《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第9-1話 お嬢様と踏破者!

「なあ、エリナ。うちの通帳どこ行った?」

「通帳ですか? 私の部屋ですけど……もってきましょうか」

「ああ」

珍しく晝時だというのに靜かな自宅……。というのもアメリアは咲桜(さくら)さんのところでパスポート作りを々やっているし、セツカは自室で晝寢中。遊び相手がいなくなった『核の』はハヤトの指に戻ったのだ。

ということで外のベランダにタコ紐で指を括りつけて外に放り投げておいた。あれで勝手に外に出ようとしたらそのまま地面に落ちるというシステムである。『核の』のことだ。この程度の高さから落ちてもなんともならないだろう。

《どうしたんだ。急に金の話なんか》

(いや、咲さんと話しただろ)

《學費か?》

(そ。大學のな)

《まじで行く気満々なのか……》

エリナが自室から隨分古くなった通帳を1つ、持ってきた。

「うおっ。懐かしっ……」

「ご主人様って、基本的に探索者証(ライセンス)で支払いますから通帳見ないですものねえ」

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「そーなんだよ。だからいま貯金がどれくらいあるのか知りたくてさ」

そう言ってハヤトは通帳を取り出して、自分の資産を見た。

「…………」

「あ、そうだ。通帳の見方知ってます?」

「流石に知ってる……。っていうか、これじゃないよ。ちゃんとした通帳持ってきて」

「はい? ウチにある通帳ってそれだけですよ?」

「俺の資産がこんなに0が多いわけないじゃん」

「いや、それですよ。マジでそれです」

「うっそだぁ……」

ハヤトは通帳に記載された自分の貯金額を見た。

「…………いや、おかしいって。俺の貯金、30億あるもん」

「300憶ですよ、ご主人様」

「………………?」

「ちょっと待ってください。本當に理解できないんですか?」

どこを見れば一番分かりやすいだろうか。

夢でも見ているかのような不思議な気持ちで、ハヤトは誰からこんなに金がっているのかを見た。

まず一番最近あったのは“八璃(やさかに)”から……。つまり、ツバキからの助けてくれてありがとう代だ。それがまず50億。

そういえばまだあいつから謝の言葉聞いてねえな。つーか、なんで俺の口座知ってんだろ……。

「まあ、ツバキなら分からんでもないか」

「超財閥のお嬢様でしょう? 助けたんだからそれくらい貰ってもバチはあたりませんよね!」

「ま、そうだな」

さらにさかのぼっていくと、基本的にはギルドからの金。つまりはダンジョンに潛った時の報酬代だ。確かにそれらもそれなりに稼いでいるもの、こんなにアホみたいな金額になるような額じゃない。

「マジでどっからの金が一番大きいんだよ……あっ」

……見つけた。

「これだ」

200億。よく分からない団名からの金になっているが、時期的にこれは『黃金の夜明け団』からの金だ。

「ああ、なるほど。そういうことか」

そりゃ國1つを救ったわけである。これくらい貰わないと割に合わない。

「……んで、300億っていくらなんだ?」

「300億は300億ですよ」

「それは……そうなんだけど……。……何が買える?」

「世界で一番高い車が20臺買えます」

「……え、世界でいっちばん高い車って15億もすんの?」

「ま、そんなとこです」

「はぇ……」

知らない世界を覗いた気分である。

「世の中って広いなぁ……」

「それでご主人様、勉強はしなくても良いんですか?」

「休憩だよ。休憩。はぁ、10年ぶりに勉強するから頭ががちがちになるぜ」

「10年ぶりって、そんな年じゃないでしょう。それに英語があったじゃないですか」

「あれ丸暗記しただけだしなぁ……」

「でも英語の績は良いんでしょう?」

「そーなの。つってもこれスキルのおかげだからな。俺の実力じゃないし」

「……覚えてるならなんでも良いんじゃないですか? 探索者らしくないですよ」

「ぐう……」

エリナに丸め込まれてしまった。確かに探索者は目的遂行のためならなんでもやる。そこで一切の私を挾まない。今回のように高認試験を突破するためなら、それがスキルのおかげなのだろうと自分で努力した結果なのだろうと関係ないのだ。

「ちょっと休憩したら勉強に戻るよ。あ、そうだ。冷凍庫にアイスあったよな」

「あれセツカさんのですよ?」

「いや、そっちじゃなくて……。箱で買ってきた何個もってるやつよ」

「あれなら昨日ぜんぶセツカさんとダンジョンさんが食べてましたよ」

「………………」

じゃあもう水でも飲もうっと。そう思ってハヤトが立ち上がると、タイミングよくチャイムが鳴った。

せっかく立ち上がっているのだし、もう自分が出ようと思ってディスプレイを見るとカメラを覗き込んでいるツバキがそこにいた。

「……暇なの?」

「ハヤちゃーん! いるの分かってるんだよぉー! 出てきなよぅ!」

「靜かにしてくれ」

それだけ返して、ハヤトはチャイムを切ると鍵を開けずキッチンで水を一杯あおった。

次の瞬間、鍵が開いてないと悟ったツバキがもう一度繋いでくる。

「ちょっと! ハヤちゃん! 今日は遊びに來たんじゃないんだって!!」

「えぇ……。じゃあ何だよ」

「仕事の依頼だよー! 暇してるんでしょ?」

「暇じゃねえよ。俺勉強してんだよ」

「なんの? 教えてあげようか?」

「あー……」

ハヤトは言葉を濁してヘキサを見た。

《……?》

ハヤトは高認試験の勉強のほとんどをヘキサに教えてもらっている。確かにヘキサは頭が良いし、數學・理・化學の理系科目についてはいちゃもんの付け所が無いほど教えるのが上手い。

だが、一方で地理や歴史、地學が出來ないのだ。そもそもこの星の生きでないヘキサにそれを求めるのは酷だと分かっている。暗記しろと言われたらそれまでなのだが、誰かから教わるのが一番早い。

「じゃあ、話だけなら……」

ということでロック解除。

數分してツバキが部屋に上がり込んできた。

「それで仕事ってなんだよ」

ハヤトはエリナが紅茶をれている間、そう尋ねた。

「そろそろ私の誕生日じゃない?」

「ああ、そういえば」

すっかり忘れていたが、確かにもうそろそろでツバキの誕生日だ。

「それで、誕生日パーティーをやるんだけど」

「おう」

「ハヤちゃんって、私の婚約者(フィアンセ)だからさ」

「やだよ」

「言うと思った」

そう言ってツバキはけらけらと笑って。

「と、冗談はいったんおいといて。ハヤちゃんには私の護衛を頼みたいの」

そう言った。

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