《【完結】処刑された聖は死霊となって舞い戻る【書籍化】》まっっず!

だいたいの戦況と作戦を整理できたところで、さっそく行を開始する。

およそ百の軍勢はまっすぐ街道を進んでいて、孤児院のある街、ひいてはその先の王都を目指していることは間違いなさそうだ。タイミング的に、私がファンゲイルの砦にる前にはもう出発していたのだろう。

つまり、ファンゲイルは聖の結界が消えてすぐに軍勢を用意したことになる。常日頃から虎視眈々とその時を待っていたのだろう。あるいは、結界をどうにかする算段があったのか。

(でも準備は萬全じゃない)

ファンゲイルはゴズメズに命じて戦力の増強を図っていた。急に結界が消えたから戦力が十分でなく、ひとまず様子見といったところだろうか。

なんとか対処できそうな數でよかった。

一番多いのはスケルトン系で、人型スケルトンしかいないように見える。まあカラスのスケルトンとか弱いしね。ランクEのスケルトンだと一番大きくて人骨しかかせないから、人型スケルトンが強さ、調達のしやすさともに好都合なのかな。

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(アレンが兵士を連れてくるまで、どのくらいだろ。足止めくらいはしようかな)

ただのスケルトンならオニビの時から倒しまくってたから、それほど消耗せず倒せると思うんだよね。

試しに集団の中で前の方にいるスケルトンに近づいてみる。森の中にいる個と違って、近づくだけでは襲って來ない。

(私がレイスだから仲間だと思ってるのかな?)

アンデットは襲わない、みたいな命令でもされているのかもしれない。じゃないと街に著く前にもめ始めちゃうもんね。そういえば、砦の中にいたアンデットたちも爭ってる様子はなかった。

(普段は野生のまま放っておいて、必要な時だけ支配するじなのかな?)

私の場合はむしろ、その命令のおかげで襲われずに済んでいるわけだ。

それなら好都合。一方的に攻撃させてもらおう。

(ホーリーレイ!)

やることはいつもと変わらない。これしか攻撃魔法もってないからね!

私のことを無視してカタカタと歩みを進めるスケルトンの眉間を撃ち抜いた。スケルトンのきは遅いから外すことはない。

(ソウルドレイン。らっくしょう!)

周りのスケルトンが一斉に私を見た。げ、さすがに攻撃したら反応しちゃうんだ。

聖屬の魔力は天敵だからね。完全に私を脅威認定したスケルトンたちが、腕や剣を振り上げて魂を削る一撃を放ってくる。

(ひぃいいい、この數は無理!)

即座に理結界を張って、隙間をって包囲から抜け出した。

くらい同時にき始めたせいで腕や足がぶつかり、互いのきを阻害しあって転んでいる。地面に倒れた衝撃で骨がばらばらになったり頭が転がったりしてるけどすぐに骨同士が集まって立ち上がった。ひとりでに骨がいてスケルトンになるの怖い。

(ちゃんと魂まで消すか、再集結できないくらいパーツを遠くに運ぶか、骨を砕くかしないと復活しちゃうんだよね)

兵士だと、砕くのが一番かな? そんなに々じゃなくても、主要な骨を割れば大丈夫なはず。

あとは魔法を使えるギフトの人がいれば、魂にダメージを與えて倒せるね。

(次はゾンビを倒してみよう!)

