《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第8-21話 試す踏破者!

深く、深くダンジョンに潛っていく。とは言っても日本のダンジョンは68階層までしか作られていないので、必然的に最深部と言っても75階層以下のような皮がチリチリと焼き付く様な嫌な予はしない。

「ここに來るのも久しぶりだな」

《そうだな。半年ぶりだ》

あの時は1ヵ月近くにもわたってここで無理やりサバイバルすることになった。

ハヤトは城に大きく突っ込んだ巨木を見ながら慨深くため息をついた。

68階層。日本ダンジョンの最下層にあたる階層だ。今になって思い返せばよく生き延びたものだと思う。様々な偶然、選択。それらが絡んで、今の自分があると思うと何とも言えない気持ちになってくる。

「行こう」

《そうだな》

ハヤトが手を真正面に差し出す。思い描くのは一本の剣。長さは手ごろ。振り回しやすいが、重くない。リーチは自分に最も合った最適の長さ。は銀。他の探索者たちのなかに紛れていてもおかしくないような合い。

付與する効果は『切斷強化』、そして『軽量化』だ。その2つを頭の中で強くイメージして開眼。世界を捻じ曲げてハヤトの手元に剣が現れる。

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「適當に戦っていくか」

ハヤトは剣を手にした腕をだらりと力させると、ぶらりと城へ向かった。中にると、もはや懐かしさを覚えるほどに見慣れた景。生きているかのように階段がめいて、ハヤトを認識したモンスターたちが上から飛び降りてくる。

それの著地を待たずに駆け出したハヤトの剣が『骸の騎士(モルトノス・ナイト)』の首を刎(は)ねる。

「……すげえな」

剣の中腹部分で『骸の騎士(モルトノス・ナイト)』がハヤトの剣をけ止めたはずなのに、なんの抵抗も覚えずに切り抜けたのだ。

「なぁ、これってどこまで切れ味あげれんの?」

《お前の描く限界までだ》

「なるほど。じゃあもうちょっとテレビとか見た方が良いってじ?」

《そうだな。テレビだけじゃない。映畫、アニメ、漫畫、ゲーム。お前の目にした人(・)間(・)の(・)想(・)像(・)力(・)がお前の力になる。せっかく咲桜(さくら)から時間を與えられたんだ。そういうのを見ても良いんじゃないか?》

「そうだな。それも考えるか」

それとも今週開催されるダイスケ主催の漫畫を見る會とかに飛びり參加してみようか。大の大人たちがそろいもそろって真面目に漫畫を読むだけの會だが、漫畫の技をどうやってダンジョンで再現するかという話もやっているみたい……というか主催者がノリノリでYouTubeに畫をあげてるから本當にやってるかも知れない。

「つっても何を読んだらいいか分かんないんだよね。とにかくジャンプを読めば良いってことは分かるんだけどさ」

《それこそ人に聞けば良いんじゃないか? 今時ネットもあるんだし、エリナに頼んで調べてもらうとか》

「……そだな。あー、アカネちゃんに聞いてみようかな」

《何で?》

ハヤトの謎の人選に首を傾げるヘキサ。

「なんでって……。“天原”にいた俺に漫畫を渡してくれてたのアカネちゃんだし」

《そういえばそんなことも言っていたな。そうか、誰から漫畫を貰ってたのかと思ったらアカネからか》

「そゆこと。“九鬼”のにも興味があるしね」

《しかし、そうはいっても“九鬼”は『百鬼夜行』に協力していたんだろ? そんな簡単に會えるのか?》

「會えるでしょ。なんか知らないに、俺が唯一ける“天原”みたいになってるし。捨てられた家の力を借りるってのは癪(しゃく)だけど、使えるを使わないのはもったいなくて気持ちが悪いし」

ハヤトの言葉にヘキサはふわりと浮かび上がったまま笑った。

《隨分と家の呪いからは抜けつつあるんだな》

「まあ、いろいろ見たからな」

エイダンの慟哭。『彼ら』の存在理由。

自分は大人になったとは思わないが、彼らの言葉を聞いて何も思わなかったわけじゃない。

「ってなわけで次だ」

ハヤトはそう言って剣を手放す。黒い霧になって消えて行くと、ハヤトは次に槍を生み出すことにした。思い描くのは、『命中度上昇』と『帰還』……つまりは投げても戻ってくる効果だ。

