《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第9-19話 パーティーの踏破者!

「そういえばそろそろ時間なんじゃないですか?」

「ああ、そうだな。見送りくらいは行くか」

エリナがそう言ったので、ハヤトは自室の時計を見るとちょうど予定の時間を指していた。

なので立ち上がって外出の準備。セツカやエリナたちも準備を始める。それらが終わるとハヤトはマンションを降りると、ちょうど黒い高級車が止まっていた。

「ぴったりですね。ハヤトさん」

「ほんとですか? それなら良かったです」

ハヤトたちはそう言って咲桜(さくら)の車に乗り込んで、を任せた。

ハヤトが退院してから早くも1ヵ月が経った。時間というのは不思議なもので、何もすることがなければびっくりするくらい早く去っていくものなのだ。

“伏見”の狐が切り取った東京は実世界の東京であった。そのため、ハヤトたちの戦闘でぶっ壊れたビルや道路やらの後処理が大変で、一応ということでハヤトは何枚も書類を書かされたのは今となっては良い思い出である。

何の書類かも分からないまま、指定された場所に書きまくってそれが全部終わったのがちょうど1週間後。それから、ダンジョンシティ(こっち)に戻ってきたのだ。

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車に乗ったまましばらく走って、草薙が持っているビルの中にると見知った人が座っていた。

「やっ! 久しぶり」

「おう。元気してたか」

「うーん。それなりに? でも楽しかったよ! 日本のアニメたくさん見れたし!!」

そこにいたのはアメリアだ。

鬼(ヴァンパイア)の真祖ということで、ハヤトではなく“草薙”が管理することになった。そして、これから帰國する。ただ、吸鬼(ヴァンパイア)なのでパスポートを持っておらず、“草薙”が用意した國の航空機で帰ることになったのだ。

