《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第8-15話 ”覚醒”スキルと妖怪と!

こちらに控える護衛対象が2人。相対する“魔”が2。増援は無し。

……やれるだろうか?

自分に問いかける。

……やらなきゃいけないんだ。

それがどんな仕事だろうが、どんな依頼だろうが、頼まれたのであればやり遂げなければならない。それは自分に期待したくれた人への恩返しだから。

「良い夜ですね」

ぽつり、と松の上に座ったがそう言った。

「そうだな」

ハヤトはそう言うと、指に封じ込められた魔法を解放。氷柱(ツララ)を斉。出來るだけ庭を壊さず、絡新婦(ジョロウグモ)だけを狙った氷の砲弾はドドン! と心地の良い音を立てて空へと抜けていく。

次の瞬間、ハヤトはスミレを放して左手を雪に向けた。

「【誓約(ルール)】:『雪』に告げる」

紡ぐは言葉。描くはルザル。

不可視の鎖がの心臓を縛り上げる。

「今後一切の魔法使用を止する」

そして、鎖が完全にを縛り上げた。“正義を詠え、(オムニオ・)言葉でせ(ヴォルカルム)”。言葉に出した條件を相手に押し付けることのできる“覚醒”スキルだ。

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はハヤトに向かって攻撃をしようとしていたようだったが、魔法を使おうとしても何も起きないことを疑問に思い、首を傾げた。

ヒュバッ!!

に意識を向けていたハヤトの隙をついて、絡新婦(ジョロウグモ)の糸がハヤトの足に絡みつく。

「チッ」

小さく舌打ち。

魔法が使えなくなった雪は、ひとまず警戒対象から外す。ハヤトは反的に“八咫”の當主を解放し、両手をフリーにするとその手に刀を生み出した。

神の速さ。そこにあるのは澪の姿。

「“神に至るは我が剣なり《イグジティウム・デウス》”」

ハヤトの姿は瞬きする間に、中庭の上へと移していた。足に絡みついていた糸はいつの間にか斬られている。“覚醒”スキルは1つの極致。生半可な妨害工作など通じるはずがない。

遅れて絡新婦(ジョロウグモ)の右腕が地面に落ちた。

ハヤトは2人を見下ろせる位置に陣取ると、指をそっと掲げた。氷弾が雪と絡新婦(ジョロウグモ)を捉える。

「投降するなら、祓わないでおいてやるぜ」

「…………っ」

苦々しい顔でこちらをみる絡新婦(ジョロウグモ)は、千切れた腕を糸で用に修復しようとしていたが、ハヤトの圧力(プレッシャー)がそれを許さなかった。

《……良いのか? 祓わなくても》

報がいる。こいつらなら、ツバキの居場所を知っているかも知れない)

《なるほど》

「……投降したら」

「ん?」

とても澄んだ綺麗な聲がハヤトの耳に屆いた。誰が喋っているのかと思えば、廊下の端の方で僅かに怯えた様子を見せる雪が口を開いていた。

「投降したら、魔法は使える様になる?」

「……それは俺が出した條件を飲めるかどうかだ」

「なら……。私は、投降するわ」

「そっちの蜘蛛(くも)はどうする」

ハヤトは刀を黒い霧に返すと、槍を召喚。

「名前を、聞かせて」

「……“天原”ハヤト」

それを聞いた絡新婦(ジョロウグモ)と雪はその綺麗な両目を大きく見開いて、驚いた。

「“天原”と戦えるのなら、この好機を見逃すはずがないでしょ?」

「俺と戦うことが、死ぬよりも良いってのか?」

「“天原”! 庭がどうなっても構わん! 好きに暴れてくれ!!」

さっきからハヤトがなるべく家や庭に傷をれないように立ち回っていることを悟ったのだろう。“八咫”の當主はひどく通る聲でそう言った。

……なら、好きにさせてもらおう。

「おかしなものね」

絡新婦(ジョロウグモ)は笑う。両手をハヤトに見せつける様に大きく広げると、右の手を激しく払った。そして、それにつられるようにハヤトのが地面に叩きつけられると、大きく引っ張られたっ!!

糸か!

だが、どこにくっついている!?

ハヤトはとっさに自分のについているはずの糸を見るが、どこにも見えない。

「私は蜘蛛。けど、蜘蛛って“魔”なのかしら?」

致し方ない。

斬ろう。

「“神に至るは我が剣なり《イグジティウム・デウス》”」

再びハヤトのが消え、別の場所に移する。それに伴ってハヤトのについていた糸も斬られるという寸法だ。そして、ハヤトのがあった場所と移した場所の間にあった絡新婦(ジョロウグモ)のが両斷される。

「カンダタを助けた1つの糸、あれは蜘蛛の糸よ」

「だから何だってんだよ」

ハヤトが掲げた指から放たれた氷柱(ツララ)が、宙に舞った上半い留めていく。

「人に仇すから、“魔”なんだろ」

「人間ってのは、隨分と自分勝手なのね」

ハヤトは屋から飛び降りると、地面にい留めた絡新婦(ジョロウグモ)のにそっと手をれた。

「まあ、それは否定しないよ」

そして、大きく地面を蹴り上げる。生まれた撃力は全てを砕くエネルギーの奔流となって地面へと再び返された。

『星穿ち』。

まこと便利な技である。

「雪! この屋敷に他に仲間は?」

「さぁ? 何人ってきたか、私知らないもの」

「そうか……」

まあ、それもそうか。

“魔”に細かく作戦を練るなんて頭は無い。単のパワーでひたすらにごり押してくるのが彼らのやり方だ。中には狡猾な奴らもいるが、そういうのは大弱いのでこちらが力で押せば何とかなる。

「とにかく、今は他の部屋に隠れよう」

ハヤトは既に祓った絡新婦(ジョロウグモ)には目もくれず、スミレと當主を見ながらそう言った瞬間、空(・)が(・)深(・)く(・)なった。

「……本命のお出ましか」

夜という概念を上から書き換えてしまうほどの絶対強者の出現。

「……噓。もう、來てたの」

は後ずさりしながら、ハヤトと同じ方角を見る。

これだけ離れていても分かるほどの圧倒的な存在。

ならば、ここに來たのは夜の支配者。

「吸鬼(ヴァンパイア)の『真祖』か……。それとも、『鬼神』か、『深淵』か。どれにしても主戦力か。表の連中は大丈夫かな?」

脳の奧底がびりッと痺れるような第六じながら、ハヤトは急いで2人を新しい部屋へと護送した。

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