《【完結】処刑された聖は死霊となって舞い戻る【書籍化】》王子との再會
王宮の中庭は剣呑な空気が流れていた。
にこやかなのはファンゲイルだけだ。彼を遠巻きに取り囲む騎士たちは、額に汗を滲ませながらじっと睨みつける。ファンゲイルと、その後ろで座りこむ骨ドラゴンが怖いのだろう。足はがくがくと震え、今にも逃げたそうだ。騎士団としての誇りと責務が、彼らをそこに縛り付けていた。
貴族はほとんどいない。大半の貴族は逃げだし、騎士団と同じく立場上離れるわけにはいかない五人ほどの男だけが、青い顔で立っていた。貴族の中にも序列や上下関係があって、上から命じられれば逆らえないのだ。
私はアレンに向けて合図を出す。これで來てくれるはず。
「ここにいるってことは……そっか、あの二人を倒したんだ」
ゴズとメズのことだ。
人間側は一即発の雰囲気なのに、ファンゲイルは骨ドラゴンの足に座り込んでリラックスしている。それでも、言い知れぬプレッシャーを放つのは魔王の風格故(ゆえ)か。
「それで、聖ちゃん。君は僕と敵対する道を選ぶのかい?」
Advertisement
「私はこの國を守るよ! 絶対に」
なるべく凄んでみせたけど、ファンゲイルはどこ吹く風だ。
揺が広がったのは人間側だった。突然現れた魔の私を訝しんでいた彼らは、『聖』という言葉を聞いてにわかにざわついた。
そうですよ、あなたたちが見殺しにした聖ですよ。
とはいえ大した関わりがあったわけでもないので、恨んではいないけどね。
「うーん、惜しいな。僕は君に興味があるんだ。そのらしい姿もとっても気になる。ファントムではないよね? きっと僕の知らない魔だ」
白髪で青白いをしていることを除けばかなり整った顔をしている彼が、口説いているのかと勘違いするほど甘いセリフを吐いてくる。
だが勘違いしてはいけない。彼の興味は研究対象として、だ。初めて出會った時も、聖の記憶を持ったまま死霊となった私に興味を示していた。きっと私のをいじくりまわす気なんだ!
「そんなことより、さ」
ファンゲイルが私から視線を外して、和やかに微笑んでいた口角をすっと下げた。たったそれだけで、背筋が凍るような恐ろしい表に変わる。
「ひいっ」
「早く國王を連れてきてよ。いつまで待たせる気なのかな? 僕、早くしてって言ったよね」
「し、しかし王は今ける狀態では……」
ファンゲイルのるような視線を向けられた貴族が、しどろもどろになりながら答える。
どういうこと? ファンゲイルは王様に用があるの?
王宮に乗り込んでおいて攻撃もせず待っているということは、彼には対話の意思があり、目的を達できるのなら滅ぼすことはしないのかもしれない。
王國を守る手立てがあるとすれば、その目的次第か。
正直なところ、私の力で魔王に勝つのは難しいだろう。それどころか、後ろに控える骨ドラゴンと戦っても無事で済むか分からない。
とりあえずアレン早く來て。
「じゃあ大臣とかでもいいよ。國王の代理くらいいるでしょ?」
大臣という役職はこの國にはないけど、言いたいことは伝わった。
というより、貴族側ももともとそのつもりだったのか、ほどなくしてその人が連れて來られた。
そう、第一王子のセインだ。その隣には、聖を自稱する子爵令嬢、アザレアがいた。
「お前ら、何をする! 離せ!」
「ちょっと、何するんですの!」
「申し訳ありません、しかし、そういう要求ですので……」
両脇をがっちりと固めた騎士は、謝りながらも手を離さない。
「お前らは魔王と戦いもせず、要求に従い主を差し出すのか!? 命を懸けて俺を守るのがお前らの仕事だろ。それでも王國民か! 恥を知れ!」
言っていることは真っ當だ。
王子に人がないのが原因だろうけど、保のために國王代理を敵の前に差し出す騎士もおかしい。この國の上層部はとっくに腐っているのだ。
暴れる王子と諦めたように項垂れるアザレアは、騎士によって中庭に放り出された。
その景を冷めた目で眺めるファンゲイル。私は両者の間で様子を伺っていた。
顔を上げた王子と目が合った。
「お、お前は!!」
「あ、分かる? あなたが殺して魔になった聖だよ」
隣のアザレアが息を飲んだ。王子は瞠目してわなわなと震える。
