《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第8-28話 魔師とダンジョン

「おっひさしぶりー! アメリカ以來ですねぇ! アメリアさん!!」

「ど、どうして……!」

「ハヤトさんに激しく求められまして」

その言葉を聞いてマジ? みたいなじでこっちを見てくるアメリア。

噓だから安心して良いぞ。

「なんでアイツがここにいるんだよ! ハヤト!!」

「連れてこいってアイツが言うんだよ」

「えぇ……」

ヒロも唖然。そりゃそうだろう。俺だって『核の』が付いてきたいと言った時は何とも返せなかったのだし。

「まあ、いいけどね。一度倒してるわけだしっ!!」

「おっと? 倒したのはハヤトさんであって貴方ではないでしょう」

『核の』がぐるり、と右足を軸にしてターン。アメリアのに向かってハイキックを叩き込んだ瞬間、発。尋常ではない筋力によって蹴り飛ばされたアメリアの部がぜたのだ。

り混じった雨の最中、アメリアがいた。

「戻って!」

その言葉を起點に砕かれたアメリア右腕の片が蠢(うごめ)くと、凄まじい速度で集合。1つの腕としてアメリアの元に戻ってくる。だけではない。先ほど『核の』が蹴り飛ばした部のも全て戻った。

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「およ?」

「死んで」

『核の』がアメリアの異常な再生能力に首を傾げた瞬間、その首をアメリアが摑むと地面に大きく叩きつけた。

「咲き誇れ」

アメリアがポツリと呟く。

「やべっ! 逃げんぞ!!」

ハヤトはとっさに踵を返して石階段の上からジャンプ。それを隣で聞いていた仲間たちも慌ててハヤトの後ろを追いかける。その最後となったクロエが階段の上から飛んだ瞬間、地面から紅い花が1、顔を出すとその花に続くようにして真っ赤な花が石畳の上に咲き誇る。

「『花園(フラワーガーデン)』」

アメリアの得意とする魔法、その1つ。數千度にもなるような超高溫の花を満開に咲かせる。ハヤトたちが立っている石畳も『花園(フラワーガーデン)』の放熱で、赤熱化し始めた。

「もっと距離とった方が良いな!!」

ハヤトは後ろを振り向くことなく、さらに距離を取る。アメリアはモンスターに囲まれた時この魔法を連発するせいで弟子(バディ)がすぐに火(・)傷(・)を負うので、誰しもがすぐに彼の弟子であることを諦めるのだ。

「あの子、大丈夫なの?」

クロエが走りながら尋ねてくる。だからハヤトは彼の正を包み隠さずに答えた。

「あれは『核の』……。ダンジョンの最奧のラスボスだよ」

「えっ。なんでそんなのがハヤトの手元に!?」

「分からん。あいつが付いてきたいって言ったんだ。いや、それはどうでも良くて」

ハヤトは道の側を流れていた川にざぶんと飛び込んだ。あー涼しい。

「逃がすわけ無いでしょー!」

「しつこいなぁ!!」

聲が近い!

これだけ離れたのに……。

と思って上を見上げると、アメリアを蹴りで上空に打ち上げた『核の』が地面を蹴ってロケットのようにアメリアに薄していた。空中でを立て直す間もなく、アメリアに追いついた『核の』は彼を両手で摑むと、空中で5回転。

アメリアのを激しく振るって地面に叩きつけた。庭の裝飾をするかのように植えられていた松の木々を々に砕いてアメリアが地面におちる。『核の』はまだ重力の手に捕まっていないかしばらく空中を漂っていたが、しばらくしてそのまま自由落下し始めた。

剎那、アメリアが落ちた場所から真っ白い熱線があがった。それを見た『核の』は両手をクロスしてガード。熱線が『核の』の両腕に激突。

瞬間溫度は數億度にも達するアメリアの切り札だッ!

