《【完結】処刑された聖は死霊となって舞い戻る【書籍化】》魔王の要求

「何をしているのだ。お前の仕事だろう、魔の相手は!」

王子が顔を真っ赤にしながら喚く。

魔王の前だというのに隨分と余裕だ。それとも、騎士と違って脅威をじることができないのか。

私は王子の言っていることが全く理解できなかった。

殺した相手が魔になって戻ってきたのに、どうして命令するという思考回路になるんだろう。別に報復で殺そうとか思っていたわけではないけど、謝るか、恐れるか、そういう反応を予想していた。

「私はあなたに殺されて魔になったんだけど」

「それは貴様が聖を詐稱するからだろう! 死んでも蘇って俺を助けにくる忠誠心は認めてやってもいいぞ」

「はぁ」

の中がすーっと冷えていく覚があった。怒りを通り越して、呆れるばかりだ。

王子の醜態に、騎士たちもあからさまに不快そうな顔をした。

「なんで私が助けるの? 隣に本當の聖がいるんでしょ。私は聖を詐稱する偽だもんね」

「それは――! こいつは俺を騙したんだ! 子爵が、娘を聖にすれば皇國との繋がりが強くなるなどと言い出したからで、蓋を開けてみれば何もできないだったのだ!」

Advertisement

「なっ!? 王子様だって乗り気でしたわ!」

「うるさい! お前が魔法を使えないせいで魔に侵されたんだろう!」

開いた口が塞がらない。

なんという勝手な男だろうか。私を偽と罵ったアザレアにも思うところはあるが、それ以上に王子を許せない。

私は王子のせいで、未來を奪われたのだ。たまたま死霊となって自由にけているけど、もう元には戻れない。人間として街で暮らすことも、アレンと結婚することだって不可能だろう。

それなのに、あろうことかまだ私を利用しようとしてくる。

こんな男を守るために戻って來たのだと思うと辟易する。

國を守るという意思は揺るがないけど、王子とは関わりたくもなかった。

もはやこの中庭で、王子を擁護する者はいない。彼らは皆、魔王の出方を伺っていた。魔王の要求、それと王子の対応によって、王國の未來が決まるのだ。

ファンゲイルはの骨を両手で抱え込み、頭蓋骨に顎を乗せた。骨ドラゴンの上に座ったまま、を丸める。傍らに立てかけてある杖は、いつでも手が屆く距離だ。

「ふふ、なんか面白いことになっているみたいだね。それで、君が王國の代表ってことでいい?」

「そ、そうだ!」

「結論から言うけど、僕はこの國は全部壊すよ。それは決まってる。でもその前に、あるを持ってきてしいんだ」

「ふざけるな! 魔王だかなんだか知らないが、王國に敵対して無事で済むと思っているのか! おい聖、騎士ども、早くこいつを……ぐふっ」

「うるさいなぁ」

ファンゲイルが魔力を放出する。ゴズやメズなんかとは比べにならない、濃で暴力的な闇魔力だ。それを直にけた王子は、目を見開いて元を抑えた。

私は遅れて霊域を発し、対抗するように聖魔力で中庭を満たした。ポルターガイストをいつでも発することができる、聖域と融合した魔法だ。

闇魔力から解放された王子が、ぜいぜいと肩で息をした。

「へえ! 聖の魔法とスキルを一緒に使えるんだ!」

たった一瞬で看破するとは。魔法を得意とする魔王なだけある。

相殺されても気にする様子はない。まったく本気ではなかったということだろう。

私は油斷なく魔力を作して、ファンゲイルと相対する。結果的に王子を助けることになったのは不服だけど、ファンゲイルに暴れさせるわけにはいかない。

「ますます君がしくなったよ。ゴズとメズに倒されるくらい弱いならそれまで、と思ってたんだけどね。なかなかどうして、期待を超えてくれる」

ファンゲイルは骨ドラゴンから降りて、杖を手に取った。それでも人骨は手放さない。

ゆったりとしたきで王子に歩み寄る。その様子を、誰もが黙って見ていた。

「でもその前に、僕は探しがあるんだ。君さ」

「く、來るな!」

王子はずりずりと腰を引きずって後ずさる。隣のアザレアは、先の魔力に當てられて気を失っている。

「天使のタリスマン、ってこの國にあるよね?」

「な、なぜ貴様が寶の名を!」

する観衆の中、王子だけがその名に驚きの聲を上げた。

    人が読んでいる<【完結】処刑された聖女は死霊となって舞い戻る【書籍化】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください