吸い寄せられるように、ゴーストが鍾石に向かっていく。天井からびた、細い一本だ。

けらけら笑う子は、ずっと適當にき回る格だけど今は違う。迷いなく、真っすぐ近づいていった。慌てて手綱代わりの結界を引っ張る。

「なになに？　どうしたの？」

「けら……」

「鍾石が気になるのかな」

ゴーストが魂以外に対してこれほどまでに興味を示すのは珍しい。魂を食べるか笑っているかふらふらしている。それがゴーストという魔だ。

鍾石は瘴気の塊なので、魔としては気になるのだろうか。私は闇魔力がいっぱいだなーくらいにしかじないけど。これだけ濃な闇魔力が集した空間だと、普通の聖域や聖結界は無効化されそうだね。逆に、魔にとっては過ごしやすい。心なしか、力が湧いてくる気がする。

「うーん、が芽生えるきっかけになるかもしれないし、自由にさせてみよう」

殘りの二は、漂流しているだけで特別なきはしていない。

鍾石に近づいたゴーストは、そのまま突っ込もうとして……ぶつかった。をき通るはずの死霊が頭をぶつけるのは珍しい。

「あ、そっか。純粋な魔力が結晶化したものだからすり抜けられないんだ」

魔石は魔の中でも特に強力な個からしか取れないもので、実を見たのは初めてだ。死霊にれることができる石だとは思わなかった。

ふと不安になって、帰り道に手をかざしてみる。大丈夫、壁までは覆われていないみたい。

「何かに使えるかな？　持って帰れるか試してみよう！」

ってきたは狹いから、持ち出せるかはやってみないと分からない。

私たちは最悪通り抜ければいいけど、鍾石はそうもいかないからね。

「これ、折ったら衝撃で他のも落ちてきそうじゃない……？」

既に何本か、細すぎて折れそうな鍾石がぶら下がっているのだ。太いものならともかく、細いものは危険だ。つららのようにびた鍾石が落ちてきたら、串刺しにされる。

ポルターガイストを使えば、折ること自は可能だろう。結界を張れば大丈夫かな？

せっかくしい景観を壊すのも忍びないけどちょこっと頂いていきたい。必要ならまた取りに來たらいいし、小さいの無いかな。

「けらけら」

「あんまり近づいて大丈夫？」

濃すぎる瘴気が、何か害を引き起こす可能はある。不死の森や山は瘴気の影響で植が育ちにくいからね。不死の森だって、殘っているのは生命力の強い大きな木だけだった。

魔だから平気だとは思うけど。

「けら！」

「んー？」

ゴーストがしきりにき回り、小さな手で鍾石を突く。口を開けて、食べようとする。

魂以外も食べられるの？　でもきだけで実際に吸収することはできていない。

「ソウルドレイン……うーん、ダメだね」

私たちがスキルで使用する魔力は、で生される。魔石のように外にある魔力を利用するには、特別な魔法やスキルが必要になる。例えば、ヒトダマの養場で使われる式は、魔法陣によって空気中の瘴気と魂を集め、ヒトダマを創り出す仕組みだ。

また、空気中の闇魔力に何らかの作用が加わることで、魔が自然発生することもある。

しかし、普通の魔が外から魔力を取り込むことはできない。私が知る限りでは。

魔力をろうしても、自分以外の魔力は波長が合わない。

「なんでしがっているんだろう？　そうだ。神託」

何気なしに、進化先を確認してみる。

ゴーストに知恵はない。だとしたら、鍾石を食べようとしているのは本能なはずだ。

『進化系譜

進化先候補

レイス（D）進化條件：LV３０　必要素材：魂×１０００　必要條件：願

サイレントゴースト（E＋）進化條件：LV３０　必要素材：魂×１０００

ウェイブゴースト（E＋）進化條件：LV３０　必要素材：魔晶石』

「新しい進化先が増えてる！」

それに、この鍾石の名前も判明した。ただの魔石じゃなくて、魔晶石って言うんだね。水晶みたいで綺麗だし、納得かも。

進化できないのは、レベルが足りないからだ。

他のゴーストも魔晶石に近づけてみると、同じように進化先が追加された。なんであの子だけ興味津々だったんだろうね。好みかな。

ついでに私も試してみたけど、変わりはなし。ざんねん。

「一回地上に戻って、レベル上げて來よう！」

場所を忘れないように地下と、地上の割れ目がある場所に聖結界でマーキングしておく。これで、どこにいても場所を把握できる。