だが『核の』は死んでいない……ようにハヤトには見えた。なくとも空中で熱線を利用したままかそうとしている。それを見たアメリアは熱線を絞って一點突破を狙う。

魔法という超常のエネルギーが一點に集められ、『核の』という化けの防を突破する――直前、『核の』の姿が消えた。

「……ッ!?」

ぞっとするような殺気と共にアメリアが飛び出して、ハヤトたちを見つけると飛びかかってきた。

「私が行きます」

「いや、待ってください」

さっと日本刀を取り出した咲桜(好戦的なお姉さん)をハヤトは止める。

「何故ですか」

「あれです」

ハヤトが指を指すよりも速く、アメリアはそれに気が付いた。

「めんどくさいなぁ!」

「そうですか? 楽しみましょうよ!!」

先ほどまでの火傷はどこへやら。完全に治ったでもって『核の』はアメリアを直上から毆り飛ばした。だが、腐ってもアメリアは吸鬼(ヴァンパイア)の真祖。『核の』の拳をしっかりけ止める。

ドウッッツツツツ!!!

け止めた衝撃(インパクト)があふれ出すと、ハヤトたちに暴風となって襲い掛かった。柳桜が激しく揺れ、桜吹雪が嵐となって吹き荒れる。

「ね、アメリアさん。私が手加減してるって言ったらどうします?」

「私も聞きたいな。まだ、本気だしてないって言ったらどうする?」

両者は互いに笑い合うと、お互いが接地している拳に力を込めて――発。互いに大きく距離を取ると、『核の』はハヤトの目の前に落ちてきた。

「ハヤトさん、武貰えますか」

「あい」

こいつにかかれば武能とか関係ないので、ハヤトはひたすらに頑丈さを追求したロングソードを手渡した。その奧、ソメイヨシノを背景に立ち上がったアメリアがそっと立ち上がるとどこからか取り出した剣を構えた。

その剣は明らかに剣としての形を模していない。刃は正しく付いている、だが持ち手の部分がいやに棘が生えているのだ。當然、それを強く握っているアメリアの手の甲を突き破って棘が生えていた。

「忘れたわけじゃないでしょ、ダンジョンちゃん。私の最も得意とする攻撃を」

「……ダンジョンちゃん。良いですね! その名前、可くて」

『核の』はそっと笑うと、

「ええ、勿論忘れるはずがありません。しっかりと覚えていますよ」

アメリアの本気。それを見るべく『核の』は深く腰を落とした。

「私の2つ名は“魔師(トリックスター)”。私の魔法を見たある探索者がつけた名前だけど、これ結構気にっているんだ」

「あははっ。見た目に反してカッコイイ名前貰ってますね」

「そうかな? いや、そうかもね」

アメリアは剣を指揮棒(タクト)のように振るった。

その瞬間、アメリアを中心に灼熱の花園が拡がると同時に常闇の世界に1つの太が生み出され燦々(さんさん)と桜景を照らし始める。さらにその周りを飛ぶように金の蝶が飛び始めた。

ハヤトはあれが何なのか知っている。れればたちどころに発してしまう悪魔の蝶。それは牧歌的な世界を味わうかのように、そっと灼熱の花の花弁に止まった。

アメリアの後ろには虹がかかる。綺麗な虹だ。

「虹を見るなッ!!」

だが、あれはアメリアに敵対する者が見れば目を奪われる。……文字通り、目(・)を(・)奪(・)わ(・)れ(・)る(・)。気が付けば花園の中に川が流れているが、れればれた分だけ命を奪われる死の川。

「久しぶりだね、アメリア!」

「今日はお客さんがたくさんだね!!」

ぴょん! と地面から案役の兎が飛び出す。

「「ようこそ、ワンダーランドへ!」」

“魔師(トリックスター)”アメリア。

それの真価はこの“覚醒”スキルにある。

それは“異界”の限定顕現。自分の世界を他者の世界にり付けるという強者の技でもってし遂げられる常識の埒外に存在するスキル。

人呼んで“世界は(ザ・)魔法で満ちている(ワンダーランド)”。

アメリアの絶対支配領域だ。

「じゃあ、本気でぶつかろっか!」

兎が笑う。アメリアが笑う。

「勿論」

『核の』が笑う。

そして強者は激突する。

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