村を守った私は、土蜘蛛の後片付けを橫目に見ながら、村長さんの話を聞いていた。

土蜘蛛のい外殻は加工することで様々な使い道があるようで、剝がして売るのだという。中は見たくもないけど、一応食べられるらしい。農民は強かだね。

ちなみに、魂はゴーストたちと私で味しくいただきました。意外にも癖がなくて、どちらかと言えばフレッシュな味わいだった。アンデッドと違って生きだからかな？　新鮮さを除けば、これといって特徴のない魂だ。

「土蜘蛛が現れたのは最近なの？」

「そうじゃ。最初に現れたのは數か月前だったかの。それまでに現れる魔と言えば、山から下りてくるゴーストやスケルトンだけじゃった」

魔は大陸中に生息しているが、どこにでもいるわけではない。人間が住む地域は比較的魔の數がないのだ。いや、魔がいない地域に人間が住んでいると言うべきか。

冒険者をはじめとした魔を駆除する人たちが力的に間引きをしているので、『不死の山』のように魔王が住むなどして魔が群生している場所以外で魔が現れることはない。

王國の周りには『不死の森』以外に數か所、野生の魔が群生している場所があった。自然発生した個だったり、どこからか流れ著いた魔が住み著いたりした場合だ。

まあ、全部ファンゲイルとミレイユに教えてもらったことなんだけどね。魔が自然発生すること自、彼らと関わることで初めて知ったのだ。

自然発生にも法則があって、どこでも、どんな魔でも生まれるというわけではない。だから、今までいなかった魔が突然現れるという可能は低いのだ。

それこそ、魔王が生み出さない限り。

「今のところ村の男衆でなんとか対応できておるが……」

「うーん、いつまでも続くと大変だよね。いや」

もう既に無視できない被害が出ているよね。

「土蜘蛛ってどんな魔なの？　私、蟲の魔って初めて見た」

「ふむ、儂も聞いた話じゃが、ここから西にひと月ほど歩いた場所にある窟……『地魔窟』に住む魔王が生み出しておるらしい。ギフテッド皇國にほど近い場所じゃの。厳には近隣の小國の領地じゃが」

『地魔窟』……それに。

「魔王」

「うむ。『蟲の魔王』ネブラフィス。そう名乗っておると聞く」

知らない名前だ。まあファンゲイル以外の魔王なんて會ったことないけど。

でも、ひと月分も離れた場所にいる魔が、なんでこの村に？

野生化した土蜘蛛が移してきて棲みついたとか？

もう、近くに魔王がいるのに皇國は何やってるの！　自慢の聖騎士団で倒してくれれば平和になるのに！

「正直、土蜘蛛の襲撃がこれ以上続くのと儂らの生活は維持できん。街に救援を要請しても、反応は芳しくない」

「そうだよね……うん！　わかった！」

「む？　なにがじゃ？」

私は腰に手を當てて、ふわっと浮き上がる。ついでにキラキラ聖域の演出付き。

「私が解決するよ！　聖……じゃなかった、聖霊だからね！」

大きな聲で宣言すると、村人たちから「おお～」と嘆の聲が上がった。

みんなは私を怖がらずけれてくれたんだもん。り行きとはいえ、一度助けた相手を見捨てられないよ。が移ったっていうのかな。

村長さんは鍛えられた太い腕を組むと、難しい顔で口を開いた。

「気持ちは嬉しいのじゃが……どうやって？　土蜘蛛は倒しても倒してやってくる。お嬢さんにずっといてもらうわけにはいかぬじゃろう？」

見た目は大柄で筋と髭を大事にしてそうなおじ様なのに、腰が低くて慎重だ。

村長として、々考えているのだろう。

私は一応、ファンゲイルの配下だ。ずっと村にいるわけにはいかない。ある程度自由な行は許されているけど、ゴーストの研究もあるしね。

そういえば、逃げようと思えば逃げられる狀況なんだね。まあ逃げたところで行く場所もないけど……。

「土蜘蛛がどっから來てるのか分かれば、元を叩けば來なくなるんじゃない？　巣とかあるのかな」

「ふむ……報によると、他の村にも出現しているらしいが、巣がどこにあるのかまでは」

「うーん、となると……」

私やゴーストたちは移に制限がないから、広範囲を索敵するのに向いている。時間はかかるかもしれないけど、いずれ見つけられると思う。

ファンゲイルやミレイユなら土蜘蛛について詳しいかもしれない。二人に聞くほうが先かな。

「よしっ、じゃあ村長さん。私に任せて！」

「う、うむ。無理しないようにの」

「私、魔だよ？」

心配してくれるなんて、良い人だね。

いや、もしかしたら私の能力を疑っているのかもしれない。その証拠に、殘念な子を見るような目をしている。酷い。私は有能で可いの子なのに。