そりゃ、覚えてるよね。二人とも、私の首が落ちるまで、あるいは落ちた後も見ていたんだもん。アレン曰く同じ顔らしいから、生前を知る者が見れば一目瞭然だ。
何を思ったのか、王子は目を輝かせて両手を広げた。
「そうか! 俺のために戻ってきたか! よし、では早くその魔王を倒すのだ!」
「はい?」
何を言っているのでしょうか。
【書籍化】絶滅したはずの希少種エルフが奴隷として売られていたので、娘にすることにした。【コミカライズ】
【書籍化&コミカライズが決定しました】 10年前、帝都の魔法學校を首席で卒業した【帝都で最も優れた魔法使い】ヴァイス・フレンベルグは卒業と同時に帝都を飛び出し、消息を絶った。 ヴァイスはある日、悪人しか住んでいないという【悪人の街ゼニス】で絶滅したはずの希少種【ハイエルフ】の少女が奴隷として売られているのを目撃する。 ヴァイスはその少女にリリィと名付け、娘にすることにした。 リリィを育てていくうちに、ヴァイスはリリィ大好き無自覚バカ親になっていた。 こうして自分を悪人だと思い込んでいるヴァイスの溺愛育児生活が始まった。 ■カクヨムで総合日間1位、週間1位になりました!■
8 63エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
普通の高校生、松田啓18歳が、夏休みに海で溺れていた少年を救って命を落としてしまう。海の底に沈んで死んだはずの啓が、次に意識を取り戻した時には小さな少年に転生していた。その少年の記憶を呼び起こすと、どうやらここは異世界のようだ。もう一度もらった命。啓は生き抜くことを第一に考え、今いる地で1人生活を始めた。 前世の知識を持った生き殘りエルフの気まぐれ人生物語り。 ※カクヨム、アルファポリス、ツギクルにも投稿しています。
8 108異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??
理系の、理系による、理系の為の異能バトル。
8 95異世界転生の能力者(スキルテイマー)
ごく普通の高校2年生『荒瀬 達也』普段と変わらない毎日を今日も送る_はずだった。 學校からの下校途中、突然目の前に現れたハデスと名乗る死神に俺は斬られてしまった… 痛みはほぼ無かったが意識を失ってしまった。 ________________________ そして、目が覚めるとそこは異世界。 同じクラスで幼馴染の高浪 凜香も同じ事が起きて異世界転生したのだろう。その謎を解き明かすべく、そしてこの異世界の支配を目論む『闇の連合軍』と呼ばれる組織と戦い、この世界を救うべくこの世界に伝わる「スキル」と呼ばれる特殊能力を使って異変から異世界を救う物語。 今回が初投稿です。誤字脫字、言葉の意味が間違っている時がございますが、溫かい目でお読みください…。 作者より
8 97創造神で破壊神な俺がケモミミを救う
ケモミミ大好きなプログラマー大地が、ひょんなことから異世界に転移!? 転移先はなんとケモミミが存在するファンタジー世界。しかしケモミミ達は異世界では差別され,忌み嫌われていた。 人間至上主義を掲げ、獣人達を蔑ろにするガドール帝國。自分達の欲の為にしか動かず、獣人達を奴隷にしか考えていないトーム共和國の領主達。 大地はそんな世界からケモミミ達を守るため、異世界転移で手に入れたプログラマーというスキルを使いケモミミの為の王國を作る事を決めた! ケモミミの王國を作ろうとする中、そんな大地に賛同する者が現れ始め、世界は少しずつその形を変えていく。 ハーレム要素はあまりありませんのであしからず。 不定期での更新になりますが、出來る限り間隔が空かないように頑張ります。 感想または評価頂けたらモチベーション上がります(笑) 小説投稿サイトマグネット様にて先行掲載しています。
8 156とある亜人の奮闘記
亜人種のみが生息する世界アマニル。 この世界では 陸、海、空 の三大國による爭いが絶えなかった。 最大規模をもつ陸の國(アトラス)に住む少年 ライゴ この少年の物語が今始まる。 初投稿です! 気になるところや問題があったりすれば気軽に教えてください! 時間が空いたら書いてます! これからよろしくお願いします!
8 111