《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第8-35話 閉じる異界と踏破者!

2人が描くは1人の

そういえば最近會ってないけど、元気にしてるだろうか……。なんてことを思い浮かべて、ハヤトは苦笑した。

の心配をするなんて、自分らしくもない。

「“萬象斷つは我にあり(エスト・ウルティネス)”」

視界にったを全て1直線に斷ち切る“覚醒”スキルを両者が発したのは同時。2人の刃がをばらまいて、世界を統べた。

ドウッッッツツ!!!

空気が斷たれ、生まれた真空狀態に周囲のが軒並み巻き込まれていく。當然、それに巻き込まれた九尾たちも例外ではない。“伏見”の狐が生み出した自らの分は5秒と持たずに消し去られた。

「これで終わりか?」

「終われば良いですねぇ」

『核の』がそう答える。斷ち切られた九尾のが煙となって消えて行く中、ハヤトたちは構えたままじっとその時を待った。

「…………あれ?」

「え、ホントにあれで終わり?」

ハヤトも『核の』も首を傾げる。

どんな続きが來るのかと思って待ち構えていれば、何も來ないではないか。

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しかもそれだけではなく、見れば“異界”そのものが歪んでいるではないか。

「……マジか」

ハヤトがぽつりとらす。

「あれ、どうしたんですか?」

「お前は指の中に戻れ!」

「お、トレーナーらしくなってきましたね!」

「良いからっ!!」

ハヤトはさっさと『核の』を指の中にしまい込むと、さっき來たばかりの道を全力逆走。こちらに走ってやって來ている咲桜(さくら)と出會うと、そのまま彼の手を引いてさらに走る。

「ど、どうしたんですか!」

「“伏見”が“異界”を閉じようとしているんですよ!」

「そ、それなら良いじゃないですか。閉じると何か駄目なことがあるんですか?」

「“異界”と現世の間に挾まれてどこにも行けれなくなる可能があるんですっ! 俗にいう『神隠し』ってやつですよ!」

「マジですか」

「マジですよ。まあ、天音がいるなら多分向こうの世界に戻してくれるでしょうけどっ!」

「な、なるほど。だから今は師の所に走って向かってるんですね」

「そういうことです! って、しまったッ! アイゼルのことを忘れてきた」

大きな大きな忘れだ。ハヤトがちらりと屋敷の方を見ると、その反対側から聲をかけられた。

「こっちだよ」

「おわっ!」

「いや、悪い。なんかよく分からない場所にいたんだけど、ハヤトがあの狐を倒してくれたから僕も戻って來れたよ」

「通りでいなかったわけだ」

“伏見”の狐が作ったこの世界では、彼のやりたい放題だ。だから、アイゼルが彼を斬った時に別世界に閉じ込めておいたのだろう。それが、ハヤトのせいで解かれたと。

「僕が先頭を走ろう」

アイゼルがいるなら、道案を頼めばいい。

「咲桜(さくら)さん、ちょっと失禮します」

ハヤトはそう言って咲桜(さくら)を抱きかかえると、アイゼルと目を見合わせて加速。アイゼルが先頭を走ることでその後に生まれる薄い大気の中を疾駆していく。ステータスと地に無理を言わせたとんでも走法だが、それのおかげで二人の速度は音速を遙かに上回り、あっという間に『師』たちが開いたゲートへと戻ってきた。

「倒したのか?」

まだ元の世界に戻っていなかった天也が、やってきたハヤトたちにそう尋ねた。

「分からん。とにかく出よう」

「そうだな」

ハヤトたちは空間に空いたにダイブ。ここに來た時と同じように洗濯中の洗濯機の中に放り込まれたような回転を味わってから、外に吐き出された。

木と土の匂い。謎の甘い匂いがしない上に、あたりはまだ暗いままだ。どうやら元の世界に戻って來れたらしい。ハヤトたちがゲートを通るのを確認して飛び込んだ最後の『師』がこちらの世界に戻ってきた瞬間、ゲートが閉じた。

これで向こうの世界に閉じ込められた人間はいないはずだ。

ハヤトはそう思って周囲の顔ぶれを確認する。全員が全員の名前を覚えているわけではないが、それでも向こうに飲み込まれる前に確認した顔ぶれはそれなりに覚えているのだ。

アイゼルもいる。咲桜(さくら)さんもいる。ヒロもいて、アカネちゃんもいる。天也は後ろで指示を出しているし、アマネは…………なんであいつアメリアと一緒にいるんだ。その近くにはクロエがいる。

良かった、これで全員だ。

《……イグレスは?》

「あっ」

いない。それもそのはずだ。ヒロが先に別の世界に放り込んだ上に、あれから誰も探しにいってないのである。

「ひ、ヒロ! イグレス……さんは!?」

「え? ああ、いないな」

「……それだけ?」

「まあ、あいつのことだから放っておいても戻ってくるだろ」

「んなアホな」

「そんなことより、俺達がやらなきゃいけないのはアレだよ」

ヒロの指さした方を見ると、さっきの“異界”が閉じた時に“伏見”が外に逃がしていた魑魅魍魎たち。

「殘黨狩りだ」

「……ああ」

ここにセツカを連れてこなくて良かったと、その時ふと思った。

「やるか」

ヒロがやる気満々だ。さっきの世界で暴れられなかったのが、尾を引いているのかもしれない。

「……君たち、さらっと僕のこと忘れてるよね」

「おー、イグレス。生きてたか」

突如聞こえてきた聲の主はどうやってか世界の狹間から抜け出してきたイグレスだった。

「まったく。殘黨を狩るんだったら、それこそ僕の出番じゃないか」

「何やるんです?」

そういえばイグレスが戦っているところを見たこと無かったなと思いハヤトがイグレスに尋ねると、

「ここら一帯を晝にする」

「は?」

と返ってきた。

「まあ、見てなって」

そう言ってイグレスは大きく指を鳴らした。次の瞬間、月明かりがあり得ないほどの熱とを放ち始めると10秒も経たずに月が太と化して、周囲が一気に明るくなった。

「……す、すごっ」

「どう? ちょっとした手品だけどね」

……これが魔法?

“天原”の技の中にも……いや、世界中のどこを探してもこれだけの規模の魔法というのは無いんじゃないだろうか。ヒロの隕石を落とす魔法も、イグレスのこんなふざけた魔法が許される世界だなんて、この2人の世界は一どんな世界なんだ。

「おい、ハヤト。ぼけっとしてる場合じゃねえだろ」

「あ、ああ」

見ると殘された“魔”の軍勢は、突然周囲が晝になったことに驚いて既に狂狀態になっていた。

「さっさと終わらせよう」

殘黨狩りには、1時間とかからなかった。

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