《【完結】処刑された聖は死霊となって舞い戻る【書籍化】》終結
「か、勝った」
メズが膝をつき、そしてうつ伏せに倒れた。彼の背に隠れて見えなかったアレンが、呆然と剣を下ろす。カツン、と地面に切っ先が當たった。
ゴズ以上の強敵だった。聖霊への進化がなければ到底敵わない相手だった。
「はは、まだ手が震えてる」
アレンは凡人だ。ギフトもないし、剣もままならない。それでも私の隣にいて、最前線で敵の指揮を討った。それは誰にでもできることじゃない。
スケルトンとも、ゾンビの腐とも違う、生のを斬った覚がアレンの手に殘っているのだろう。
アレンは手を握ったり開いたりしながら、倒れ伏すメズに視線を落とした。
「アレン、ありがとう」
「ん? いや、ほぼセレナが倒したようなもんだろ」
「ううん、アレンが來てくれなかったら負けてたよ」
アレンが庇ってくれたおかげで、魔を倒して進化することができたのだ。出鱈目にホーリーレイをばら撒いて進化レベルまで到達できたのは運が良かったけど、アレンがいなかったらそもそも可能すらなかった。
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トドメを刺したのだって、アレンの剣だ。必要な時に隣にいてくれたし、私のことを信頼してポルターガイストにを任せてくれた。
「とりあえず、人間らしい姿になって良かったよ。足はないけど、喋れるし、顔もセレナのまんまだ。これならカールも信じてくれるだろ」
「あ、生前と同じ顔なんだ」
「ああ。なんか髪はってるけどな」
どういう原理か分からないけど、容姿が変わらないのは良かった。
ゴーストの種族スキル『ケラケラ』と同じで、はないのに聲は出せる。は足がないこと以外は、生前とあまり変わらないようにじた。
自慢だった夜空のような髪は、先まで聖屬で満ちてキラキラ輝いている。
「さて、もっと話していたいけど、まずはこの戦いを終わらせないとね」
幹部を除けばトップクラスのゴズメズは倒した。指揮を失ったからといってアンデットのきが止まることはないが、殘りは烏合の衆だ。
ちらりと辺りを見渡すと、ちょうど『破壊王』ニコラハムが門番スケルトン改めスケルトンジェネラルを倒したところだった。あの魔も頭一つ抜けて強かったはずなのに、やっぱ冒険者はすごいね。
他の冒険者も、既にスケルトンナイトを討伐していた。あとは掃討戦である。
「そうだな」
アレンが緩んだ表を引き締めて剣を構えた。
「大丈夫、私に任せて」
アレンはもう十分戦ってくれた。聖魔力の塊をぶつけ、ヒールを掛ける。ヒールは怪我以外にも疲労や寢不足も解消するから便利だ。
きょとんとする彼をおいて、空へ飛び上がった。
「おお、聖霊は結構高く飛べるね」
たぶん二階建て孤児院の屋より高いんじゃないかな?
空から戦場を俯瞰する。何人かが私に気が付いて、空を見上げた。
「うへぇ、まだまだたくさんいるね……でも、今の魔力なら」
街道とその周辺は、アンデットで埋め盡くされていた。視界一杯に広がる死者の集団は、現実味がなくてなんだか絵畫を見ているみたい。虛ろな目で聲も上げずにひたすら行進する魔とそれを迎え撃つ人間という戦いは、既にかなりの時間が経った。
『不死の森』から出てくる魔はもういないみたいで、ひとまず見えている敵を倒せば大丈夫そうだ。
「聖結界、ソウルドレイン――吸魂結界」
イメージするのは、禮拝堂。
ドーム狀の結界で、戦場を丸ごと包み込んだ。聖時代に常時展開していたから、結界の制はお手のだ。
今回はそれに、ソウルドレインの効果を追加する。
『聖魔融合』、それが聖霊になったことで取得した種族スキルだった。
「いただきます!」
聖屬の魔法は、人間に悪影響を及ぼさない。
ソウルドレインの対象になるのは魔だけだ。との結びつきが弱いアンデットの魂は外部からの影響をけやすいので、吸魂結界によって容易く引き離された。結界にいる數千の魔から、ヒトダマの青いが浮かび上がる。
魂の抜けたは、ただの死だ。低位の魔は何の抵抗もできず、言わぬ骸となって地面に転がった。
空中を漂って、大量の魂は私が掲げた手に集まってくる。青い蝶が舞うような幻想的な景に、人間たちは手を止めた。
「さすがにエアアーマーには効かないみたいだけど……十分だね。ごちそうさまでした」
殘ったエアアーマーも、霊域を展開していつもの要領で兜を引きはがした。
長い戦いは、呆気なく終わりを迎えた。
「ヒール火の息――癒しの息吹」
続いて、人間たちに向けて回復魔法を発する。火の息をベースにしているから、暖かい風のようにじるはずだ。
彼らの軽いケガと疲労を、風と共に吹き飛ばした。
「セレナ!」
地面に降りると、アレンがすぐに駆け寄って來た。
その後ろにはカールとニコラハムが続く。他の兵士はどう接するか決めあぐねているのか、遠巻きに眺めていた。まあ突然現れた死霊が魔を一掃したら、誰だって警戒するよね。
「今のなんだ? 強すぎるだろ」
「やってみたらできたってじだよ!」
弱い魔相手だから通用しただけだけどね。
聖時代にはもっと手軽にアンデットを倒せたから、これでも全盛期には及ばない。魔のスキルが使える分汎用は上がったけど、聖のように無盡蔵に魔力があるわけじゃないからね。
「セレナ、なのかい?」
「あ、カール。お久しぶりです……?」
「なんていうか、元気そうで良かったよ。アレンが言っていたのは本當だったんだね」
「死んでるけどね!」
冗談のつもりで言ったら、アレンとカールが泣きそうな顔になった。今の生活割と気にってるから、勝手に憐れまないでしいな。
「にひひ、元人間の魔ってことっすか? 面白いっすね」
ニコラハムは、特に気負いもせず頭の後ろで手を組んでいる。この人よくわからないね。
でも、普通に接してくれるのはとてもありがたい。今まで會った人間には怯えられてばっかりだったから。
「魔は全部倒したっすか?」
「うん!」
「じゃあ、俺らの勝ちっすね」
ニコラハムがニヤリと笑った。それを見て頷いたカールが、勝鬨を上げる。
兵士たちが、一斉に剣を掲げてんだ。街を守り切ったのだ。彼らは戦闘の高揚そのままに、肩を叩き合って喜びを分かち合った。
でも、私とアレンだけは表がかった。
王都の方を向いていたのは、私たち二人だけだったのだ。だから、気づけた。
「あれは……」
「ファンゲイルだね、たぶん」
王都の上空に、空飛ぶドラゴンの骨がいたことに。
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