《【完結】処刑された聖は死霊となって舞い戻る【書籍化】》蟲の侵攻

ゴズとメズがもたらした報に、ファンゲイルはむっと眉を寄せた。

「事が変わったようだね」

そう呟いて立ち上がる。

蟲の魔。それはつまり、『蟲の魔王』ネブラフィスの配下に他ならない。

相を変えた二人の様子から鑑みるに、おそらく相當な數の魔が攻めてきているはず。偶然迷いこんだ程度なら、報告するまでもなく対処されている。

「……狙いは僕だったのかな。彼(・・)は配下の魔と視界を共有できる。聖ちゃんと接したことで僕の居場所が割れたか」

「ファンゲイル様、ワタクシにお任せを。他の幹部は留守ですので」

「うん、任せるよ。でも狙いが不明だから気を付けて。仲良くはないけど、いきなり戦爭するほどだったかなぁ……」

を生み出す魔……最強種である魔王は、知られているだけでも七はいる。

ファンゲイルの話によると、魔王同士の戦力は拮抗していて、いつもは膠著狀態らしい。それぞれ好き勝手生きている者が多いので、軽い諍いはよくある話みたいだけど。

って、ゆっくりしている場合じゃなかった!

ネブラフィスの本當の目的が冥國への攻撃だったのだとしても、侵攻ルートにはあの羊飼いの村がある。

結果的にファンゲイルの協力は得られたわけだけど、むしろ狀況は悪化している。だって、弱い土蜘蛛以外の魔も來ているかもしれないから。

「ウェイブ、サイレン、クラウン! 行くよ!」

一番信頼している三匹を連れて、冥國を魔王城を飛び出した。

そのまま冥國を出て、麓の村へ向かう。

視界の下で、大量の蟲が蠢いているのが見えた。

ものすごい數だ。蜘蛛やムカデ、アリ、羽蟲……どれも巨大でおぞましい。近くで見たら卒倒すると思う。

蟲はあまり得意じゃないんだよ! 人間だったころ、ふと出てきた一匹の蟲をびっくりして五重の聖結界で閉じ込めたくらいだ。

魂になって出直してきてほしい。

まあ冥國の心配はいらないと思う。戦力は十分に整っているし、ミレイユが直接対応に當たるなら萬が一もないだろう。あの子、怖いからね……。

「私は村を守らないと!」

になったことで人間への同族意識がなくなったはずだと、王國でファンゲイルに言われた。それはもしかしたら、彼の実験だったのかもしれない。

私も、意識の変化はじている。でも関係ない。誰かを守りたい、助けたいって気持ちは、魔になったくらいじゃなくならないよ。

だって私は『聖』だから。

容で區切っているので文字數ばらばらです。すみません。

二章完結までの容は決まりましたので、連載再開してどんどん更新していきます。

期間が空いてしまいましたが、ぜひよろしくお願いいたします。

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