「聞いたよ。天日(あまひ)を倒しちゃったんだって?」

「うーん。倒したって言うか……。まあ、毆ったっちゃ毆ったけど……」

そういうとアメリアはケタケタと笑った。

「そんで天日(あまひ)は捕まったんでしょ? まさかこんなことになるとはね」

「捕まったって言うか。まあ、院してるけど」

は現在、“草薙”の分家である高千穂の所有している病院の中で治療をけている。外に出られないようにしてあるが、院は自由にけるはずだ。

「いやー。久々に心からびっくりする出來事だったよ。ありがとね、ハヤト」

「それ、褒めてんのか……?」

ハヤトは首を傾げる。

「そろそろ移しましょう」

咲桜(さくら)の言葉で、彼らは再び車に乗り込み移開始。國際空港に向かう。

彼らはひどく他もない話を広げた。敵になったとは言え、一時期は仲間だったのだ。それなりに弾む話もあるだろう。

空港につくと、既に“草薙”の関係者がアメリアを待っていた。

「それじゃ、ここでお別れだね」

「そだな」

これから先は、もう國の準備が始まる。ハヤトたちは共に向かえない。

「どうだった。ここ半年は」

「楽しかったよ。本當に楽しかった」

アメリアは心からそう言って、笑った。

「俺が」

「ん?」

「俺が大學にったら。行くよ、そっちに」

「え? ハヤトって外國にれたっけ?」

「何とかするって。こう見えても、ダンジョン攻略してるんだからさ」

そう言った瞬間、ハヤトの指からばっと『核の』が飛び出した。

「お久しぶりですねえ! アメリアさん!!」

「うーわっ……」

あのアメリアが骨に顔をしかめている。

珍しいな……。そんな顔するの……。

「悲しまなくても大丈夫ですよ! 向こうでもすぐに會えますからね!」

「二度と會いたくないんだけど……」

「またまた! 照れ屋さんなんだからぁ!」

「…………」

すげえ、あのアメリアを閉口させてる……。

「ハヤトさん」

「……ん」

咲桜(さくら)が時計を見て顔を上げた。

「じゃあ、ま(・)た(・)な」

「うん。ま(・)た(・)ね」

アメリアなら途中で飛行機が墜落したとしても生き殘るだろう。だから、笑って見送ろうじゃあないか。

アメリアは時折こっちを振り向きながら、日本で買ったお土産をスーツケースにれて持って空港まで行ってしまった。

「これで、ウチも寂しくなりますね」

「なるかなぁ……」

エリナの言葉に俺はため息で返した。

だってねえ、セツカと『核の』がいるし……。

「みんな、帰っていきますね」

「むしろ、こっちに來てるほうがおかしいんですよ」

咲桜(さくら)の言葉にハヤトが笑う。

「やっとこれで、元の生活に戻れるんです」

「戻りたいですか? ハヤトさんは」

「うーん。どうなんでしょう」

ハヤトは昔を思い返す。ダンジョンの3階層で、立ち止まっていた自分を。

金がなくて武も防も買えなかったあの時代を。

覚悟がなくて命を燃やす戦いが出來なかったあの時代を。

「昔が良かったなんて、思いたくもないですけどね」

「ふふっ。前向きですね」

いや、それはちょっと違うと思いますけど……。

「では、帰りましょう」

「ええ」

ハヤトたちは咲桜(さくら)の車に乗り込んだ。

「あ、そうそう。これ、買いましたよ」

「うん?」

車の中で咲桜(さくら)が雑誌を手渡してきた。何かと思って見てみれば、月刊『探索者』ではないか。

表紙にはキメ顔のハヤトがでかでかと映っている。

え? 俺が表紙なの……?

「なんで驚いてるんですか、ご主人様。サンプル貰ったじゃないですか」

「い、いや……。だって、見てないし……」

「なんで見てないんですか……」

「い、忙しかったし……」

噓である。普通に恥ずかしくて見ていなかっただけである。

そして、そのまま車の中で散々雑誌のことでイジられて家まで帰ってきた。

久しぶりに車にのったので、変な気持ちになりながら乗ったマンションのエレベーターでぽつりとエリナが口を開いた。

「そういえば近所の本屋さん、どこも月刊『探索者』が売り切れらしいですよ? 大人気ですね、ご主人様」

「……ほんとにそう思ってるのか?」

「え?」

「あのな。いるだろ、1人。買い占めそうなやつが」

「あっ」

「絶対アイツが原因だよ」

ハヤトが吐き捨てる様に言うと、ちょうどエレベーターが自宅の階についた。

「うわっ……」

そして扉が開くと、部屋の前にシオリが立っていた。

「……何やってんの」

「蟹(かに)……」

「かに?」

「蟹、買ってきたから……。みんなで、食べようと思って」

「うん。それは分かったんだけどさ。何でお前、オートロックのマンションに侵してんの?」

「ジャンプで」

「そうかい……」

ため息をつく。どうせ言っても聞かないんだから言うだけ無駄だ。

「あ、そうだ。澪も呼ぼう」

「もう、呼んだ」

「えッ!? 噓ォ!??」

あのシオリが澪をもう呼んだって!?

どうしたどうした。隕石でも降ってくるのか。

「てか何で連絡先知ってんの」

「ライン、換してるから」

「噓ぉ……」

今世紀最大級の驚きなんだけど。

何? ほんとはこの2人、仲良しなの??

「師匠ー! タイミングぴったりですね!」

「ごっ主人ー! お久しぶりです!!」

とか何とか言っていると、マンションの下から枝をばしてルネと澪がってきた。

お前らそれ、不法侵だからな。

《不法國してるやつが不法侵に突っ込むのか?》

(………………)

それを言われたらお終いである。

「蟹ですか……。初めて調理するんで上手に出來るか分かんないですけど、頑張りますっ!!」

もうこの狀況に突っ込まないエリナ。流石だ。

「はいはい。じゃあ、パーティーにしますか」

中にって電気を付けたり片付けたりしていると、チャイムが鳴った。

「今度は誰……って、ユイじゃんか。どした?」

「蟹買ったんだけど食べない?」

「お前もかい」

「? お前もって??」

「上がれば分かる」

ということで中に上げて、ハヤトは鍋を取り出した。

「えっ。蟹食べるんですか!?」

「お前は出てこなくても良いから」

急に飛び出てきた『核の』を取り押さえて、指の中に無理やり押し込んだ。

《あのさ》

(どした?)

《男比率、やばくね?》

(確かに)

《あのさ。すっごい言いづらいんだけどな》

(何だよ。お前がそうやって口ごもるなんて珍しいな)

《同の友達作れるようになっとかないと、お前の夢の花のキャンパスライフは葉わないぞ?》

ハヤトはひどく心を削られた。

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