《【完結】処刑された聖は死霊となって舞い戻る【書籍化】》ひゃあああ、食べないでぇええ!

『不死の魔王』ファンゲイルが住まう砦の中にると、中はアンデッド系の魔が闊歩していた。森で徘徊している魔たちとは違い、武を持つスケルトンが多い。スケルトンソルジャーなどの、し強いスケルトンだね。門番スケルトンさんほどじゃないと思うけど、數が多い分彼らが魔王の主戦力なのかもしれない。

砦の中にのスケルトンはあまりいないみたい。

(ゴズメズはもう見えないね。ついていけば早かったのに)

魔王の姿を確認して、できるなら侵攻の予定とか戦力とか、そういった報がしい。

レイニーさんに伝えれば、何かしらの対策をとってくれると思うんだ。死霊のだと近づいた瞬間消滅させられそうな件については、後で考えよう。

(うわぁ、あれゾンビだ)

同じにヒトダマが取り憑く『憑依系』でも、骨しかないスケルトンに対して死がついたままになっているのがゾンビだ。筋は腐り落ち、目玉が飛び出ている。うう、気持ち悪い。

Advertisement

匂いをじられないで良かった。ゾンビは強烈な死臭を発する上に疫病の溫床となるので、スケルトン以上に嫌われている。

(ゴーストはいるけど……進化形っぽいのはいないかな?)

どうやったら進化できるか知りたかったんだけどなぁ。

もしやもう進化しないとか……いやいや、何か方法があるはず!

とりあえず當初の目的を果たそう。

本拠地の場所は確認できたから、あとはファンゲイルを探して、何かしら報がしい。無茶して殺されたら嫌だから慎重にね。

(私、知ってるの。偉い人は高いところに行きたがる!)

砦の構造はよく知らないので、まずはしらみつぶしにして階段を探そう。

外から見たじ、三階くらいまであったかな?

(ていうか、天井をすり抜けたら早いじゃん!)

思い立ったが吉日。さっそく上に登っていった。あまり高く飛べないけど、天井くらいなら屆く。

ゴツン。ってじでぶつかった。ズルはダメってことかな。

ゴーストっぽいきを心掛けて移する。

ゆらゆら、ふわふわ。

気分は湖に浮かんでいるじ。流れに任せて移する。

リラックスできて気持ちいんだけど、周りがカタカタうるさいから微妙。スケルトンばっかりだからね。

ゴズメズのように公用語を解する魔は今のところいない。そりゃそうだ。あんな強いやつが何もいたら困る。

(お、ここは食堂かな?)

この砦がまだ王國の持ちだった時、兵士の食事に使われていたであろう部屋は、そのままスケルトンの食事処になっていた。

アンデッド系は既に死んでおり不眠不休で戦える魔であるが、まったく食事がいらないわけじゃない。魔になってわかったけど、結構お腹空くんだよね。

彼らが食べるのは魂だ。

観察していると、一匹のスケルトンが廚房からボウルをけ取って椅子に座った。中にっているのは、數匹のヒトダマだ。

(ええええ! 養場のヒトダマってこういう使い道!?)

戦力がどうこう言ってたから戦わせるのかと思いきや、ご飯だった!

ゴズメズに捕まっていたら私もこうなっていたのか……危なかった。

(まあ私もヒトダマは好です!)

浮かれ気分で廚房に向かう。

死霊になってから主食はもっぱらヒトダマさんだ。お世話になってます。

彼らのおかげで死のショックを忘れられたといっても過言ではない!

ヒトダマって魂の魔なわけだけど、私みたいに前世があるのかな?

だとしたらかなり気まずい。ギフテッド教の教えでは死んでもヒトダマになるわけじゃないって話だったけど、私ヒトダマになっちゃったからなー。

まあ生きるために食べるんですが!

人間だったころの覚はどこへ行ったのか、とつくづく思う。

「うふふ」

廚房にいたコックスケルトンに短い手を上げてアピールする。

他のスケルトンより骨が綺麗でが大きいから、ちょっとランク高そうだね。手には剣の代わりに包丁を持っている。

「カタカタ」

コックスケルトン(私命名)は豬の首でも落とせそうな出刃包丁を持って、近づいてくる。へい、一番生きのいいやつ頼むよ!

ヒトダマはどこに収納されてるんだろ。ゴズメズが持ってた甕(かめ)みたいなやつかな。

手ぶらでやってきたコックスケルトンは何故か私に手をばし、大きな手のひらでがしっと摑まれた。

「あは?」

(へ? なんで私のことれるの?)

ヒトダマを調理するコックだから、霊に干渉できるスキルでも持ってるのかもしれない。

捕獲された私はそのまま廚房に引き込まれ、まな板の上に置かれた。

これはまさか……と思っていると彼は出刃包丁をキラリと煌めかせ、振り上げた。

(私、エサだと思われてる!?)

一番生きの良いのは私でした。ぴちぴちの年十五歳だからね。

そんなこと言ってる場合じゃない。

(ひゃあああ、食べないでぇええ! ファイアーボール!)

の魔法は使わない。聖屬の魔力はアンデットにとって弱點だから、みんな敏なのだ。づかれる恐れがある。

派手な火の玉で怯ませた隙に廚房を飛び出した。

(ひどい目にあった……)

スケルトンにむしゃむしゃ食べられるなんてやだよー。

気を取り直して探索を再開する。

(えっと、武庫かな?)

次に見つけたのは武庫だった。

敵の戦力分析も目的の一つである。私はこっそり武庫に侵した。

剣や盾、全鎧に槍、弓、斧など、多種多様な裝備が並んでいた。

砦にもともと備え付けられていたものが多いのだろう。ほとんどが古くなって錆びている。スケルトンたちが裝備している武もボロボロなので、手れしたり武を作ったりする技はないのかなー。

ゴズメズや門番スケルトンはちゃんとした武を持っていたので、高位の魔はやはり武も強い。

カチャ。

(ん?)

何か音がなった気がする。

しかし、武庫を見渡しても私以外の魔はいない。気のせいかな。

カチャカチャ。

違う、今度ははっきりと背後で金屬がれる音がした。

恐る恐る振り返る――が、そこには鎧が並んでいるだけだった。風でも吹いたのかもしれない。

私は前に向き直って、またすぐ振り返った。

フェイントをかけた私の目に飛び込んできたのは、変な勢で固まってる全鎧だった。

前屈みになって急停止するものだからバランスを崩して、倒れこむ。その拍子に兜が外れて転がった。

(この程度のフェイントに引っ掛かるなんてまだまだ――え?)

鎧は空っぽだった。

(てっきりスケルトンがってると思ったのに!)

そういう魔がいるのは知ってるけど、ふいに來られるのはびっくりするよ!

エアアーマーという憑依系の魔だったはず。起き上がってくる前に逃げよう。

「カチャカチャ」

自分の頭を持って起き上がるエアアーマーを目に、武庫を出た。

いろんな魔がいるね……。

(やった、階段発見)

庫を出てし行ったところに、上へ向かう階段があった。

ひょっこり顔を出して様子を伺う。うーん、上に向かう魔は誰もいないね。

スケルトンもゴーストも、好き勝手徘徊しているように見えて階段には近づかない。

まるで、立ちりを止されているように。

(ふふふ、これじゃ魔王がいますよって言っているようなもの! 聖ちゃん名推理)

バレたら迷い込んだフリして許してもらうとしよう。ようやくファンゲイルを発見できるかも。

    人が読んでいる<【完結】処刑された聖女は死霊となって舞い戻る【書籍化】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください