《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第8-34話 ダンジョンと踏破者!
「死刑」
《死刑だな》
ヘキサと“伏見”の狐の言葉は同時に聞こえた。
「私がこの手で必ず殺す」
ざッ、と“伏見”のに激しくノイズがるとその姿が消えた。そして、同時に屋敷の中の燈りが全て同時に消える。この“異界”の空に高く浮かび上がっている月のだけが部屋の中を照らす。
「さーすが! 私、ハヤトさんなら絶対言ってくれると思ってましたよ!」
「……めっちゃ怒ってたようだったけど、大丈夫かな?」
ヘキサとハヤトの間にくっそ気まずい空気が流れていると『核の』がそれを打ち消すかのようにそう言った。
「何言ってるんですか! ハヤトさんがああ言ったことであの九尾の狐がわざわざこっちに出向いてくれるんですよ! それで!! ここにいるのは! 私と! ハヤトさん! そして、このクソつよお姉さんの3人ですよ!! 負けると思ってるんですか」
「実力差が分かんないのが怖いんだって」
確かにこの3人に対抗できるのは天日(あまひ)くらいだろう。だが、問題は九尾の“伏見”は“魔”絶対殺すウーマンと化していた昔の天日(あまひ)と出會って生きびているのだ。
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ならば実力は天日(あまひ)と同等か、それ以上あると考えておくべきだろう。
なくとも、それが最善だ。
「なーにを暗く考えているんですか! 暗く考えたって何も始まりませんよ?」
「なくとも何も考えず楽観視して良い相手じゃないだろう」
そうハヤトが言った瞬間、
『WoooooooOOOOOOOOOO!!!!!』
狼の如き、遠吠えが響いた。そして次の瞬間、ハヤトたちが立っていた屋敷が蒸発した。
「あっぶね!」
いち早くそれに気が付いたハヤトが2人を捕まえて逃げ出した。遅れて、発炎上。
「な、何です!? 今の!!?」
『核の』が驚いた様子で飛んできた熱(・)線(・)を見た。アメリアが連していたそれよりも、數はないが一本一本は明らかに太い。
「……さぁ? 何かの呪じゃねえの」
「呪って……! なんかもっと札とか持ってどうこうするのじゃないんですか?」
「そんなこと言ってもさ」
ハヤトたちは著地。遙か遠くに巨大な尾を生やした大きな狐。間違いない。あれが“伏見”の本。
「あれは數千年生きてる化けだぜ? それもずーっと長い間、呪いとか占いばっかりやってきた狐だ。何が起きたっておかしくねえだろうよ」
「そ、そんなこと言ったって……。あれビームですよ! ビーム。師って言ったら変なダンス踴ってるのが普通じゃないんですか?」
《…………ふっる》
「すまん。そのネタは分からんが、お前の考えてる呪――ああ、他の人たちに伝わってる呪ってのは平安時代とかのやり方なんだよ。今はもっと複雑化しているし、高度化してる」
「え、そうなんですか?」
そう聞いて來たのは咲桜(さくら)。逃げるときにハヤトが抱きかかえたのだが、一向にハヤトにしがみついて降りようとしない困ったお姉さんである。
「そうですよ。例えばアカネちゃんが使ってた自分の替わりに形代を使う。あれだって元々は病気とか怪我を押し付けるものだけだったのに気が付けば新しい自分の命として使えてるじゃないですか」
「た、確かに……」
「裏の世界でずっと先鋭化していた呪。それに九尾の知識が加わればビームくらい撃てるだろ」
「いや、その理屈はさっぱり意味が分からないんですけど」
『核の』は近くに生えていた松の枝をへし折って、手にした。
「姿を見せたってことは、斬られる覚悟があるってことですよ」
「そだな」
ハヤトも手にした剣を構える。2人は互いに両目を見合わせると、頷いて狐を見た。
「合図とか決めます?」
「要らんだろ」
「じゃあ、1、2の3で行きましょう」
「だから、要らないって」
「1、2の」
そうは言うものの、ハヤトはしっかりとタイミングを合わせて。
「3」
消えた。
剎那、咲桜(さくら)が捉えたのは全長15mはあると思われる巨大な九尾のに『X』狀に巨大な剣閃が走ると、が4分割された瞬間だった。
「……すごい」
そして、自分も向かわなければと足を急がせた。
「あれ? こんなんでもう終わりですか??」
「んなわけあるか」
“神に至るは我が剣なり《イグジティウム・デウス》”で“伏見”の狐を斬ったハヤトたちは九尾の死の上で腰を降ろしていた。
「呪……呪いってのは、何かに押し付けることが一番得意な“異能”だぞ? しかも1000年以上も生きてるような奴がこんなんで死んだら苦労しないって」
死なないと分かっているのなら、“覚醒”スキルも使い放題というわけである。
「だから、ほら。すぐにでも2波が來るぞ」
ハヤトたちの腰かけていた九尾の死が急速に朽ち始めた。腐食、呪における最も初歩の呪いだ。
「えぇー。皮剝いで売ろうと思ってたのに……」
「えぇ……」
『核の』の発想にドン引くハヤト。
「だって、あれだけ大きくてきれいな皮ですよ!? 売らなきゃ損じゃないですか」
「お前、金いらねえだろ」
自分のから數億の価値のアイテムがバンバン出てくるような存在が、何を持って金がしいだなんて言ってるのだろうか。
「って、これが腐ったってことはそろそろ來るってことですかね」
「多分、な」
次の瞬間、九尾の死の腐食が地面にう(・)つ(・)っ(・)た(・)。ぼこぼこと発酵し始めた地面の下から骸骨のような手が見えた。それも1つ、2つではない。無數に生えてきているではないか。
「……鬼」
「何ですかそれ」
「式神を死で作った奴」
「強いんですか?」
「強いっちゃ強いけど、俺達相手だと正直足止めにもならないと思う」
そう言ってハヤトは生み出した刀を振るって一掃した。“スキル・インテリジェンス”が新しいスキルをインストールしなくても、【武創造】スキルで攻撃範囲を指定すれば簡単に範囲攻撃を行う武が生み出せる。
「おおっ。一瞬ですね」
「あの狐がこんなことで俺達の足止めが出來るなんて思っているはずがない。絶対なんか來るぞ」
「何かってなんです?」
「それが分かれば苦労はしない……って!」
見るとハヤトたちは九尾に囲まれていた。
「おー。全部で1、2、3……9! 九尾らしいですね!!」
「別にそういうことじゃないと思うけどな」
「それで、どれが本なんですか?」
『核の』がハヤトに尋ねる。だが、ハヤトが答えるよりも速く。
「全てが、本よ」
と、九尾が答えた。
「つーことはあれだ」
ハヤトは新しい武を造りながら、その中の1を見た。
「全(・)部(・)同(・)時(・)に倒せば良いんだ」
「お、脳筋ですね。嫌いじゃないですよ。その発想」
2人は背中合わせて剣を構えた。
そして、同時に地面を蹴った。
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