《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第8-23話 未來と踏破者!
“核の”とじゃれ合うのには力を著しく消耗するのでハヤトはさっさと會話を打ち切って上へとあがった。上がる前に何かをんでいたが全て無視した。
「お疲れ様です。晝前ですけど、今日はお早いお帰りですね」
「慣(・)ら(・)し(・)ですから」
そう言ってハヤトはアイテムを咲の機の上に置いていく。彼はそれを黙々と後ろにある鑑定臺に移す。高機能のスキャナが搭載された鑑定臺は科學の結晶、つまりパソコンによる鑑定である。
人の主観によらず、適正な市場価格を素早く弾きだしてくれるこの機械は気が付けばあっという間に導されていた。“三家”、つまり日本のふるーい部分を引き継いだ人間が組織を運営しているはずなのだが、こういったところはスムーズでハヤトとしては驚いた記憶がある。
「では探索者証(ライセンス)を」
咲の指示に従ってハヤトが探索者証(ライセンス)をリーダーにれさせると、心地よい電子音と共に口座に金される。
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「咲さん、ギルドに電話ってありませんか?」
「電話?」
ハヤトの問いかけに咲は首を傾げた。まさかこの時代になって電話の場所を聞いてくる人間が存在するとは想定していなかったのだろう。だが、咲はハヤトの境遇を知っている1人である。しばらく考え込んで、
「ギルドの外に公衆電話があったと思いますけど」
と、教えてくれた。ハヤトはそれに謝の言葉を返すと外に出て電話ボックスに向かう。
《……お前、現金もってんのかよ》
(現金?)
《そう。公衆電話を使うには10円玉がいるんだぞ》
(ヘキサ、ここは日本とはいえ、一応『ダンジョンシティ』……。つまりは、特區だぞ?)
《……?》
(いろんな技が試されてるってこと)
つまりは、
(公衆電話でも探索者証(ライセンス)が使えるんだ)
《へー。知らなかった》
(……まあ、もう公衆電話なんて使う奴いないもんな)
ハヤトはそう言って探索者証(ライセンス)を公衆電話のリーダーにれさせると、話を取ってダイヤルを押す。
《覚えてんの?》
(まあ)
《アナログだなぁ……》
(良いんだよ! ダイヤル手押しの方があったかいだろ!!)
《そんな年寄りみたいなこと言わなくても……》
ヘキサのぼやきがハヤトの耳に屆くよりも先に電話の相手が出た。
『はーい! 呼ばれて登場! あなたのお姉ちゃんでーす!!!』
「…………。あの、咲桜(さくら)さん?」
『はい。あってますよ。大丈夫ですか?』
「いや、あの……。公衆電話からの電話にそれで出るのはヤバい人ですよ……。一瞬アカネちゃんかと思いましたし……」
『あの人と一緒にしないでください。というか、公衆電話から私に電話をかけてくる相手はハヤトさんくらいですから分かりますよ』
まあ、それもそうか。
ハヤトは気を取り直して先ほどあったことを全て咲桜(さくら)に説明した。その説明を黙って聞いていた咲桜(さくら)は、ハヤトが全てを説明し終わるのと同時に口を開いた。
『なるほど。大江山ですか。貴重な報ありがとうございます。実は“魔”の連中を途中で見失いまして』
「“貉環(らっかん)”ですか」
『それです。途中にあったんですね。いやー、神隠しって存在するんですね。初めて見ました』
「で、どうします? セツカ……ああ、捕虜から聞いた話ではツバキもそこにいるみたいですけど」
『核でも落としますか』
「…………」
『冗談ですよ。日本で使えるわけないじゃないですか』
その冗談は笑えないんだよなぁ……。
『しかし京都ですか。ここから一気に(・)か(・)す(・)とバレますし……』
「今どこにいるんですか?」
『仙臺です』
「せっ……。なんでそんなとこに」
『“魔”を泳がしながら追跡してたんですよ。まさか真反対だったとは……。まあ、こっちの狀況はこっちで何とかしますから。首を長くして待っててくださいね。ああ、そういえば首で思い出したんですけど『ろくろ首』を生きたまま捕まえたんですよ! ウチの醫療班がぜひとも生きたまま解剖したいって言いだしまして! どうです!? 面白そうじゃないですか?』
「……たぶん、“天原(ウチ)”の蔵を探せば似たようなのが出てきますよ…………」
江戸時代くらいにはもうやってそうである。
というかこの人、“魔”に人権が無いからって好き放題やってない?
『首の骨とかどうなってるんでしょうねえ?』
さぁ……。
『ま、そういうわけでこっちは楽しくやってますよ! 心配しないでくださいね!!』
……生まれて一度もこの人のこと心配したこと無いんだけどなぁ。
ハヤトは心の中でそう毒づくと。
「……じゃ、切りますね」
咲桜(さくら)からの返答を待たずに話を降ろした。
「……どっと疲れた」
《お疲れさん……》
さてそろそろ晝だ。エリナには晝から帰ると言っていないから晝食が無いかも知れない。買って帰った方が良いかもなあ。なんてことを思いながら自転車をこぐ。しばらく使っていなかったが空気をれると普通に使えた。
「はぁ~」
ため息がれる。
《どうした》
(どうしたもこうしたも……。ダンジョン全部突破すればこれではい終わりと決め込めるはずだったのに。どーしてこうなった)
せっかく高認試験の1つでも勉強しようと思っていたのに。
《思わぬところから弾が出て來たな》
(そいやお前はどうすんの?)
《私? 何で》
(何でも何もお前が言う通り地球のダンジョン全部攻略したんだぞ。お前のやりたいことは全部終わったわけだ。んで、ヘキサはどうすんだよ)
《それがだな……。々考えたんだが……》
(あん?)
《いや……。あのな、ほら、モノたちと道を違えただろ?》
(そうだな)
《それがな、ちょっと、こう尾を引いてるみたいで……》
(回りくどいな。結論だけ言ってくれ)
《う、む。顔を合わせづらいのだ。アイツらに》
(…………は?)
《だからもうちょっとここに居ようと思ってる》
(…………………)
《馬鹿馬鹿! 赤信號!!!》
「うおっ!!!」
ヘキサの口から飛び出してきた言葉に飽きれて、信號を無視するところだった。あいにくと信號無視には嫌な思い出があるである。
「あれ、師匠? 何やってるんですか」
差點で信號が青になるのを待っていると、ふと聞きなれた聲がかけられた。
「ん? おお、澪じゃん。どしたの、こんなところで」
久しぶりに見る弟子の顔だった。とは言っても“核の(アレ)”よりは顔を見せているが。
「今日はこれから塾です」
「……塾?」
え、なにその単語は……。
「はい。あの、んな人と話したんですけど……。その、やっぱり中卒は良くないって言われまして」
「あー……。そうねぇ……」
探索者はもてはやされているが、実際には労働である。単価は高いが誰がやっても良い替えの効く仕事だ。確かにこれから前途有なの子が専業にしようと選ぶ仕事じゃない。
「塾の金はどうしてるんだ?」
「自分の稼ぎで払ってます」
偉っ。何この子。
ほんとに俺の弟子?
「すいません。塾が始まっちゃうんで」
「ああ、いってらっしゃい。勉強頑張れよ」
「はい! ありがとうございます!!」
「じゃね」
そう言ってハヤトは青になった差點を渡り始めた。
《……え、何お前。泣いてるの》
(…………嬉し泣きだよ)
《あ、そっち。てっきり仲間が減って悲しいのかと》
(何でだよ!!)
こいつ俺がそんな人間に見えてるのか!!!
というツッコミをヘキサは無視した。
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