《【完結】処刑された聖は死霊となって舞い戻る【書籍化】》信じて! 私だよ!
アレンとの再會は嬉しいけど、やっぱり怯えられてしまった。
そうだよね。だって、どう見ても魔だもん。孤児院の中を捜索している時に窓ガラスを覗いたら、黒いボロマントを被った足のない化けだったよ。フードの中には、ぼんやりとした影があるばかりで、顔もない。
ゴーストの時はなかなか可らしい見た目だったのになー。
私は小さく丸まって、柱の前に座りこむ。ここは私の定位置だ。アレンと喧嘩したり、シスターのエリサに怒られたりした時はいつもここで膝を抱えていた。床の木目を指でなぞりながらアレンがめに來てくれるのを待つんだ。
(あの頃は泣き蟲だったなー)
今もそんなに変わらないか。
レイスになってよかったことと言えば、指ができたこと。あの頃と何も変わらない木目を丁寧になぞっていく。
「セレナ、なのか?」
アレンが掠れた聲を絞り出した。私はぱっと顔を上げて、こくこくと頷く。
「え、でも死んだって……その姿は……」
Advertisement
ギフテッド教に縁のある孤児院で育ったけど、アレンは神ほど教義に厳格ではない。魔は生活を脅かす危険な存在として認識していても無條件で嫌悪するほどではないのだ。
それでもアレンは生前の私のきをする魔を前に困している。
(信じて! 私だよ!)
もう一押し!
ちょっと半明になっちゃったけど、あなたの婚約者ですよー!
ここで信じてもらわないと、魔の軍勢が來ていることを伝えられない。
自分を指さして、その指を今度は下に向ける。
せ、れ、な。ゆっくりと大きく、文字を描いていく。あいにくこのは塵一つかすことはできないから、いくらホコリが積もっていても文字にはならない。でも指のきをしっかりと読みとってくれた。
「本當に?」
「あはは」
(うん! そうだよ!!)
何度も首を縦に振る。
アレンは口を半開きにして、恐る恐るといった様子で手をばした。
アレンは私が死んだことを知っているみたいだね。
私も合わせて手を上げると、彼のやつれた顔がくしゃりと歪んだ。目が潤む。
でもごめんね。私、死霊なんだ。
「あ……」
二人の手は、溫もりを確かめ合うことなく差した。
アレンの腕は勢い余って宙を泳ぐ。その手はフードの中すら貫通して、柱を掠めた。
もう手を繋ぐことも、抱きしめ合うこともできない。
「なんだよ、これ。おかしいだろ。意味、わかんねぇよ」
ごめん。そうだよね。
ある日突然王宮に連れて行かれた馴染が、気づいたら死んでいて、今度はレイスになって戻って來た。普通の暮らしをしていたアレンにとって、理解が追いつかない事態だろう。私もよくわからないよ。
「俺はさ、セレナが王宮に行くのは嫌だったんだ」
うん。知ってる。
「でも、孤児院の家族を一緒に守ろうって言ったから。それでセレナが幸せになるならって」
幸せではなかったかな。私もアレンと一緒にいたかったよ。
「聖の役目が終わったら、結婚しようって言ってたのに」
覚えててくれてたんだ。
「なのに、なんで死んでんだよ」
アレンの言葉は支離滅裂だった。
口下手な彼が、思いのたけをぶつけてくる。私は返す言葉を持たず、ただ座って聞いていた。
アレンは右手で顔を覆って、嗚咽をらし始めた。拳を床に何度も叩きつける。彼を泣かせたのは、私だ。危機管理が甘かったのは認めざるを得ない。
私は腕を広げて、形だけでも抱きしめる。いつもと役割が逆だね。
アレンは強い。不用で要領が悪いけど、誰よりも頑張るし絶対に泣かない。
そんな彼が弱っている姿にが締め付けられる。
(聖域、ヒーリング)
れることはできないから、代わりに聖屬の魔力でアレンを包み込む。聖の魔法は暖かくじるはずだから、これを私の溫もりだと思ってもらえると嬉しいな。
私の魔力に包まれて、アレンはしばらく聲を押し殺して泣いた。一杯の強がりを、私は優しく見守る。
「あはは」
聞いて、アレン。
再會は嬉しいし、こんな形になってしまったのは悲しい。
でも、今は時間がないの。
し経って顔を上げたアレンに、振り手振りで魔のことを伝える。
「なんだ?」
(むむむ、婚約者なんだから私の言いたいこと分かってよ!)
なんていう一度はやってみたかったワガママ娘っぷりを発揮しても、私の表現力ではなかなか伝わらない。
ならば、先ほどと同じように文字を書こう。ポルターガイストでペンを握るのはまだ無理だから、指文字で。
シスターが私たちに熱心に文字を教えてくれたおかげ意思疎通できます。いつも逃げ回ってごめんなさい。
(ま、も、の、き、て、る)
「魔が?」
(5、0、た、い)
そこまで書くと、アレンの顔付きが変わった。
私は両腕を走る時のように互に振って、急いで! と主張する。
アレンは涙を拭って立ち上がった。悲壯は消えて、決意に満ちた表で私と目を合わせた。ちゃんと伝わったみたい。
アレンなら、きっと頑張ってくれる。大丈夫。
「お前はこれを伝えるために墓から出てきたんだな」
ちょっと違う。気づいたらヒトダマになってて、しばらく悠々と過ごしてました。
「今までと同じだ、セレナ――二人で、みんなを守ろう」
「あははは!」
(うん!)
