《【完結】処刑された聖は死霊となって舞い戻る【書籍化】》ゴーストとお散歩

私はさっそく、三のゴーストを連れてゴースト研究所を出た。

獨斷と偏見によって選出された、一番がありそうな子たちだ。自意識がほとんどないとはいえ、ゴーストにはそれぞれ個がある。きをよく観察していれば、あるいはヒトダマを與えてみれば、微妙に反応が違うことが分かる。

ゴーストたちを區分けしている結界を解除し、代わりに聖結界を展開した。そのままだとれたら消滅してしまうので、闇魔力でコーティングするのも忘れない。自分の結界の方が何かあれば察知できるし、応用も効くからわざわざ張り替えたのだ。

「みんな行くよー」

冥國の周りを散歩でもしよう。そう思って、三のゴーストに聲を掛ける。

「けらけら」と乾いた笑いを発しながらふらふらと離れていく子。

「きゃっきゃっ」と楽しそうに私の周りをくるりと回る子。

「ひひ、ひひ」と不気味な笑顔で、研究所に戻ろうとする子。

あるのはいいけど、好き勝手きすぎだよ!

慌てて追いかけて捕まえる。質を過するゴーストも、同じ霊なら摑むことができる。ふふふ、私からは逃げられないよ。

離れていった二を捕まえていたら、くるくる回っていた子も明後日の方向にき始めた。

自由すぎる!

「こら、勝手にかないで!」

散歩でもしようと出てきたのに、これじゃ私ばっかり疲れちゃう。これはこれで自我が芽生えるかもしれないけど、研究にはならないよ。

広めの範囲を結界で囲って、好きに遊ばせるとか? イメージは馬の放牧だ。

でも、それだと共食いを始める可能があるんだよね……。ソウルドレインのスキルは持っていないけど、そもそも死霊には魂を食べるという質がある。霊そのものであるゴーストなら、直接食べることも可能なんだよね。だから研究所の中は結界で仕切られているわけだし。

それに、冥國の中には他のアンデッドもたくさん暮らしているから、弱小のゴーストなんて絶対食べられちゃう。石造りの家(と呼ぶにはちょっとボロボロだけど)にいるのは、意思を持つDランク以上の魔だもん。

「レイニーさんの聖なる鎖(グレイプニル)みたいに、ゴーストを捕まえて引っ張れればなぁ」

あれだと聖屬が強すぎて消滅するだろうけど。

例えば、闇魔力で鎖や紐を再現できれば馬の手綱のようにゴーストをコントロールできると思う。

結界は展開した場所からかすのには向いていない。かと言って、魔をそこまで作できるわけでもない。間違いなく、威力が高すぎて真っ二つにしちゃう。

「ファンゲイルがやっていたのは……そうだ」

『ソウルドミネイト』という魔法だったと思う。砦に侵した際、私にかけてきた魔法だ。幸い聖屬の魔力で打ち消すことができたけど、並みのアンデッドなら完全に支配できるという。知恵のない魔の軍勢の指揮をすることができるのも、この魔法があるおかげだ。

なんとか再現できれば……。

私の手持ちで魂に干渉できるのは、ソウルドレインだけ。うーん、ファンゲイル教えてくれないかなぁ。

ポルターガイストは質を摑むというスキルなので、なぜか霊には干渉できない。

「んん? でもポルターガイストをどうにかすればゴーストも摑めるんじゃない?」

スキルとは、魔力をまったく別のものに変容させる技だ。普通のポルターガイストではできなくても、聖霊の『聖魔融合』スキルを使って何かと組み合わせれば、多効果も変更できる。

例えば……。

「ポルターガイスト、聖結界――」

聖結界を使う時は、その座標に聖魔力を流し込んで形を作ってから、魔法を発する。

今回はその要領で、闇魔力をる。手綱や鎖をイメージし、細長く、ゴーストに縄を掛けるような形に。

質はポルターガイストと結界を混ぜたじ。縄の形をした聖結界が、ポルターガイストのを保ったまま顕現した。

「不定形結界……できた!!」

これでゴーストを逃がさず、傷つけずに散歩ができるね!

    人が読んでいる<【完結】処刑された聖女は死霊となって舞い戻る【書籍化】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください