《【完結】処刑された聖は死霊となって舞い戻る【書籍化】》あはははは

キツネビ生活は、たった一日で終わりを告げた。

そりゃそうだ。オニビの時より強くなっているのに、進化條件レベルは変わらないんだから。

見渡す限りのスケルトンを倒して、この森もちょっとは景良くなったかな。

ヒトダマになってから約一週間。霊にも慣れ、窟周辺の生活を謳歌していた。眠る必要はないけど、ずっとき回っていると疲れるので窟で休む。

(たぶんあと數匹倒したら進化できるんだよねー)

ウィル・オ・ウィスプとゴースト。どちらに進化するかは、ほとんど悩まずに決まった。

ウィスプはオニビやキツネビと似たような、火の玉だったと思う。人間を好んで襲うので、年に數件は被害が出るのだ。

ゴーストは丸いものに白いシーツを被せたような見た目で、風もないのに裾がひらひらと揺れる。夜な夜な人の前に現れて驚かせてケラケラ笑う。

私が選ぶのはゴーストだ。

このまま火の玉方面に進んでいっても、炎が強くなるだけな気がする。

Advertisement

笑い聲をあげられるくらいだから、ゴーストなら喋れるかもしれない!

『進化條件を達いたしました。ゴーストへの進化を開始いたします』

短いキツネビ生活だった。

明の白シーツ姿になり、めらめら立ち上っていた尾がなくなった。

も人間の赤ちゃんくらいの大きさになって、形もはっきりしてきたね。ゆらゆらと朧げだった半明のは、けてるけど郭は分かる。

(しかも手がある! かわいい!)

手と言っても、左右に二か所ちょこんと出っ張りがあるだけだ。それでも自分の意思でかせる部分があることに軽くした。を摑んだりはできない。オバケだからね。

それと、顔のような模様がある。ぎざぎざした口に、淡くる目が二つ。結構この見た目好きかも。

(口があるってことは、ついに喋れるかも?)

うしし、ついに人間に近づいてきたぞ。

あれ? 私べつに人間に戻りたいわけではないな。死霊生活、充実してるし。毎日のんびり魂食べてるだけでいいから、人間で聖していた時より楽しい。

(魔になると神も魔になるのかなー。孤児院の皆を助けたら、森に引きこもりたい)

でも魔王による侵略の時は、刻一刻と近づいている。

結界が消えてすぐに侵攻ってことはないだろう。一ヶ月か、二ヶ月か……多の準備の時を必要とするはずだ。

それを防ぐために、聲は必須である。

よーし、頑張るぞ。

「ぁ……ぁ……」

口を大きく開けて、聲を出そうとする。があるわけでもないのに、掠れた聲が出た。

ゴーストはケラケラ笑い聲をあげる魔だ。笑うだけで害のない不思議な魔でもある。

笑う以上は、聲が出せるはずなのだ。

「あ……あは」

霊魂になってすぐに移の仕方を認識しスキルを発できたように、初めてなのに自然と聲の出し方が分かった。

生まれ変わってからの第一聲だ。

「あははっ、あははははっ」

なんで笑い聲!?

「うふふ、あはは」

発聲のやり方を変えたり、勢を変えてひっくり返ったりしても笑うことしかできない。

ちょっと聲のトーンや笑い方が変わるくらいだ。どう頑張っても言葉になることはなかった。

(うう、なんでー? 神託)

試しに神託をお願いしてみると、その原因が判明した。

ゴーストになって獲得した、『ケラケラ』という種族スキルだ。ゴーストの場合は攻撃をするようなスキルではなく、ただ笑うだけのスキルだった。

(えええ、じゃあ喋れるようになったわけじゃなくて、笑い聲をスキルによって出すことができるだけってこと!?)

なんて意味のないスキルなんだ。拍子抜けである。

見た目と一緒でとても可らしいのはの子としては嬉しいけど、それじゃ意味ない。

でも、今までは笑うこともできなかったから、ちょっと進歩したのかな?

この調子で進化していけば、必ず話せるようになるはず!

(あれ……? 進化先候補が出ない)

いつもなら神託の時に一緒に教えてくれた進化先候補が、今回はなかった。

(もしかして進化終わり!?)

これ以上は進化しないということだろうか。

いや、まだ諦めるのは早い。スケルトンやゴーストは、必要素材を手にするまでは進化先が判明しなかったではないか。

もしかしたらレベルを上げるだけでは進化できないのかもしれない。

條件が整ったら、進化できるはず。

(とりあえず、またレベル上げかなー。スケルトンも減って來たし、別のところに向かおう!)

ただの火の玉から可い姿になれてテンションが上がっている私は、そのままの勢いで窟を飛び出した。

速度も上がって、なんだか楽しい気分だ。壁をすり抜けられるのは変わらない。

死霊のって最高!

「あははは」

スキルで笑っていると、だんだん心から笑えてくる。攻撃はできないけど良いスキルだね。

王子の前に現れて、全力で笑い飛ばしたい。腰抜かすだろうなー。

上機嫌で外に出た私は、すっかり警戒を忘れていた。

「ゴーストじゃと!?」

「む、珍しいな」

ヌシを倒しオニビになったあの日、ヒトダマの回収をしに來ていた二人の魔――牛面のゴズと馬面のメズが、目の前にいた。

    人が読んでいる<【完結】処刑された聖女は死霊となって舞い戻る【書籍化】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください