《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第8-25話 戦闘準備の踏破者!

「ああ、やっとついた……」

もう完全に日が暮れてしまい、うっすらと細い月が空に輝いている。森の中では師の正裝である狩を包んだ”魔祓い”たちが一か所に集まって何かをやっていた。

集まってるのがバレないように隠してんのかな?

そんなことしても“伏見”のあの人が占っていたら意味がないだろうに。ってことは別の何かなんだろうか。

「よう、やっとついたか。兄貴」

車から降りたハヤトを真っ先に見つけたのはアマヤだった。

「おー。元気してたか、アマヤ」

「ばっちりだぜ」

そう言ってアマヤはいつも通りに笑った。こいつが數日前まで意識不明の重だったとは誰も信じまい。俺も信じて無いし。

「んで、どうだ。調子は」

「兄貴に心配されるほどじゃねえよ」

「そう? なら良いんだけど」

「じゃ、また後でな。俺はちょっとやることがあるんだ」

「ああ、頑張れ」

「兄様、私もここで失禮します」

そう言うと弟と妹がそろってどっかに行ってしまった。あっちは正當な“天原”だ。期待も大きいうえに仕事もたくさんあるのだろう。

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《んで、どうするんだ。期待されてない人は》

(好き勝手にやってればいいでしょ。とは言ってもいったん咲桜(さくら)さんに挨拶はしておきたいな)

咲桜(さくら)は恐らくこの場の現場責任者である。ここに到著した、くらいの連絡はしておくべきだろう。そう思ってあたりをキョロキョロしていると狩を著ているの中から見知った顔が1人、ハヤトを見つけた。

「おっひさ~♪」

「……アカネちゃん」

“九鬼”のアレだ。関わりたくねぇ……。

でもまた會おうとか言っちゃったからすると、無下にも出來ないわけで。

「大丈夫なの? こんなところにいて。『百鬼夜行』の仲間だったんじゃないの?」

「だいじょーぶ! 咲桜(さくら)ちゃんがさ、手伝ってくれたら無罪放免って言ってくれたから」

「手伝う?」

「司法取引みたいなもんだよ☆」

「ほー」

適當に相槌を打っておこう。これで賢く見えるらしいし。

「って、何を手伝ってるんです?」

「“異界”のり口探し。やって見る? 楽しいよ」

「えぇー。でも俺あれだよ? 占いの基礎の基礎も出來なかったよ?」

「そりゃ“天原”のやつは難しいでしょ。もっと簡単なやつはどう? 例えばダウジングとかは」

「うーん、まあ……」

「あちゃー……」

ハヤトの表から全てを悟ったのか、アカネはそっとハヤトの背中をなでた。

「人間、占いなんかに頼る必要はないんだよ」

「……分かってますよ」

なんてやり取りをしていると遠くからアカネを呼ぶ聲が聞こえてきた。

「ごめん! 呼ばれてるから戻るね!」

「頑張ってくださいね」

「ありがと♡」

アカネはそう言って素早く持ち場に戻っていった。

(……つらい)

《お前の仕事はここじゃないから……》

(そ、そうだよな!)

ヘキサの言葉で元気を取り戻すと、咲桜(さくら)を探してきょろきょろ周囲を見回す。すると、用意された臨時の駐車場にやけに高級溢れるリムジンがってきたではないか。

(ぜってぇあれだわ)

《……だな》

ヘキサとハヤトが渋い顔をしていると、やっぱりそこから降りて來たのは和服を著た咲桜(さくら)……だけではない!

「うげっ……」

草薙凜。咲桜(さくら)の母親にして先代“草薙”家當主の妻もそろって出て來た。

(……なんでこの人ここにいるんだよ)

ハヤトのぼやきが聞こえるはずもない。気が付かないようにと祈っていたのもつかの間、2人は降りてすぐにハヤトに気が付いた。

(やべーよやべーよ……)

《お前の運もここで盡きたか》

(元々無いものは盡きたと言わん!)

ギルド(JESO)のメンツをかけた表彰式、その中でもトップにいた草薙家の関係者である凜に向かってハヤトは喧嘩を売った上に挑発したわけである。若気の至りとは言え、二度と會わないと思ってた人間だったからあれだけ啖呵を切ったのだ。

「お久しぶりですね、ハヤトさん」

「ええ、ホントウニ……」

凜はハヤトを見ながらにこやかに挨拶してきた。まさかこんな所で再會するとは……!

