《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第8-31話 出の踏破者たち!

「ここにいるのはツバキだけか?」

一気飲みをさせられたおっさんが酒をこぼしながらその場で倒れた。だが倒れたというのに誰も助けに向かわずさらにどっと歓聲が上がった。

……凄い世界だ。

「そんなわけないじゃ~ん。他の人たちは地下牢に捕まってるよ」

「……なんでお前は天守閣(ここ)にいんの?」

ハヤトの言葉ににっ、と口角を釣り上げてツバキは笑う。

「人も“魔”も考え方にそこまで差は無いんだよ。だからさ、ここでも飴と鞭をちらつかせれば簡単に外に出れるってわけ」

「……へぇ」

何一つとして參考にならないがそこら辺の考え方はとても『ダンジョン』に近いものがある。そういえば『ダンジョン』で思い出したけどいつの間にか『核の』がどこにもいない。勝手に出れるってことは勝手に消えれるってことなのかな。

「んじゃ、全員解放しよっか」

「つーか、どういう理由でお前捕まってたの」

ハヤトはそうぼやいた。というのも、”魔“にとって人が天敵であるように、人にとっても”

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魔“は天敵。よく殺されずにいたものだと心してしまう。

「だって、私は機報の塊だよ? そんな簡単に殺せるわけないじゃ~ん」

「……そんなもんなの?」

「うん。“魔”だって馬鹿じゃない。長生きしてる分、同じ失敗はしないんだよ」

「同じ失敗って……。前にもこんなことがあったのか?」

「アフリカだよ」

「アフリカ?」

「そう。人種差別をけていた黒人たちは國を白人たちから解放した時に、當時政府の中心にいた人たちも一緒に追い出しちゃったんだよ。そしたらさ、誰も政治を出來る人がいなくなっちゃってさあ大変。ま、中にはそれを見抜いて白人たちに同じように政治を続けさせた國もあるけどね~」

「その言い方だと」

「やっぱり『百鬼夜行』は完全に日本を転覆しようとしてる。いや、日本だけじゃないか。この世界をひっくり返そうとしてるんだよ」

「……隨分と先を見てるんだな」

「誰でもこれくらいは考えるよ~」

ツバキは踴るように歩いて天守閣から出ていく。なのでハヤトはその後ろを追いかけた。彼はどんどん下に降りていく。途中で何人かの“魔”とすれ違ったが、誰も彼もツバキが外を歩いているということに違和を持っているようには見えなかった。

この城の中でも相當の良い待遇を得ているらしい。ツバキは階段をぴょんぴょんと飛び降りていくと最下層で綺麗に著地。ハヤトたちを連れて地下牢を進んで行く。

“異界”という神世界の中に複雑な建があること自がまずもって異常だが、さらにはハヤトたちが今立っている地下牢という存在も、これが神世界に存在しているというのがその異常をさらに引き立てていた。

自分の深層心理の中に、こうして誰かを閉じ込めるような場所があるということである。相當アレな神狀態をお持ちの“魔”が作った世界なのだろう。それこそ、長い間どこかに幽閉されていた“魔”が作り上げたのかもしれない。

「ここにいる人たちが全員、『百鬼夜行』に捕まった人たちだよ」

「とりあえず、鍵を壊していくか」

ハヤトが手に槍を生み出すと、地下牢にかかっていた鍵を突いて砕いた。っていうか、この時代なのに地下牢が木で作られているのは大丈夫なのか。

ハヤトが開いた扉から初老の男が何度も頭を下げながらようよう出て來た。

「んじゃ、どんどん開けちゃおー!」

というツバキの號令の下、ハヤトたちは地下牢の鍵を砕いて壊して焼き切って。どんどん『百鬼夜行』に捕まった人たちを解放していく。彼らはハヤトたちの來訪を喜ぶ者、もっと早く來いと怒鳴る者、何が起きているのか今になっても納得出來ていない者と反応が様々だ。

「なぁ、アメリア。この“異界”を作った奴は誰だ?」

「え? “伏見”の狐だけど」

「……アレか」

若干予想はしていたがまさか“伏見”が寢返っていたとは。いや、寢返るも何も無いのかも知れない。アレは最初から“魔”。それが気まぐれで人に力を貸していてくれただけだ。人はこの世ならざる者たちの善ばかりを取りたて、悪を“魔”と呼び排除する。

だが、そのどちらも1つの生きのことなのだ。

「とにかく、天日(バアさん)がいないに“伏見”の狐を抑えてしまおう」

「んー。それは良いと思うけど、大丈夫? あの狐、相當強いよ?」

「……何とかするしかないだろう」

流石に天日ほど強くはないはずだ。“魔”の結束力は弱い。ひと押しすればすぐにでも壊滅してしまうだろう。だから、今がチャンスだ。

「ヒロとクロエ、あとアメリアは人質たちとアマヤたちのところに行ってくれ」

「あれ? 私が一緒に居なくて良いの?」

「良くはないが……。他の“魔”に襲われた時にお前がいれば何とかなるだろ」

「むー。なんか舐められてるみたい」

「何だよめんどくさいな。じゃあ、ほら」

ハヤトが右手の中指を掲げる。激しい紫と共に指から現れるのは『核の』。

「はいはーい! 今度は何スか?」

「アメリアの監視をやってくれ」

「あいあいさー!」

二つ返事で『核の』は仕事をれてくれた。流石のノリの良さ。ここまでフットワークが軽い事に尊敬すらも覚える。

「ってなわけで、俺達は“伏見”を探しましょう」

「……ですが、“伏見”のことですから私たちがくことを先に占ってるかもしれません」

「そうだとしても、この“異界”を解くわけにはいかないでしょう。もうここにはアイゼルがいる」

「アイゼルさんが?」

ちらり、と咲桜(さくら)がアイゼルを見た。

「僕の『魔法』は、もうこの“異界”を覚えた。いつでも追えるよ」

「ってことですよ。アイゼル、この“異界”の主を見つけれるか?」

「ちょっと待ってくれ」

アイゼルがそう言うと、両目がわずかに発。敵の位置を探っているのだろう。しばらくそのまま態勢を固めていたが、

「見つけた。近く無いけど、遠くもない。走ればすぐに追いつけるはずだ」

「分かった。じゃあ、とにかく人質の人たちを外に出そう」

ハヤトがそう言った瞬間、のそりと階段の上から1の鬼が姿を見せた。鬼の姿は小さく、醜い。……鬼(ガキ)だ。

「なッ! 何で全員解放してるんだ!!」

「私が指示したよ」

アメリアが一歩前に出る。だが、その額にはしの冷や汗が流れた。

「う、噓だッ! だ、誰から指示されてるんだッ!!」

鬼の知能は低い、そのはずだがこの鬼は嫌にはっきりと喋った。変異個だろうか。

「き、來てくれッ! みんな!! 人間たちが、解放……ウグッ」

埒が明かないと思ったハヤトが鬼を押さえつける。

「……まずいな」

「に、逃げんぞッ!!」

ヒロが足の止まった人質たちを後ろから急かす。だが、鬼はハヤトの拘束を自分の右腕を無理やりちぎって抜け出した!

「はッ!?」

“魔”なら自壊を恐れず戦うことは理解出來るが、まさか拘束から抜け出すためだけに右腕を引きちぎるのかッ!

鬼は素早く移すると地下牢の壁にかかっている鐘を激しく叩いた。遅れて甲高い音が部屋の中に響き渡る。

「……急ごう」

ハヤトは鬼に氷柱(ツララ)を放つ。剎那、激突音と破砕音が響いて、

「俺が先頭を行く」

槍を構えた。

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