《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第8-30話 ヒーローの踏破者!

「分かったよ。私が案する。けど治るまで時間くれる?」

「すぐに治るだろ」

「まぁね」

アメリアの斬られたはハヤトと話している間にも蠢(うごめ)いて元の形に戻ろうと、必死に足掻いていた。

「もう戻って良いぞ」

「はーいっ!!」

アメリアが元の姿に戻るのをただ待っているのもあれなので『核の』にハヤトがそう話しかけると、彼は深く頷いた。すると、が淡い粒子狀に変形してハヤトの右の中指に付けられた紫水晶(アメジスト)の水晶に戻って行く。

「便利だね」

「ああ」

アイゼルに相槌を返している間に、アメリアのが完全に修復された。

「んじゃ、いこっか」

「……ああ」

こうしてみると普通ののように見える。だが、彼は吸鬼(ヴァンパイア)の真祖なのだ。

「こっちだよ」

気が付けば先ほどまで騒がしかった2匹の兎が見えない。アメリアが“覚醒”スキルを解除したからだろうか。きっとそうだろう。マジであの2匹が何かしたというシーンを思い返せないのだが、本當にはやし立てるだけが仕事だったんだろうか。

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「それにしても良いタイミングで來たね」

「良いタイミング?」

「うん。だっていま天日(あまひ)いないし」

「いない? 何で?」

「何でって言われても知らないよー。“魔”は基本的に単獨行、そうでしょ?」

「ん。まあ、そりゃ……」

「それに、私たちと違って々考えてるみたいだしね」

「どういうことだ?」

「天日(あまひ)にはちゃーんと目的があるってこと」

アメリアはぴょんぴょんと石階段を飛び降りていく。足って落ちそうで見ていて冷や冷やするが、彼からすれば階段から落ちたところでなんともないだろう。

「“魔”だけの世界を創ることだろ? “天原”の初代當主だとは到底思えないような考えだけどな」

「それも天日(あまひ)の目的の1つだよ。それにしても1000年で変わっちゃったね。天日(あまひ)も」

アメリアは昔を懐かしむようにぽつりと言った。

「1000年前のばあさんを知らんからなんとも言えん」

「あの時の天日(あまひ)は凄かったよ。すっごいギラギラしてた。“魔”は絶対に許さない。見つけ次第殺すってじでね。人として初めて“真祖”を狩ったのも天日(あまひ)だし」

「……らしいな」

昔、父親から聞いたことだ。どこまで本當か分からないし、そもそも1000年前の日本に吸鬼(ヴァンパイア)がいるわけねーだろと思ったが、よくよく考えてみると別に日本で殺したなんて一言も言ってなかったので大陸に行った時にいざこざがあったのかも知れない。

「それがいつの間にかあんなことになっちゃってた。どうしちゃったんだろうね、本當に」

何度も地面をジャンプしながらアメリアが笑う。

「長く生きた“魔”は強く、賢くなるからさ」

「お、そうだな」

自分のこと分かってて言ってんのかな?

というツッコミをハヤトは飲み込んだ。

「え、賢い? お前が……?」

「賢いでしょ! ハヤトより」

だがヒロが突っ込んだ。しかしアメリアの返答がこれである。

救いは無いのかも知れない。

「比較対象がね……」

ほら、アイゼルにも呆れられてるじゃん。

《言ってて悲しくならないの……?》

(なんで??)

《いや、良い……》

救いは、無い。

「こほん! 話を戻すよ。天日(あまひ)は長く生きた。でも人のは1000年も生きれるように出來てない。だから天日(あまひ)はどこかで人間を辭めちゃったんだろうね」

「石仮面か?」

「何の話?」

鬼(ヴァンパイア)なら通じると思ったのに…………。

「生きていれば々考えることもあるんだろうね。ダンジョンとかもできちゃったし」

「そういえば、バアさんはダンジョンに関して特に何もしてこなかったな」

腐っても“天原”を名乗るのであれば何かしらのアプローチを仕掛けて來ても良かったのに、とも思うが。

「何も……ってことはないよ。その時期は『百鬼夜行』を作ってたし」

「ああ。そういえばお前らどうやって集まったんだ? ほら、“魔”はお互いにコネクションとか何も無いだろう」

「InstagramとFacebook、あとTwitterかな」

「げ、現代的ィ……」

俺1000年生きてる“魔”よりも文明的に劣ってるじゃん……。

「便利になったよね。本當に」

そういうアメリアの橫顔にはしだけ哀愁の匂いがあった。

「連絡を取るときに使い魔を放つ必要は無いし、返事が返ってくる相手が死んでるかどうかなんて気にする必要がない。あー、でも國の移し不便になったよね。パスポートとかいるし。って、また話が線してた」