こえぇ……。

「今日は大変期待していますよ」

「……ドウモ」

「ちょっとお母さま! ハヤトさんを委させるのはやめてください!!」

「さ、咲桜(さくら)さん……!」

「あら。では、私は立ち去ることにしましょう。咲桜(さくら)、あとは任せましたよ」

凜はくるりと踵を返すと後ろについた黒服たちに何か指示を出していた。

「……何であの人がいるんですかっ!!」

々あったんです。察してください」

「察しろって……」

「“當主”が若いと々言われるんです。たまったものじゃありませんよ」

「は、はぁ……」

咲桜(さくら)のその言葉で何が起きたかは大理解した。つまり、分家筋のどこかから苦があがったのだろう。咲桜(さくら)が當主になってからというもの『ダンジョン』だったり『星界からの侵略者』だったりと々ハプニングが起きている。

そこを何かチクりと言われたと思われる。命知らずも居たもんだ。

「あ、これ仙臺のお土産の牛タンです」

「え、今渡すんですか?」

「アイテムボックスにでもれておいてください」

「ああ、はい……」

咲桜(さくら)から渡されるがままにお土産をアイテムボックスにしまい込んだ。牛タンならセツカが喜んで食べるだろう。送別會の時に焼いてやろうっと。

「お疲れ様です。當主様」

その時、狩を著た1人がこちらに近づいて來た。何かあったのかと思い、その男の顔を見た瞬間、言葉に詰まった。

(…………っ!!???)

「“異界”へのり口が見つかりました。今からなら30分ほどで(・)を開けれます」

「開けてください。それと、このことを全に通告するのも忘れないで」

「了解です」

咲桜(さくら)と、淡々と喋るその男は。

……父親、だ。

父親はハヤトの方を一瞥(いちべつ)もすることなく、咲桜(さくら)に最低限の報告を済ませると持ち場に戻っていった。だが、その後ろ姿から目が離せない。わずかに上がった呼吸を淺く繰り返していると、心配そうな顔した咲桜がふと顔を覗き込んできた。

「大丈夫ですか、ハヤトさん。顔が真っ青ですけど」

「……ええ。それなりには…………」

危ない。呼吸が淺くなっていた。

ハヤトは自分に「大丈夫だ」と、何度も言い聞かせて深呼吸を繰り返す。

《おい、本當に大丈夫なのか?》

(……俺、帰っても良いかな?)

《ん、まあ。良いと思うぞ》

ヘキサもこればっかりは弄るに弄れない。真顔でそう言った。

《ここで帰っても誰もお前を責めん。嫌なら帰っても良いと思うぞ》

(…………だよな)

息を大きく吸う。そして、吐く。

(……ツバキが、いるからさ)

《ハヤト、お前にとってそんなに婚約者が大切か?》

(………………)

《逃げたって良いんだぞ》

(……殘るよ。やっぱり顔見知りが捕まってるのを見過ごすってのはいい気持ちがしないからさ)

《そうか。それなら私はもう何も言わん》

ヘキサはハヤトにほほ笑んだ。

「やあ、裝癖の変態君」

「あ?」

そんな2人のやり取りが終わると同時に後ろからやけに聞きなれた聲がかけられた。何だと思ってちらり、と後ろを振り返ると両手と両足を雁字搦めに縛り上げられたイグレスがそこに居るではないか。

「助けてくれないか」

「……何やってんすか」

芋蟲みたいに一生懸命這って來たのだろう。凄いと思うが気持ち悪いの方が勝つ。

「ヒロがね……」

「いや、何やったらそうなるのかって……」

「おう、ハヤト。そいつの話は聞かなくていいぞ」

遠くから聞こえてきた聲の主は全を黒の防に包んだ狀態でニッと笑った。

「ようやく捕まえたんだよ。こいつを『百鬼夜行』の“異界”に真っ先に落とす。まあ、釣り餌だな」

「えぇ……」

また知らないところで何かが起きていたらしい。

數日ぶりに會うヒロは相も変わらず元気そうだった。

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