私が通って來た道のりにゾンビはいなかったから、砦ですれ違ったのを除けば初遭遇だ。

突然いなくなった私を探して右往左往しているスケルトンたちから離れた一群に近づき、ゾンビと対峙する。

ゾンビは人間やの死にヒトダマが取り憑いてく魔だ。スケルトン同様に痛みをじず、疲れない。筋は腐敗しているため特別力が強かったりきが速かったりはせず、むしろ余計ながついているせいでスケルトンより遅い。

私の目の前にいるゾンビはの姿をしているが、は青ざめ目や舌はだらしなく垂れ下がっている。

(死してなお無理やりかされている哀れなに救いを。ホーリーレイ)

骨と違って、腐のついた死というのはかなりショッキングだ。この人も死ぬ前は魔になって徘徊するなんて考えてもなかっただろうな。元の意識は存在しないとはいえ、も安らかに眠らせてあげたい。

ホーリーレイは寸分たがわず眉間の中心を撃ち抜いたけれど、ゾンビのきは止まらない。

(うー、やっぱり一発じゃだめだね)

ゾンビがスケルトンに比べ優れている點、それは耐久力だ。

仮初とはいえで覆われているので、それによって魂が保護されているのだ。ホーリーレイも當たった部分が浄化されるだけで倒すには至らない。

(兵士さんが相手する場合もスケルトンより大変そう……切っても切っても向かってくる死とかやだよぉ)

とりあえずホーリーレイを何発か當ててみると、三発當てたところできが止まった。すかさず魂を喰らう。

(まっっず!!)

なにこれ!

取り込んだ瞬間、全を言いようのない不快が襲った。それこそ、誤って腐ったを口にれてしまった時のような気持ち悪さだ。

うげぇ。私が地面を転がって悶絶していると、別のゾンビが近づいてきた。

「ぺちゃぺちゃ」

(ゾンビのスキルは……アシッドアタックだっけ)

神託で得た報を思い出す。

理攻撃に毒を付與するスキルだ。もはや毒と言ってもいい魂に侵されている私は、それを避けることができない。

しかし、ゾンビの腕は私をすり抜けて地面を叩いた。

(死霊強いじゃん!)

ゴズメズやスケルトンが當たり前のようにダメージを與えてくるので忘れてたけど、純粋な理攻撃は無効にできるんだ!

となれば、ゾンビは敵じゃない。問題はホーリーレイを三発も使わされるところだよね。

ようやく覚が元に戻ってきたので、ゾンビに闇魔力を込めた手を向けた。

(こっちならどう? ファイアーボール)

あまり使う機會には恵まれなかったけど、キツネビの種族スキルだ。魔力量に応じたサイズの火の玉を飛ばすだけの、単純なスキル。余談だけど、魔法使い系のギフトにも同じ魔法がある。

ファイアーボールは真っすぐゾンビに飛んでいき、著弾と同時にゾンビを包み込んだ。

魔力を多めに送り込んで炎を維持する。ゾンビが苦しそうに中で暴れ回るけど、逃がさないよ。

ものの數秒でゾンビは膝をついて、崩れ落ちた。も綺麗に焼けて、シルエットが骨だけになる。

(うん、ファイアーボールの方が良いじ。ホーリーレイ一発分くらいの魔力で足りるね)

生前の魔知識が役に立ったようだ。冒険者の人から聞いたことがあったんだよね。

派手に戦ってまた魔が集まりだしたので、戦線を離する。

あちこち荒らしまわるだけなら簡単だけどあんまり足止めにはなってないな。

(スケルトンソルジャーは倒したことあるし、メイジとアーチャーも問題ないと思う。となると……)

の指揮を執っているようなきを見せる、エアアーマーに目をやる。

のエアアーマーは離れた位置にいて、それぞれ周囲のアンデットを統率している。武は大きな両手剣だ。

(神託だと、ランクDでスキルは『虛無斬り』……ランクは私と同じだけど、攻撃向きのスキルっぽいのが怖いね)

エアアーマーは大男がに著けるような全鎧をに著けた魔、のように見えるが、中は空である。例のごとく魂が憑依してっているのだが、ゾンビよりも耐久力がありスケルトンより素早く攻撃力がある。つまりは単純に強いのである。

またエアアーマーの周りにも多くの魔がひしめいているので、他の魔を無視してエアアーマーとだけ戦うのは不可能だ。

(あとはちょっとずつ戦力を削りつつ、アレンを待とうかな)

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