アメリアは俺たちが來た方向、つまりアマヤたちがいる師たちの拠點とは反対方向に足を向けた。そっちに人質たちが集められた場所があるのだろうか。

「とにかく天日(あまひ)はあの時、“魔”を集結させてた。2年間もかかって、日本だけじゃなく世界の“魔”を1つにしようとしてたんだよ。多分、ダンジョンをどうにかしたかったんだろうね」

「え、私ですか?」

何も言っていないのに指から飛び出してくる『核の』。

「何お前。勝手に出てこれんの?」

「當り前ですよね」

そんなドヤ顔で言われても……。

「うん。天日(あまひ)は前の『星蝕(アースイーター)』を倒してるでしょ。その時にミスって世界に“魔”がばらまかれた。だから今回のダンジョンもどうにかして“魔”をばらまきたかったんじゃないかな?」

「んー。モンスターをダンジョン外に出すってのは確かに用意してましたけど……。あれは100層まで長した後、最初にたどり著いた人を私(・)た(・)ち(・)の仲間にしつつ、『核(コア)』からエネルギーを補給してる間の時間稼ぎですよ? 時間的には半年とかくらいですね。その後は地球ごとドカン! ってなりますよ」

「多分、天日(あまひ)はその半年の間にダンジョンを攻略する気だったんだろうね。そうすればモンスターが世界にばらまかれた後、ダンジョンちゃんは長できない。そうでしょ?」

「確かに。そう言われたらそうですけど、100層の私めっちゃ強いですよ」

100層の『核の』は確かに強そうだが、ハヤトは天日(あまひ)の方が強いとすんなりれてしまった。完全に負け犬屬についちゃってるな……。

「天日(あまひ)は多分、やるよ」

「そんなに強いんですか?」

「うん」

そう言っている間に、一行の目の前に巨大な日本の城が見えてきた。

「ツバキはあそこにいる」

アメリアはまっすぐその城を指さした。

「でっかいな。どこにいるんだよ」

「天守閣」

「は?」

何でそんなところにいるんだよ。

と、突っ込む間もなく門番の『鬼』がこちらを睨みつけてきた。

……デカい。長だけで5mはあるんじゃなかろうか。

「通るね」

「こちらは?」

流石に門番はそのまま通してくれなかった。手にもっていた巨大な薙刀をクロスさせてハヤトたちの行く先を封じたのだ。

「人質だよ」

「お通り下さい」

「ありがとね」

一切疑われることなく城の中に案される6人。

警備ザル過ぎんか。

しかし突っ込むに突っ込めないのでアメリアについて城の中にってひたすら上ること十數分。天守閣に近づくにつれて、次第にどんちゃん騒ぎが聞こえてくるではないか。

「咲桜(さくら)さん。俺、なんかここに來た事を若干後悔し始めてるんですけど」

「……奇遇ですね。私もです」

もう何やってるか大察してきた2人と違って3人は今からの戦いに備えて武を手に取っていた。特にクロエなんかは公安零課、つまり警察にいるもんだから正義も強いんだろう。やる気満々だ。

でもそのやる気、要らないと思うんだけどなァ……。

「開けるよ~」

襖の外にたどり著いた瞬間に歓聲が一気に大きくなる。

「ああっと~! S! O! SOSO!! 相!! はい! 相!!」

やけにリズミカルな調子ではやし立ててるこの聲……絶対ツバキだ。ハヤトの顔がなんとも言えない苦の表に包まれた瞬間、アメリアが襖を開いた。

中にると、ツバキが一番の上座についており、その周りには魑魅魍魎の妖怪だらけ。しかも彼らの前には酒! 酒!! 酒!!! 周りの妖怪とそして何故かツバキがノリノリではやし立てて見たこともないおっさん(多分妖怪)に一気飲みさせてる。

「……なにこれ」

「あれ、はやちゃんじゃ~ん! 元気だったぁ!?」

嫌に上機嫌で手をふるツバキ。それに反応して橫にいた妖怪たちがやんやのコールでれる。

「…………どういうことなの?」

「地獄の沙汰も金次第だよ♪」

……さいですか。

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