《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第9-4話 壊れた踏破者!

「あ、赤ちゃん……?」

ハヤトはシオリの言っている意味が分からず、首を傾げた。

「そう。赤ちゃん。英語だとbaby」

シオリは扉の外でこちらを見ながらはっきりと言った。

(また、訳の分からないことを言いだしたな)

《それにしては目が殺気立ってないか?》

(何で子供が出來た報告でそんな殺気立つんだよ。喜ばしいことだろ)

《ピュアっピュアァ!!》

(…………)

さて、ヘキサの煽りを軽くけ流して……というかヘキサの煽りが頭にらないくらいには、シオリの言葉がとんでも無かったのでヘキサの煽りをけ流すことが造作も無かった。

「開けて。扉を」

「…………」

とりあえず話を聞かないことには話が始まらないので、ハヤトは扉を開けてシオリを家の中にれた。

「……どうしたんだよ。防なんか著て來て」

不思議なことにシオリが著ているのは海外で見慣れた和服っぽい防。つまり、ダンジョンに潛るときの恰好だった。腰には當然、『戮刀【雪影】』を備えている。ってことはダンジョンに潛った後、このままの恰好で外に出て來たってこと?

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「赤ちゃんが出來たの」

さっきから同じことしか言わないシオリ。

「何で?」

「なんで? 不思議なことを聞く」

シオリがぼそっと呟いて一歩前に踏み込んだ。ぐいっとハヤトに近寄ってくるものだから、ハヤトも一歩引いてしまう。ぽたり、と廊下に赤いが滴った。……か?

が、あるから」

「どこに」

「私と、ハヤトに」

シオリの目が見開かれ、ハヤトの瞳孔を覗きこむ。

……こわっ。

マジでこいつどうしたんだよ……!

「ほら、見て。ハヤトの目に私が映り込んでる。お似合いだね」

…………。

「な、何を言ってるのか意味が分からないんですけどぉ……!」

があればコウノトリが來るんでしょ? ハヤトが言っていたけど」

「2人のがいるんじゃないの?」

「そう。だからコウノトリが來たの……!」

シオリがさらにこちらに一歩踏み出してくるものだから、ハヤトはさらに後ろに足を下げる。だが、シオリはハヤトを逃がさない。どんどん足を進めてハヤトを壁際に追い詰めた。

「ねえ、ハヤト」

「……なんすか」

ハヤトは周囲を確認。後ろはリビングに繋がる扉だが、開くためにはこちら側に引かなければならず、今のままでは部屋の中にれない。トイレや洗面所に向かうための扉は閉まっているし、そもそもそこに行くためにはシオリをどかさなければならない。

に、逃げ場が無い……! 詰んだか……!?

「ハネムーンはどこに行きたい?」

「ダンジョンが無いところッ!」

ハヤトは言うが早いが、壁を『星走り』気味に蹴り飛ばしぎりぎり開いていたシオリのの下を、全をくねらせながら出。

《どこに行くんだ?》

(頭の醫者だッ!)

ハヤトとしてはシオリがついにおかしくなった説を熱く押したい。

きっと、過酷な家庭環境が彼を痛めつけてしまったんだろう。シオリの頭がおかしくなったのはシオリが悪いのではない。彼の環境が悪かったのだ。

(可哀想なの子だぜっ!)

と、悲劇のヒロインを救うヒーロー気分で部屋を飛び出そうとした瞬間、ハヤトの目の前にが立ちふさがった。

「……あれ? 澪?」

「ねえ、師匠」

こんな晝間から外に出ているとは珍しい。塾の帰りだろうか? いや、澪の行ってる塾は俺の家とは真反対……。

というところまで考えて、澪を見ると足にべったりとが付いているではないか。防も半壊している。だが、よく見るとそのは澪のものじゃない。返りだ。

「お、おいおい。怪我してるじゃないか」

「師匠……。探しましたよ……」

「ど、どうした……?」

が壊れたから防を買うためのお金を貸せとかだろうか? 別に弟子だから払えと言われたら払うつもりでいるがそれにしたって恰好がおかしい。返りだってシャワーを浴びれば落ちるはずだし、服だって防じゃなくて普通の服を著てくれば良いだけの話だ。

「……出來ちゃいました」

「な、何が…………」

聞きたくない。

聞きたくないが、聞かなければならない……!

「赤ちゃん」

澪は満面の笑みでそう言った。

《草》

(笑ってる場合かッ!)

「だ、誰の……!」

「師匠の」

「んなわけあるかァ!」

澪をしているかと聞かれればそれはイエスだが、弟子としてしているのであってとしてしているのではないッ! と、自分を正當化するためにそう言った瞬間、あることに気が付いた。

も、もしかしてそれが悪かったのか?

(な、なあ。ヘキサ)

《どした》

(そ、その。弟子としてしてても子供ってできるのか?)

《出來るぞ》

(噓だろ!?)

噓も噓。真っ赤な噓に決まっているが、ヘキサはこの狀況を楽しむことに決めた。

《マジだ。よく考えろ。今まで大事な場面でお前に噓をついたことがあったか?》

(……な、無い…………!)

《そうだろう。そうだろう》

そう言いながら顔がにやけているのでハヤトから顔を逸らして、聲だけで返すヘキサ。

これは困ったことになったぞ……!

と慌てるハヤト。シオリを見て、澪を見て、その後シオリを見た。名前はどうしようか。學校とかちゃんとしたところにれてあげた方が良いのではないか。いや、そもそも澪の両親に挨拶をしておくべきなのか。

「ねえ、ハヤト。その子、誰」

「師匠。その人誰ですか?」

しかし、2人はハヤトを挾んで向き合った。

「だ、誰って……。見れば分かるだろ?」

「なんで師匠の部屋に知らないがいるんですか?」

「なんでハヤトの部屋に知らないが來るの? しかも私よりずっと若い」

「いや、お前ら。何を言っているんだ……?」

ここで事の重大さに気が付いたハヤト。だが、シオリと澪は互いに抜刀。

「……何をなされるおつもりで?」

「「殺す」」

えらいこっちゃ! えらいこっちゃ!!

2人とも目が座ってる。これはマジでやるときの目だ。

だ、駄目だ。力づくで取り押さえるか? 2人とも無傷で?

無理だ。澪はともかく、シオリを無傷で取り押さえれる自信がねえ。

そ、そうだ。“覚醒”スキルッ!

“スキル・インテリジェンス”は“覚醒”スキルであれば、任意に使えることが出來る!

か、考えろ……! この狀況を覆せるような“覚醒”スキルを……!

だが、深く考えるまでもなく答えは出て來た。

「澪とシオリに告げる……! 『一切の攻撃をずる』」

“正義を詠え、(オムニオ・)言葉でせ(ヴォルカルム)”。これ以上ない使い勝手の良いスキルがハヤトの言葉で発。そ、そして2人とも剣を構えたまま停止した。

「お、お前ら。マジでどうしたんだよ……!」

だが、ハヤトが話しかけても2人は固まったままかない。

ただ、止まったままである……。

「こ、壊れちゃった……」

ハヤトは半べそをかきながらヘキサを見た。

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