈りが消えた。

「……停電か?」

ぽつり、と“八咫”の當主が呟いた。

「いや……これは」

ハヤトは2年前までの知識を総員して、答えを得て。

「來ましたね」

そう言った。

停電になったのは“八咫”の家だけではない。その地區一帯が闇へと包まれる。その瞬間、空気が変わった。ドロリとした粘の空気は夏でも無いというのにじめじめと本能的に嫌なへと切り替わる。まるで熱帯夜の丑三つ時に紛れ込んだような嫌悪

「こちら西門。対敵します」

「東門、対敵します」

咲桜(さくら)の耳につけたインカムから同時に聲がってくる。“八咫”の家は広いが、その広さはあくまでも常識的なものだ。だが、気が付けばあり得ないほどに庭が広がっている。世界の上書き、“異界”の下位互換である結界だ。

これは戦いやすさよりも、逃げにくさを重視した結果だろう。“外”までの出口が遠ければ、その分殺せる。

『ォオオオオオオオオオオッッツツ!!!』

次の瞬間、鼓が破裂しそうな咆哮と共に門を々に砕いて5mの異形がやって來た。

「この場合って修理代は“草薙(ウチ)”持ちなんですかね……? そこら辺ちゃんと詰めておけば良かったですよ……」

ぽつりと呟いて、咲桜(さくら)は周囲の師や“草薙”の護衛たちを突っ切ってやって來る『赤鬼』を見た。一番槍、とでも言うべきなのだろうか。鬼はまっすぐ“八咫”の家を見て突き進む。

だが、

「立派な門なんですから、壊すのは辭めましょうね」

門を壊して“八咫”を殺そうと全速力で走ってきた『赤鬼』は、咲桜(さくら)の威圧に耐えかねて、足を止めた。

「足を止めたら、駄目じゃないですか」

「そぉーれッ!」

咲桜(さくら)が呆れたようにため息をつくと、刃渡り2mの巨大な大剣を力任せに振るうメイが鬼のを両斷した。遅れて“魔祓い”が鬼のを祓う。

「やー、凄い威圧ですね」

「威圧はしてませんけど……」

大剣を地面に突き立ててメイが笑うが、咲桜(さくら)は困。どうやらメイの酔いはすっかり覚めてしまったらしい。

「そうですか? けど、これ楽しいですね! まさか“外”でも戦えるとは思ってませんでしたよ」

「楽しんでもらえたら何よりです」

メイの言葉に咲桜(さくら)が笑う。その時、メイは剣を右手で持ち上げて背後から忍び寄っていた大蛇の頭を剣で貫いた。

『シャァァァアアアアア!!!』

激しくをくねらせるものの、頭をい留められている蛇がその場からけるはずもない。メイがぐりっ、と剣を捻ると絶命した。

続けてメイが何かを言おうと口を開いた時、彼の目が驚愕に見開かれる。咲桜(さくら)はそれを疑問に思って振り向くと、流石に彼も後ろに広がっていた景に驚いた。

大きさは40m。暗闇にぼんやりと浮かぶ巨大な頭蓋骨と、それに連なる。それが塀を々に壊しながら、庭に侵してきた。

咲桜(さくら)とメイは顔を見合わせて、そしてテンションを大いにあげた。

「これメインですかね!? どう思います! 咲桜(さくら)さん」

「メインっぽいですね! 歯ごたえありそうじゃないですか!!」

「やりますか」

「ええ、勿論」

咲桜(さくら)とメイは笑顔で戦闘形態に移行した。

「みーたーいっ! 外が見たいの!!」

「駄目って言ってるでしょ! ちょっと、スミレちゃん! 駄目だって!!!」

さて、場所は変わって“八咫”宅の一室。閉め切っている窓の外を見たがるスミレを全力で止めるハヤト。ちなみに當主は端っこの方で意気消沈ぎみである。

「ねえ! 當主様! スミレちゃん止めて!!」

「……嫌われた。……嫌われた」

がっくりうなだれて同じことを1人で呟き続ける“八咫”の當主。

なんで“三家”の當主はどいつもこいつもに持つんだよ!!

「ね! ちょっとだけだから! ちょっと見るだけだから!!」

「駄目だって! ここがバレたら一気に戦いづらくなるんだから!」

「大丈夫! バレないように、ね?」

こてん、と可らしく首を傾げるスミレ。

「可く言ってもダメなはダメっ!!」

「じぃじはこれでいっつも良いって言ってくれるのに!」

「もー、甘やかしすぎですよ! 當主様!!」

「……嫌われた」

「いい加減にしろよジジィ!!」

いつまで引きずってんだ!!

《良かったな。探索者としての素質ありだ》

(その素質この世で一番要らねえよッ!!)

ネット小説大賞2次通りました!

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