12ハロンの閑話道【書籍化】
拙作「12ハロンのチクショー道」の閑話集です。 本編をお読みで無い方はそちらからお読みいただけると幸いです。 完全に蛇足の話も含むので本編とは別けての投稿です。 2021/07/05 本編「12ハロンのチクショー道」が書籍化決定しました。詳細は追ってご報告いたします。 2021/12/12 本編が12/25日に書籍発売いたします。予約始まっているのでよかったら僕に馬券代恵んでください(切実) 公式hp→ https://over-lap.co.jp/Form/Product/ProductDetail.aspx?shop=0&pid=9784824000668&vid=&cat=NVL&swrd=
8 141異世界を追い出された俺は──元の世界でハーレム作りに勤しみます【凍結】
ある日突然異世界へと勇者召喚された俺はそこそこ長い年月かけ、を魔王の元に辿り著く。 が、なんと魔王が命乞い!? うっかりオーケーしちゃったらパーティーのメンバーが裏切り者として俺を追っかけまわしてきて…… なんでだよ! 指名手配された!? 待て待て待てまだ死にたくねぇぇえ! 叫んだところ、俺の元の世界に戻ってきていた。 ──もういい! ここでハーレム目指すから! 〜*〜*〜*〜*〜 思い付き先行、見切り発車ですので更新が遅いどころか暫く放置する可能性大。 ハーレム目指して頑張ります! コメントお待ちしておりまっす 〜*〜*〜*〜*〜 2020/09/18 更新再開!!! またよろしくお願いします! 〜*〜*〜*〜*〜 Twitterで更新の連絡をしています よろしければこちらで確認してください https://twitter.com/HH_nadeshico9?s=21
8 87死神始めました
ある日家で寢ていて起きたら死神を任された楠 浩太は異世界へと飛ばされるのだった。飛ばされた後は兵器を作って國をつくって?!おまけにさらりと重大情報聞かされて。 とにかく神様の力と、地球の兵器(スマホも)を使って無雙します。・・・多分! 何だか題名詐欺って言われそう。そこは誰も突っ込まないで。ね? *軍事ネタおよび、機械ネタは作者が調べたり、聞いたりしたことを少しいじってやっているのでかなり誤差があると思われます。(あと何が何だかわかっていない) 最終話を投稿した日のアクセス數が2000越してビックリしてます^^;
8 153俺が斬ったの、隣國の王女様らしい……
貴族が多く通う王立魔法學院に通う平民――リューズは、一週間前から毎晩のように黒い靄に襲われ、追われていた。さすがに痺れを切らしたリューズはソレと剣を交え、見事斬ったのだが……黒い靄が晴れたかと思えば中から黒髪が美しい美少女が全裸で現れた。 その事件から翌日……いつものように貴族からイビられながらも堂々と過ごすリューズのクラスに、フィーラと名乗るあの黒髪の美少女が編入してきた。なんでも、フィーラは隣國の王女であるらしく、ここにはお婿を探しに來たらしい。そしてどうやら、リューズはフィーラにお婿として目をつけられているようで……。 ※こちらの作品は、「小説家になろう」にて掲載されています。「小説家になろう」の方では、幾らかの加筆修正がされているので、そちらをお読み頂く事を、お勧め致します。
8 116永遠の抱擁が始まる
発掘された數千年前の男女の遺骨は抱き合った狀態だった。 互いが互いを求めるかのような態勢の二人はどうしてそのような狀態で亡くなっていたのだろうか。 動ける片方が冷たくなった相手に寄り添ったのか、別々のところで事切れた二人を誰かが一緒になれるよう埋葬したのか、それとも二人は同時に目を閉じたのか──。 遺骨は世界各地でもう3組も見つかっている。 遺骨のニュースをテーマにしつつ、レストランではあるカップルが食事を楽しんでいる。 彼女は夢見心地で食前酒を口にする。 「すっごい素敵だよね」 しかし彼はどこか冷めた様子だ。 「彼らは、愛し合ったわけではないかも知れない」 ぽつりぽつりと語りだす彼の空想話は妙にリアルで生々しい。 遺骨が発見されて間もないのに、どうして彼はそこまで詳細に太古の男女の話ができるのか。 三組の抱き合う亡骸はそれぞれに繋がりがあった。 これは短編集のような長編ストーリーである。
8 161月輝く夜に、あなたと
いつも通りの夜、突如かかってきた彼氏からの電話。 電話相手は、謎の若い男。 彼氏が刺されている、とのこと。 そして、その男からの衝撃的発言。 禁斷のミステリー戀愛小説
8 142