《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第9-10話 乗り込む踏破者!

それから、『百鬼夜行』のきは無かった。俺が九尾の恰好を見破ってしまったのが悪かったのかも知れない。『テイマーの會』のオフ會に參加したモンスターたちは解毒ポーションを飲ませて元に戻ったという。

「じゃあ、行ってくるよ」

ハヤトはそう言って自宅を振り替えった。

「行ってらっしゃいませ。帰ってくるのは明後日ですよね?」

「ああ。セツカと上手くやってくれ」

「はい。お仕事頑張ってくださいね!」

エリナに見送られるままに出発。スーツケースを持ってタクシーに乗り込むと駅にレッツゴー。そのまま新幹線の時間まで待ち、到著したそれに乗って東京へと向かった。

(……なんか、1人で乗る新幹線って初めてだわ)

《あれ? そうだっけ?》

(最初は咲さんだろ? 2回目はセツカとかエリナがいたからさ)

《ああ、そういえばそうだな。どうだ? 気分は》

(そうだなぁ。今は『核の(こいつ)』が出てこないかが心配だよ)

ハヤトは指を見ながらそう言った。

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一応、前日に釘を刺しておいたのだ。人前で出るな。目立つから辭めてくれ、と。

そしたら彼は「そんな所で出ても、面白くないからやりませんよ」と言ってゲタゲタと笑っていた。ハヤトとしては本當に出てこないように祈るばかりである。

《家に指を置いてくるのは駄目だったのか?》

(それも考えたけど、“九尾”がツバキの誕生日パーティーに仕掛けてくるなら大きな戦力がいる。『核の(こいつ)』はそれなりにうざいが、戦力面では誰よりも役に立つ。置くに置いとけねえよ)

“伏見”だけなら、自分でもまだ何とかなると思っている。だが、そこに天日(あまひ)が加わるのであれば話は変わってくる。咲桜(さくら)ですら倒した彼は、今のままでは制せない。

當然、ハヤトとて彼に対して無策なわけではない。だが、それが通用しなかった場合の保険はどうしても必要だ。

(んで、どこまで向こうは本気なんだろうな)

《さぁな》

経済界の重鎮である“八璃(やさかに)”家、その令嬢の誕生日パーティーとなれば各界の重鎮たちも無視は出來ない。政(まつりごと)の長と、戦の頂點とはレベルが違うのだ。今の世界において、最も重要なのは金。それがあれば政も力も変革してしまう。変革できる。

だが“八璃(やさかに)”の當主は気質柄、誕生日を祝われることを好まない。そのため、ツバキの誕生日パーティーの、その日その會場こそが日本で最も重要な場所となりうるのである。

(やな仕事だよ)

どうしてツバキは自分を指名したのだろう。あの手紙が誰にも信じてもらえなかったからか? いたずらだと吐いて捨てられたからか。そういえばあの手紙は……。

「……あっ」

ハヤトの短い聲は、幸いにしてアナウンスの聲にかき消された。

《どうした?》

(あの手紙の文字、どっかで見たことあると思ったんだ! あれ、“伏見”の文字だ!!)

《ケモミミの? どうして分かる??》

(『認識阻害の札』……だけじゃあ、証拠としてちょっと弱いか。けど、俺が見た託宣の紙と同じ文字だったんだよ!)

《なら、“伏見”があの會場に現れるのは確定なのか?》

(……だろうよ。そのための手紙だし、わざわざ俺に宣告したのもよっぽどの自信があるんだろうさ)

《占いで未來を見たということか?》

(……だとしたら、相當キツいな。的中率100%がどこまで本當なのか)

車両が再びき出し、に軽い負荷がかかる。

(つっても、それを今考えてもどうしようもないか。どっから來るか、なんて俺が考えたところでどうしようもない。俺に出來るのは、來た時にどうやって対処するかどうかだからさ)

《……む。ま、それもそうか》

(だから、今はこのままを楽しもうぜ)

ハヤトは品川駅で降りると、“八璃(やさかに)”の迎えを待つ。ツバキがやって來るかと思ったが、彼には予定がっていたらしい。黒スーツを著た男がハヤトを迎えてくれた。

「お嬢様のパーティーは明日の夜です。明日の15時までは自由にしていただいてもらっても構いません。ただ、15時にはお迎えにあがりますので準備を終えてホテルのラウンジに居てください」

「ホテル? どこのですか?」

「“八璃(やさかに)”の経営しているホテルです。ハヤト様はお嬢様の婚約者でありますからスイートルームを用意しております。東京(こっち)でかかる費用は全てこちらが持ちますのでご安心ください」

「そ、そうですか……」

思ったよりも好待遇で迎えられているようだ。ツバキの婚約者という話も“八璃”の中ではけられているらしい。“天原”……つまり、“草薙”の関係者のままなら使い道もあっただろうが、“天原”を辭めさせられた今でもツバキは俺を捨てていないということなのだろうか。

《それに見合う価値があると思っているんだろう》

(……俺に、か)

確かに金という意味であれば、ほぼ無一文みたいな狀態から300憶を稼いでる。常識で考えるとあり得ない振れ幅だ。探索者ドリームと言っても良いだろう。だが、それがツバキにも利益をもたらすとは思えない。

《広告塔として、お前に価値があるとで思ったのかな?》

ヘキサも首を傾げる。

(んー。どうだろうな)

ハヤトは連れられるがままにホテルの前に到著した。

ホテルマンに案され、ハヤトは部屋に向かう。部屋は最上階。窓からは東京を一できた。

(案外、何にも考えてなかったりしてな)

《あのツバキが、か?》

(流石に無いか)

ハヤトは笑うと、荷を部屋の中へとれた。

「明日、か」

天日(あまひ)は來るのだろうか。それとも“九尾”だけなのだろうか。

「何も起きないと良いけどな」

そんなことなどあるわけがないのに、ぽつりとハヤトは呟いた。

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