生み出した槍を手にして、ハヤトは上にいた『骸の騎士(モルトノス・ナイト)』に向かって投擲。モンスターのを貫いて、突き抜けた槍が再び空中できを取り戻してハヤトの手元に戻ってくる。

「……良い効果してんね」

ハヤトはそう言うと、槍を手放して霧に返した。

「なぁ。ちょっと思ったんだけどさ、これってもしかして武にスキルを付與することも出來んの?」

《出來るんじゃないか? やったことないから知らないが》

「ちょっとやって見るか」

とは言ってもこの場で使えるスキルは何かないかとしばらく考えて、ハヤトは剣を手にした。

その瞬間、建の影にいたモンスターの姿がぼうっとを保って見えるようになった。

《【索敵】スキルの付與か? 面白いな》

「ああ、ちょっと試してみたんだが思ったよりも行けるな。これ」

剣を解除して、ハヤトは次に澪の姿を強く思い描きながら剣を作った。鞘にったままの剣は、ハヤトの想像力が足りているのであれば『魔剣』と呼稱しても遜ない出來になっているはずだ。

そう思って剣を抜いた。

が、何も起こらない。

「……失敗した」

《“覚醒”スキルの付與をしたかったのか? 流石に無理だろ。お前自分の力で“覚醒”スキル使えないんだから》

「あー、そういうことか」

振るうだけで“神に至るは我が剣なり《イグジティウム・デウス》”を使える剣とか作ってみたかったんだが、流石に無理だった。

「ちょっと々試しながら階層主(ボス)まで行くよ」

ダンジョンの階層主(ボス)モンスターは部屋にる度に復活する。今のハヤトならあの王と騎士たちを相手にしてもなんともないだろう。そう思って『洋城』エリアを後にした。

ということはもう一回『庭園』エリアにればルネが出てくるんじゃないかと思って、『庭園』エリアの準階層主(ニア・ボス)部屋にると、何も出てこなかった。アルラウネというモンスターが出てくるということもなく、ただの通り道である。

……こういうことになんのか。

まだ見ぬダンジョンの不思議を見た気がしてテンションをあげながら、ハヤトは階層主(ボス)部屋にった。澪が“覚醒”した場所だ。そう思えば々と思うところはあるのだが、あれから忙しくてもう一度來れなかったのだ。

部屋の奧から沸いて來た階層主(ボス)モンスターを見據える。數は8。今の自分ならどれくらい時間がかかるだろうか?

いや、こんなのに時間をかけるほど弱くはないはずだ。そう思って、ハヤトは駆けだした。

「……終わり。ざっと5分くらいか?」

《隨分と強くなったなぁ……。本當に見違えたよ》

「だな」

そう短く返す。このまま、まっすぐ進んでり口から帰ろう。今日はちょっと速い帰りだけどスキルの訓練と思えばまあ悪くないだろう。

そう思って『転移の寶珠』に近づこうと足を踏み出すと後ろから聲が聞こえてきた。

「ハッピーバースデートゥーユー♪」

あ? なんだこのガバガバ発音の英語。

ハヤトはケチをつける様に後ろを振り向いて、

「ハッピーバースデートゥーユー♪」

「なッ……」

絶句した。

「ハッピーバースデーディアハヤトー♪」

紫の髪に紫の目。

憎たらしいほどに可いその聲に、ハヤトはイラつきしか覚えない。

「ハッピーバースデートゥーユー!! いやー! 誕生日おめでとうございます!!」

“核の”。

間違いなく息のを止めたが無味乾燥な拍手をしながらそこにいた。ハヤトはそれに何も言えないくらいの衝撃をけ、何か返そうと頭の中で様々な思考を巡らせた挙句、ゆっくりと口を開いた。

「……いや、俺の誕生日今日じゃないんだけど…………」

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