《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第8-29話 真祖と”覚醒”
愚直にも飛び込んだ『核の』の足がアメリアの支配領域に侵した瞬間、地面を裂いて緑の茨がの足を摑んだ。信じられない強さで『核の』の足にしがみつくと、ゴリゴリッ!! と怪音を立てての足首のを削りとった。
「およっ?」
見た目と音に反して、『核の』は痛みをじていないかのように首を傾げて左の足で地面に著地する。見ればだけではなく、足首そのものが持っていかれていた。だが、『核の』は殘された左腳だけで大きく飛ぶ。
「駄目駄目!」
「緑は毒のだよ!!」
兎たちがそう言うと、空中に飛んでいた『核の』がのバランスを空中で崩して地面に落下。
(緑が毒の……? 毒って紫じゃないの……?)
《アメリカは毒と言えば緑なんだ》
(なんで?)
《さぁ……? が腐ったら緑になるからじゃないのか》
(えぇ……?)
ほんまかよ。っていうツッコミをヘキサにしようと思ったら『核の』が地面から起き上がった。
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「負けるなー!」
「押せ押せ!!」
「ぶっ飛ばせー!!!」
野郎3人組からの熱い聲援をけ取って『核の』は手をふる。
「この完璧にお任せですよ!!」
と、言った瞬間『核の』はの中から出て來たを吐き出した。
「げほっ。これはひどい。視界がブレブレで見えないじゃないですか」
「そうだよ!」
アメリアの『不思議の國』を照らす太のが『核の』の一點に集められる。莫大な熱。それこそアメリアが最も得意とする『熱線』を何倍にも強化したような純粋なエネルギー。
「なーんて、ちょっとやられた振りをしたら引っかかったりしますか?」
太のが『核の』を焼き熔かすその瞬間、の振るった指の軌跡が獨特のきを持って『核の』のに侵した毒を全て解除……だけではない。削られた足首すらも完全に再生。
『核の』が使ったのは“覚醒”スキル、“天命すらも我が手中《メディクス・オディクス》”。この世界に存在する最強の治癒スキルだ。その能力は人間という1個を最(・)も(・)完(・)璧(・)な狀態へ上(・)書(・)き(・)すること。
これがある限り、『核の』を殺すことは出來ない。
剎那、発。『熱線』が一點に集められたことにより地面が気(・)化(・)。積が膨張して発した!!
「逃がさないって!!」
アメリアが笑うと地面に咲いていた灼熱の花が一斉に風にのって揺れ始める。
……風? どこから吹いているのだろうか。
そんなことを考えた瞬間、ハヤトたちをこれまでにない熱波が襲った。たまらずハヤトはアイテムボックスにれていた灼熱地対応型ポーションを人數分取り出すと、一気に飲み干した。
《アメリアが花の溫度を上げたんだっ!!》
ヘキサの助言を聞きながら『核の』を見る。指を獨特の軌道でかしながら、火傷の狀態を上書きしながらアメリアから距離を取った。
「ふーん。ダンジョンちゃんでも逃げるんだね」
「逃げる?」
『核の』はぞっとするような笑みを浮かべて剣を構えた。
「私の視界全てが、私の攻撃範囲(キリングレンジ)ですよ」
「そう?」
アメリアが左手を掲げる。轟っ!! と風が吹き荒れ、花弁が舞い散る。アメリアの“異界(ワンダーランド)”に紅い花吹雪が踴ると、の左手には白い火球が出現していた。
「じゃあ、の速さで撃ち抜いてあげる」
「? 吸鬼(ヴァンパイア)がを使うんですか?」
「ふふっ。私は最強の“真祖”だよ? すらも私の下」
「ほぉー。カッコイイですね」
『核の』はかない。アメリアもかない。
「そうだよ! アメリアはかっこいいんだ!」
「それに強いから! 強くてかっこいいのがアメリアなんだ!!」
兎がはやし立てる。はやし立てるのは良いのだが、彼らは一なんの役目があって現れているのだろう? さっきから何もしていないようだけど……。
《野次を飛ばすのが仕事なんじゃないのか?》
(んなバカな……)
幾らアメリアが舐めプ神を持っていたとしても、流石に馬鹿みたいに脳のリソースを使う“覚醒”スキルにそんな無駄な召喚モンスターを生み出すだろうか?
……生み出すだろうなぁ。
すぐに一蹴出來ないのがアメリアらしいと言えばアメリアらしい。
「楽しいお仲間さんにちゃーんと見せつけてあげるので安心してくださいね。アメリアさんが負けるところ」
「そう? じゃあハヤトたちの前でダンジョンちゃんの弱さを教えてあげるよ」
そして、両者がいた。アメリアの手元にある魔法はシンプルな魔法、『熱線』。ただの熱エネルギーに指向を與えて放出する。威力だけで言えばハヤトが良く使う『氷柱(ツララ)』魔法の上位版だ。
だが、此度(こたび)のそれは違う。エネルギーを手元に集め、わざわざ可(・)視(・)化(・)することによって管理しやすくなったエネルギーはアメリアの思考通りにかすことが出來る。
故に、アメリアがの速さと言ったのであればそれはの速さとなる。
彼我の距離は15m。1秒間で30萬キロも進むことの出來るからすれば存在しないのも同義の距離。だが『核の』は笑う。
それは自分が死なないという絶対の自信からか?
それはアメリアの攻撃が取るに足らないものだという見下しからか?
否! 斷じて否!!
絶(・)対(・)に(・)勝(・)つ(・)という自信からだ。
「人って凄いと思いませんか?」
『核の』は腰を落として、刀を正眼に構える。
「雑魚だよ。どれだけ群れても、有象無象」
アメリアの手元のが形質変化を起こして、白い球だったところに無數の幾何學的模様が刻み込まれていく。そして、それが一気に開くと大きな花がアメリアに向かって咲き誇った。
「そうですか? まあ、貴方もそ(・)こ(・)にたどり著いた時點で確かに凄いのかもしれませんね。私は0を1にしましたが1を100には出來ませんでしたので」
「何の話?」
「なんでもありませんよ」
『核の』はにっこり笑う。
「思えばこれはある意味で人の進化なのかも知れませんね」
「良く分かんないから、これで終わり」
花弁が輝く。花の中心から生みだされる『熱線』は速。一度撃たれれば回避は不可能。防も不可能。絶対の攻撃を前にして、『核の』は逃げない。何故ならそれを撃ち破る方法を手にしているから。
「…………ッ!!」
「ね、凄いでしょ? 人って」
アメリアのが両斷される。一瞬、遅れて手足が削がれる。最後に首が斷たれて、地面に落ちた。
「“神に至るは我が剣なり《イグジティウム・デウス》”っていう“覚醒”スキルなんですけど、これ凄いですよね。結果をこの世界にり付けるんですよ? だから、移なんて無駄な過程をやっちゃう攻撃はぜーんぶこのスキルには葉わないんです」
「……ダンジョンちゃんって、“覚醒”スキル使えたんだね」
「あ、この間使える様になりましたー!」
あっけらかんという『核の』。
っていうか、さらっとアメリアが首だけで喋ってるんだけど“真祖”ってそんなことまで出來んの? すげーな。
「どうします? まだやりますか? まだやるって言うなら“覚醒”スキルの全盛りパーティーでお迎えしますけど」
「それは流石に無理」
アメリアは観念したように笑う。
「じゃ、ツバキの場所を教えてもらうぞ」
ハヤトはすかさずそう言った。
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