《【完結】処刑された聖は死霊となって舞い戻る【書籍化】》出!

出!)

『不死の魔王』ファンゲイルが居城としている砦を死に狂いで抜け出した私は、森の中にを隠していた。

であり常に宙に浮いているゴーストなのだけど、壁を抜けるとなぜか一階分落下した。重力の影響はないはずなのに、空を飛ぶことができないのだ。理由はよく分からない。

(うう、追ってくるかな?)

最後のファンゲイルは、完全に私を殺す気だった気がする。

ホーリーレイを使った瞬間、彼の聲は殺気に満ちていた。おそらく、私が聖であることにづいたんだと思う。

ホーリーレイは聖屬の魔法としては珍しいものではなく、『聖職者』やその上位である『樞機卿』など、他のギフト持ちでも使用することはできる。だが、彼は強力なギフトであると予測していたし、聖の結界が消失したことと私が現れたタイミングから、関連があると考えてもおかしくない。

確信には至らないかもしれないが、完全にマークされたと思った方がいいね。

得られた報と正がバレたこと、天秤はどちらに傾くか……。うーん、考えても仕方ないから、まずはこれで良かったと思おう!

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(えっと、門は王國側に向いていたはずだから……)

隣國との國境沿いに広がる広大な森に作られた砦は、門を王國側、攻撃をする正面を隣國側に向けているはずだ。直接見たことはなかったけど、そういう話を聞いたことがある。國境の警備や哨戒を行い、戦爭が起これば兵の拠點となるはずの場所だったから、砦としての機能を有しているはずだ。

軍事については詳しくないけど、わざわざ森の中に建てられたのは、森を抜けて王國へ進軍する際に最も歩きやすい道だったからだ。

門を出て真っすぐ進めば、そう遠くない場所に出られると思う。

(普通なら迷うところだけど、私に障害は関係ないからね!)

木でも巖でも、進行ルートにある障害は全て無視できる。迂回しなくてもすり抜けられるから、直線で移できるのだ。

(追手が來る前に逃げないと)

目指せ、孤児院!

結界が消えて魔の侵が増えたら、レイニーさんたちだけじゃ抑えられない。本格的な侵攻が始まる前に王國に著かないと。

孤児院にはアレンや子供たちがいる。優しいけど時には厳しいシスターや、期を過ごした街がある。既に孤児院を出ていったお兄ちゃんお姉ちゃんたちも、あの國で暮らしているんだ。

私が守らないといけない。ファンゲイルと直接會って、再認識した。彼は目的のためには、王國を滅ぼすことも辭さない。人間のような姿をしていても、彼は魔王なのだ。

そして、それを容易く可能にする戦力もある。數もさることながら、ゴズメズと門番スケルトンは強すぎる。生前の私でも倒しきることはできなかっただろう。せいぜい、聖結界で侵を防ぐだけで一杯だ。

他にも戦力を保有しているような口ぶりだった。

自惚れかもしれないけど、聖なしで守り切れるとは思えない。

(私が行かないと。もう死んでるとか、王子がムカつくとか関係ない)

自分が死んだことに対しては、あーあ、死んじゃったな、くらいにしか思っていなかった。元より、王宮の生活は楽しいものではなかった。貴族たちには疎まれ、すれ違えばあからさまに侮蔑の視線を向けられる。レイニーさんたちは優しくしてくれるけど、友人はいなかった。

だから、処刑される瞬間まで涙一つ流れなかった。王子たちはつまらなそうにしていたけど、それくらい自分のことに興味がなかったのだ。

でも、死霊になって初めて気が付いた。

私にとって、一番大切なのは孤児院の皆だったんだ。たぶん、彼らを守るためにこのになったのだと思う。私にはまだやるべきことがある。

(魂を集めて、レベルも上げないとね。進化しないと、あいつらには勝てない)

王國を守る。ゴズメズを倒して、ファンゲイルも倒す。

難しかったら他の方法も考えるけど、皆で協力すればきっとできる!

(ううぉおおお! やるぞー!)

とりあえずすれ違ったゴーストをパクリと食べた。うーん、ゴースト味しい!

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