《【完結】処刑された聖は死霊となって舞い戻る【書籍化】》カチャカチャ

足止めと言っても、大規模に結界や聖域を展開することはできない。惜しげもなく魔力を使い放題だった生前とは違うのだ。

(ゾンビの方が厄介そうだよね。しでも數を減らそう。ファイアーボール!)

代わりに、私はゾンビを中心にしずつ魔を倒すことにした。

最前列のゾンビが火だるまになり、燃え盡きていく。ファイアーボールは魔法の炎だから、質的な炎と違い相手の魔力や屬、弱點によってダメージが変わる。ゾンビは炎が弱點なので、よく燃えるというわけだ。

ゾンビを一倒している間に、周りのスケルトンやゾンビたちがわらわらと集まってくる。しかしきが遅く反応も鈍いので、私はなんなく抜け出した。

(一倒せば周りは私を探してうろうろするから、歩みが止まるんだよね。これで結構足止めになるかも)

最前列できが止まれば、その後ろに続く魔たちも前には進めない。

で見れば微々たるものだけど、あちこち移しながら一倒して離を繰り返すことで結構な時間を稼げたと思う。アレン早く來て!

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「カチャカチャ」

(ん? ううぉっ)

すぐ後ろから音がして、黒マントの端を剣が掠めた。慌てて飛び退いたけど、の一部であるマントが切られたことで激痛が走った。

振り返ると、そこにいたのはエアアーマーだ。空っぽの全鎧が両手で握る剣は、吸い込まれそうなほど黒い魔力を纏っていた。

(これが『虛無斬り』……やっぱり霊にもダメージを與えてきたね)

さすがに暴れすぎたのか、指揮の怒りを買ったようだ。

エアアーマーも話すことができない魔だけど、立ち姿から憤りがひしひしとじられる。Dランクにもなると自我が芽生えるのかもしれない。

(わざわざ最前列まで出張ってきたってことは、私を倒しに來たんだよね)

どの道倒さなければいけない相手だ。

エアアーマーは近距離攻撃しかできない。周囲に気を付けつつ後退して、大剣の間合いから出た。

(ホーリーレイ)

すかさず聖屬の魔法を放った。エアアーマーは咄嗟にを傾けたけど、避け切れず肩に命中した。

スケルトンであれば一撃で魂を大幅に消耗させることのできる魔法だが、理魔法ともに耐を持つエアアーマーには効果が薄い。全くのノーダメージというわけではないけど、鎧を貫通することはできなかった。

(鎧に守られているせいでソウルドレインも効かないだろうし、まずは鎧をなんとかしないと……)

試しにファイアーボールを放つが、鎧に弾かれて明後日の方向へ飛んでいってしまった。

いとも簡単に攻撃をいなしたエアアーマーは、ぐっと一歩踏み出して地面を蹴った。

(早い!?)

ゴズメズほどじゃないけど、かなりの速度で薄してきた。ファイアーボールを撃った直後の私は逃げきれない。

(聖結界、二枚重ね!)

メズに一瞬で割られたことを思い出して、咄嗟に二枚の理結界を私の前に展開した。見えない壁のような結界は、エアアーマーの刃をけ止める……はずだった。

(え……?)

『虛無斬り』は聖結界などなかったかのように、一切減速せずに薙いだ。切っ先は私の腕を深々と切り裂き、魂を削り取られる痛みに絶する。もうし距離が近かったら真っ二つにされていたに違いない。

(防不可!?)

そうとしか思えない効果だ。

腕を抑えながら後退する私を、今度は上段から振り下ろすことで追撃してくる。

「カチャカチャ」

聖結界じゃだめだ。さっきは理に厚く作ったから、もしかしたら魔法防寄りの結界にしたら防げるかもしれない。だが、それより上位の結界がある。

(結構消費大きいから使いたくなかったけど……破邪結界)

聖結界が質や魔力の『通過を防ぐ』ものなら、破邪結界は『通過したものを破壊する』結界だ。

無理やりぶつければ攻撃にも転用できる結界だが、今回は『虛無斬り』を食い止めるために使用する。

橫薙ぎに比べ、振り下ろしは剣の重さも加わってすさまじい威力を誇る。勢いよく落とされた大剣は、破邪結界にぶつかった。二つの魔力が拮抗して、攻撃が停止する。

(よし、剣の破壊まではできなかったけど、魔力は消せたみたい!)

しかし、ホーリーレイもファイアーボールも通用しないという狀況は変わっていない。

破邪結界をぶつけても、剣よりもいであろう鎧を突破するには至らないだろう。

(じゃあこれなら? ポルターガイスト)

には攻撃ではない、魔力でを摑むスキル。

私はこれを使って、エアアーマーのを包み込んだ。見えない縄に縛られたように、エアアーマーがきを止める。

まずは腕を縛り上げ、剣を奪いとった。そして兜を魔力の腕でわしづかみにする。

(これをがせれば……!)

どういう原理なのか、空のはずなのに兜がくっついてなかなか離れない。エアアーマーは両手で頭を抑えて抵抗する。

それでもポルターガイストの方が力は上だ。エアアーマーの魂から引き剝がされた兜は、急速に重さを失って遙か上空にすぽん、と飛んでいった。空っぽの中わになる。

すなわち、魂が出したということだ。

(ソウルドレイン!)

今度は鎧の中から魂を引きずり出す。側からの攻撃には弱いようで、難なく剝がれ、吸収することに功した。

魂を失いただの鎧となったは、カチャカチャと音を立てて地面に転がった。

(やった! 強敵だったけど勝てたしすっごい味しい!)

こんな時でも魂の味を楽しんでしまう。

Dランクとは思えない強さだった。一応レイスも同じランクのはずなんだけど、エアアーマーは戦闘特化ってじだったしこんなものかな。

エアアーマーが攻撃している間は遠巻きに見ていたスケルトンたちが、弔い合戦とばかりに敵意をむき出しにした。

死闘のあとで気が抜けていた私は即座に撤退を判斷する。

(って、後ろにもいる!?)

思いのほか囲まれてしまったようだ。

仕方なく強突破しようと、聖屬の魔力を右手に集める。

その時、逃げ道を塞いでいたスケルトンが何かに突き飛ばされて転がった。

「セレナ! 待たせた!」

(アレンだ!)

てことは、兵士たちが來てくれたのかな?

殲滅開始だ!

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