《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第8-20話 捕虜と踏破者!

知らなかったものは知らなかったで仕方ないものと割り切ろう。そうしないとメンタルが持たない。とにかく次に活かせればいいのだ。

「でっかい來たけど切り分ける? そのままかじりつく?」

「ご主人様、発想が非常に男の子ですよ……」

「あんた人出來たことないの?」

「ぐっ……」

2人からのダイレクトアタック! ハヤトのHPが削られた!!

セツカのダイレクトな暴言も傷つくけどエリナのこれも地味に傷つくなァ……。

「じゃあ切るね……」

機の下に手をれると、ハサミを生み出す。付與する効果は『切れ味上昇』。発想がシンプルな分、効果も大きい。ハヤトはをトングで摑み上げるとハサミでを切った。

キィイン……。

僅(わず)かに空気が震える音。遅れて斬れたが皿の上に落ちた。

……いま空気も斬れなかった?

ハヤトは自分が手にしたハサミがちょっと気味悪く思えたが、ここで変な行をすると2人に気が付かれることは避けられないので、とにかく何も気づかぬ振りをしながらハサミでを切っていく。

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そのたびに小さく空気が斬れる音がするものの、どれもが焼ける音でかき消される。

「……? 変な音してない? ハヤトの攜帯?」

やべ、気づかれた。ってか、セツカの耳良いな。

「いや、俺スマホもってない……」

「噓でしょ?」

「マジだよ。家から追い出された未年がどうやって攜帯買うっていうの」

「た、確かにそうね……。変なこと聞いたわ」

ハヤトは切り分けたをエリナとセツカの前にそれぞれ差し出す。

明らかにヤバいこのハサミは消そう……。

ハヤトは機の下に手をれると、ハサミから手を放す。その瞬間、ハサミは黒い霧になって換気扇に消えて行った。

(……俺が知ってる効果じゃなくなってる…………)

々見てきたからな》

(そっか)

ヘキサの言う通りだ。ヘキサと出會ったばかりの自分が思い描く切れ味の強さとは、せいぜいシオリの持っているスキルの効果、それも2年前の能でしかない。だが、ダンジョンを踏破してきた中で澪の“覚醒”スキルを見た。シオリの“覚醒”スキルを実際に使った。

そうした経験がハヤトの中に貯蓄され、イメージの化に役立っているのだ。

(ってことは、俺が生み出される武は“覚醒”スキルの効果を乗せることが出來るってことか?)

《さぁ? そこまで出來るかどうかはお前の頑張りしだいだろう》

(それもそうだな……)

ちょっと明日からダンジョンに潛って本格的に検証しよう。

ハヤトは久しぶりに潛る日本ダンジョンにテンションを上げながら、殘りのを食い終わった。

「おいしー!!」

「そうか。そりゃよかったな」

もう春になろうってのに、まだ夜は寒い。そんな中でセツカはコンビニでハヤトが買ったアイスを味しそうに食っていた。

あらためて見るとコイツ全然捕虜っぽくないよなぁ……。

一応、彼は捕虜という(てい)にはなっているのだが。

「……そろそろ聞くこと聞いていいか」

「ん? 良いわよ。って言っても知らないこともたくさんあるけど」

「……ツバキは、お前たちが攫(さら)った“八璃(やさかに)”の連中はどこに連れていった」

ハヤトの問いにセツカはアイスをペロッと舐めた。

「んー。どうだろ。それ喋ったら私死ぬかも」

「死なねえよ」

「なんで?」

「いまのいままで誰もお前を取り返しに來てないじゃん。重要度低いんだよ」

「ねー! そこは『俺が守る』とかじゃないの!!」

そう言ってセツカは目の前にあったハヤトのめがけて蹴りを叩き込んだ。

「いったッ! ケツ蹴るのやめて!!!」

「流石に言い方ってものがありますよ……。ご主人様……」

《お前、流石に……》

いや、悪かったよ……。

確かに俺の言い方が悪かった…………。

「……悪かったから何度もケツを蹴るのは辭めてくれ…………」

ハヤトの懇願にセツカは最後に大きく蹴って、息を大きく吐いた。

「まあ、私の重要度が低いのは分かってたから良いの。高かったら鉄砲玉にされないもの」

セツカは自分に言い聞かせる様にアイスを舐めた。

話してるじからして“八咫”のことかな。いや、もしかしたら“八璃(やさかに)”のことも含まっているのかも知れない。

「“八璃(やさかに)”の當主一族は本部にいるわよ」

「本部? 『百鬼夜行』のか?」

「そ」

「どこにあるんだ」

「知らない」

「は?」

「知らないのよ」

セツカはしだけ俺の方を見て、そっとアイスをかじった。ハヤトはその目をみて、考え込んだ。

……ここで噓をつく必要が分からない。ということは、本當に知らないのか?

「……なんで、知らないんだ?」

「“貉環(らっかん)”。あんたの方が詳しいでしょ」

「……そういうことか」

“貉(むじな)”が生み出す異界の“孔”は、簡単な転移魔法みたいなものだ。それで本部と出りするなら場所を知らないということにもうなずける。

「けど、そのやり方でやるならほとんどの“魔”はどこに本部があるのか知らないのか?」

「そうね。知ってるのは天日(あまひ)様と、“貉(むじな)”たち。あとは一部の幹部とかかしら? 私みたいな末端が知ってるわけないの」

「そっか。まあ、それならしゃーないな」

「……信じてくれるの?」

「信じる以外に何をしろと?」

「“天原”なら拷問とかすると思って」

「あいにくと“魔”への拷問にも適がないから追い出されたってわけで」

まーじで何にも出來ないじゃん。俺。

嫌というほど知っていたはずなのに、言葉にするとやっぱり心に來るものがある。

「そう……。なんかほっとしたわ。捕虜だっていうのに、わがまま聞いてもらえるから何されるのかと思ってたの」

「捕虜つってもなぁ。この調子を見てる限り意味無さそうだからなぁ……」

「せいッ!!」

ハヤトはこの日一番の蹴りを食らった。

翌日、全ての支度を終えるとハヤトはダンジョンに向かった。エリナとセツカを2人にしておくというのはし気になるところがあったが、魔法が使えない雪など溫がちょっとだけ低いただの人間である。放っておいても大丈夫だろう。

「お久しぶりですね、ハヤトさん」

「ああ、お久しぶりです」

半年ぶりにみる咲は、最後に見た時よりもしだけ大人びていた。

「ちょっと変わりました?」

「ふふ。“家”と縁を切ったんです」

「それは……。それは、良かったですね。これ、お土産です」

「お土産? なんか旅行に言ってたみたいな話を聞きましたけどどこに行ってたんです?」

「アメリカとイギリスですね。また話しますよ。ほんとに々あったので……」

「楽しみにしてます」

咲は笑ってハヤトから土産をけ取る。探索者証(ライセンス)が心地よい音を立てて、ダンジョンへの場を認めた。

この音を聞くと心が引き締まる。

……やっぱり俺は、探索者だ。

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