《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第8-32話 一番槍と踏破者と!

一番槍、という言葉がある。文字通り戦場で真っ先に飛び込んでいく兵士に與えられる稱號であるが、今回のように出するときの先頭も一番槍って言うんだろうか。なんて柄にもない事を俺は考えた。

手にもった槍を力任せに振るうと、目の前にいた“魔”がの中心から薙ぎ払われる。どころか、骨ごと斷つが“魔”はそれでも死なない。きちんと魔祓いの手順を踏んでいないからだ。

“【魔祓い】【一番槍】【先制攻撃】をインストールします”

“インストール完了”

久しぶりにみるスキルインストールの表示を見ながら、ハヤトの足が地面を蹴った。反で廊下の木を抉(えぐ)りながら飛び込んだハヤトに刀を手にした武者が飛び出した。

ハヤトの突きを刀で逸らすと、ドドン! と、地面を踏み抜き開いた距離を詰めてきた。ハヤトは手に持っていた武を解放。黒い霧の中で振るわれた刀にそっと手をれる。防の耐刃が萬全に効果を発揮して、ハヤトのに衝撃だけが伝わってくる。

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その衝撃を、脊髄を中心に反転。

「『彗星(ほうきぼし)』」

刀ごと後方に弾き飛ばされた武士を、確認することもなくハヤトめがけて飛んできた苦無(クナイ)を手の甲の丸みを使ってらせると、右手を掲げる。氷のが煌めいて、氷柱(ツララ)が苦無(クナイ)の飛んできた方向に向かって飛んでいく。

遅れて砕音。苦無(クナイ)の主がどこかで倒れたのだろう。もしかしたら祓ったかも知れない。全ての手順をすっ飛ばして“魔”を祓う【魔祓い】のパッシブスキルは異常に過ぎる。

「こっちだッ!」

一度は歩いてきた道だ。外に出るまでの手順を忘れているはずがない。ハヤトは先頭からやってくる“魔”を薙ぎ祓いながら先に先にと進んで行く。ハヤトたちが潛り込んでいる城はデカい上に中が複雑ということも相まって外に出るまでに中々時間がかかったの、地下牢という場所もあって10分ほどで出ることが出來た。

「誰かと思えば人質たちか」

「生かしたまま捕まえないといけないのか?」

「逃げる場合は殺しても良い。天日(あまひ)さまがそうおっしゃっていた」

「なら殺そう」

ハヤトたちが城の外に出るのとほぼ同じタイミングで、頭上から聲が降り注ぐ。それもそのはず。門番の『鬼』は長5m。二階建ての家と同じくらいの大きさである。そんなのが人間なんて簡単に殺せるような大きさの薙刀を持ってハヤトたちの前に立ちふさがっていた。

「咲桜(さくら)さんは右をお願いします!」

「両方やりますよ?」

「いや、右だけで結構です」

ハヤトは咲桜(さくら)に支援を要請。まだこの人の力は溫存しておくべきだ。こんな雑(・)魚(・)相手に彼の力を出させるわけにはいかない。というか溫存しておくんだったら『核の』にやらせればよかったな。

なんてことを地面を蹴ってから考えた。

ハヤトめがけて巨大な薙刀が振り下ろされる。彼はそれを空中でけ止めると、撃力を反転。鬼の尋常ならなざる膂力と、薙刀の遠心力が加わった一撃はまさに地獄。常人であれば形も殘さず消え去っていたであろうそれを撃ち返した瞬間に薙刀が砕け散る。だけではなく、それを持っていた鬼の両腕が大きく千切れた。

「……つっよ」

そう言ったのは紛れもない。鬼に対する素直な賞賛である。ハヤトは自ら放ったエネルギーでさらに上方に飛び上がると、両腕を無くした鬼を遙か眼下に見下ろした。

「さよならだ」

ハヤトの両足が鬼の肩にれる。その瞬間、彼の両足が鬼の両肩を々に踏み抜くとそのものを走りぬける莫大なエネルギーが撃発。

「『星穿ち』」

ハヤトのその手が鬼の頭部にれた瞬間、堅牢を誇る鬼の頭部が車に轢かれたアルミ缶のように潰れると、の中に埋(・)ま(・)っ(・)て(・)い(・)っ(・)た(・)。

そして、絶命と同時に祓われる。

ちらりと隣を見ると咲桜(さくら)は既に鬼を倒して人質たちを先に行かせていた。

「……速いっすね」

「そうですか? ちょっとつついただけですよ」

「じゃあ、俺が止めを刺しときますよ」

咲桜(さくら)は『魔祓い』の手順を知らない。だから、“魔”を祓えない。彼に出來るのは死なない“魔”をひたすらにい(・)た(・)ぶ(・)る(・)ことだけなのだ。

「お願いしまーす」

それが彼の弱點と言ってしまえばそうなのだが、逆に死なないからこそ悪魔のような拷問となるのかもしれない。

ハヤトは咲桜(さくら)が弄んだ鬼を見た。両腕と両足の関節が全て逆方向に捻じ曲げられ、首が180°逆を向いてしまっている。咲桜(さくら)は武を使わず拳だけでこれをやったらしいが何をどうやっているのかが分からない。

見ているだけでは仕方がないので、ハヤトは氷柱(ツララ)を沈黙している鬼に放った。それが最後の止めとなって鬼は絶命。祓われた。

「人質はヒロたちに任せて、俺達は“伏見”の狐を探すことにしましょう」

「そうですね。アイゼルさん、お願いします」

「分かりました。こっちに」

ヒロたちの最後尾でこちらに両手を振りながら去っていく『核の』を無視して、ハヤトたちはアイゼルの先導の元、出口の真反対側に向かって走りぬけた。

城の中にいる“魔”はハヤトたちを探そうと躍起(やっき)になっていたが、門番がやられているのを見て相當に怖気づいたらしい。追撃の手はびて來なかった。

「あれだ」

しばらく走っているとアイゼルが先頭を走りながらある建を指を指した。そこにあったのは巨大な建。純日本風であることは間違いないが、先ほどのような戦國時代の城の様子ではない。どちらかというと、平安時代のような古臭さがある。

立派な門構えの建だが、先ほどのように門番が立ってはいない。

「本當にここなのか?」

「間違いない」

アイゼルの輝く瞳がそう言っているということは間違いない。彼を信じよう。

「……本當に“伏見”がここにいて、何もしていないということであればそれはここにっているということになりますよ」

咲桜(さくら)がぽつりという。

そうだ。“伏見”の占いは的中率100 %。

外れることが無いのだから、ハヤトたちがここにいることも分かっているはずなのだ。

「中にろう」

われているのであれば、そのいに乗るしかない。ハヤトたちは建の中にる。大きさに反して、生の空気が無い。誰もここに住んではいないのだろうか。そんなことを想いながらハヤトは建の中を見回した。

「よく來たの」

ふと、聞いたことのある聲が聞こえた。ハヤトたちは弾かれたように聲の主を見ると、そこには大きな金の尾に包まれるようにして半たちが甘な聲を上げている。

「えっ! そ、そういう系の人だったの!?」

これは思わずハヤトもびっくりだ。

“伏見”の狐は、しかしそれに気分を悪くした様子を見せずケタケタと笑う。ちなみにそんな彼も半である。

《…………はぁ、尊い》

また訳の分からん事を言っていると思ってヘキサを見ると、鼻を垂らして彼たちを見ていた。

……思念って、出るんだね。

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