《【完結】処刑された聖は死霊となって舞い戻る【書籍化】》蜘蛛の魔
「ウェイブ、サイレン、クラウン、ついてきて!」
あれは……魔?
黒い影は、巨大な蜘蛛だった。
巨大な蜘蛛を飼育している特殊な村とかでなければ、襲われているように見える。
蟲の魔は初めて見た。おぞましい見た目と、鋭い牙、長い足。なによりサイズが大きく、豬ほどのサイズがある。積極的に會いたいとは思えない姿だ。
でも、村が襲われているなら放っておけない。
知らない國。知らない人たち。そして、私は魔だ。
でも、関係ない。私は死んでも聖だからね。
蜘蛛の背中が、夕日に照らされて妖しく輝く。
數は見える限りでは五。放牧場の柵が壊され、農村に侵していた。一の蜘蛛が、放牧されていた羊に飛びかかり、牙を立てた。
村人も黙って見ているわけではない。
男を中心に、斧や鍬、ピッチフォークなど思い思いのを手に蜘蛛と対峙している。
「神託」
まずはどんな魔か調べないと。
お告げによって知った蜘蛛の名前は『土蜘蛛』、E+ランク……スケルトンソルジャーやサイレントゴーストなどと同等の魔だ。種族スキルは『毒牙』。
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E+くらいなら、武を持った男なら太刀打ちできる。けど、毒も持っているし絶対に安全とは言い難い。
「みんな、土蜘蛛を倒すよ」
「けらけら」「ひひひ」「きゃっきゃっ」
「私が倒すから、みんなは足止めをお願い!」
全速力で農村にり、土蜘蛛に接近する。狙うは三人ほどの人間と戦っている土蜘蛛だ。
大丈夫、今のところケガ人はいないみたい。農機で牽制しながらしずつダメージを與えている。
「くそ、またこいつらか!」
「うちの羊を食べやがって。今日こそは……!」
「おい、気を付けろ!」
そこかしこから怒號が飛びう。
牧羊で生計を立てているこの村にとって、羊を殺されるのは死活問題だ。それに、土蜘蛛は羊も人間も構わず襲っているように見える。ランクが高くないとはいえ、かなりの脅威である。
「待て、なんだあれは!?」
「の子……?」
驚かせてごめんね! でも、今助けるから。
ようやくたどり著くと、人間たちと土蜘蛛の間に割ってった。
「聖結界」
即座に展開された聖結界が、土蜘蛛の行く手を阻んだ。とりあえず、これで人間は安全だ。
「私が倒します! 皆さんは下がっていてください」
「いや、しかし……」
話している暇はない。
私は右手に魔力を集中させ、スキルを発する。『聖魔融合』によって、ファイアーボールとホーリーレイを融合させる。
「シャイニングレイ」
熱量を持った聖屬の線が、土蜘蛛を貫く。ジュッと焼ける音がしてが空いた。
一発じゃ足りないか。なら、次は先ほどよりも太くして、の中心を狙った。
「よしっ、やっぱあんまり強くないね」
「君は……」
「ごめん、後で!」
まだ土蜘蛛は殘っている。
呆然とする中年の農家を殘して、次の土蜘蛛に向かった。ウェイブが足止めをしている個だ。
ウェイブゴーストのスキルは、超音波によって質を振させることで破壊するものだ。
魔による攻撃だから、相手が魔力を持つ生の場合抵抗される可能がある。格下ならいざ知らず、同格の土蜘蛛に対しては決定打にはならない。
「ウェイブ、偉い! ちゃんと守り切ったね」
「けらけら!」
うんうん、後ろの羊さんも謝してるよ、きっと。
『スクリームウェイブ』は倒すには至らなかったが、土蜘蛛のきを鈍らせるには十分だった。膠著狀態のところに間に合ったので、シャイニングレイで倒す。
次はサイレンだ。
でも、彼に関しては助けにくる必要はなかった。
「ひひ」
「わぁ、さすが!」
絶命し倒れ伏した土蜘蛛の上で、サイレンが余裕の笑みで魂を食べていた。サイレントゴーストは攻撃特化の魔だからね。一人で倒してくれた。頼もしい。
対して、クラウンは時間稼ぎに特化している。
彼を最後に回した理由だ。幻を発生させ、相手をわすクラウンゴーストは、羊や炎の幻を駆使して土蜘蛛を翻弄していた。
土蜘蛛は存在しない影を追いかけて、走り回っている。炎の壁が見えれば、それを避けるように行する。
「きゃっきゃっ」
知恵のある魔であれば看破される可能もあるが、同格の相手であればクラウンの手玉に取れる。完全に遊ばれている土蜘蛛を、同じくシャイニングレイで倒した。
死霊聖直屬のゴースト軍団は、なかなか優秀じゃない?
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