ファンゲイルと共に戦う。そう決めてから一日が経った。

正直、今でも心の整理はついていない。

だって、私にとってギフテッド教は近なものだったから。お世辭にも信仰心が篤いとはいえないし今では絶対悪たる魔になってしまったわけだけど、それでも教義をに聖として頑張ってきたのだ。

皇國が私の死を手引きしたのだと、そう突然言われても戸いの方が大きい。

私を処刑したのはあのバカ王子だし、その原因は自らを聖だと名乗った子爵令嬢アザレアだ。まあ元々貴族たちから嫌われていた、っていうのもある。

教會が大きな権力を持っていることに不満を持っていた王子が、私怨で処刑を強行した、という流れだったはずだ。

それが、実は皇國の差し金だったってこと？

「うう……難しくてよくわかんない……」

ぐったりとを垂らして、ゆらゆらと浮遊する。

ファンゲイルと皇國、どっちを信じていいのか判斷がつかない。

この話だって、ファンゲイルとミレイユの言ったことを鵜呑みにしているだけだ。それにしたって、聖屬の魂を持つ人造人間の存在から二人が予想したものにすぎない。

ファンゲイルは元々、王國を滅ぼそうとしていた魔王だ。私が聖として活を始めるまでは甚大な被害が出ていたし、結界を張った後もたまに犠牲になる人がいた。私にとって、彼は敵だったのだ。

だから、ファンゲイルが私を陥れようと噓をついている、と斷じてしまうこともできる。

「でもなぁ。ファンゲイルって思ったより良い人……ではないけど、人間なんてどうでもいいと思ってる魔王だけど、死をいつも抱きしめてる変態だけど、そんな噓はつかないと思うんだよね」

うっかり悪口の方が多くなってしまった。

半年間冥國で暮らしてきて、彼なりの信念や目的があることを知った。トアリさんの話には同したし、彼を蘇らせるために全力なのも、手段はともかくとして好が持てる。

なくとも私のことを害するつもりはない、って思えるくらいには信用している。

「なら皇國は敵なの？」

もし二人の言っていることが本當だとして……私は人間と戦えるの？

相手が『蟲の魔王』ネブラフィスだけだった昨日は、話が簡単だった。農村のみんなを守るためだったら、私はいくらでも戦える。故郷じゃなくても、自分の信念と相反しない。

しかし皇國と戦うのなら話は別だ。魔になったとしても心は今も人間のつもりで、人類の敵になったつもりはない。人間と真っ向から戦い、あまつさえ殺すなんてことになったら……その時は、もうを張ってアレンに會えないかもしれない。

「どうしたらいいんだろうね」

「けら？」

「ウェイブ……ううん、大丈夫だよ」

こんなに悩むなんて、私らしくもない。

なんとかなる！　って、いつものように思いたいよ。

何を信じればいいのかわからない中でも、一つ言えることがある。

皇國の誰かが神たちの命を奪い、魂を不當に利用しているのが本當であれば、私はそれを絶対に許せない。それは、レイニーさんを始めとした王國の神たちのをも脅かすことだから。

人々を救う組織であるはずの皇國が何か悪いことを企んでいるのなら、私は魔王と手を組んででも止める。

「きゃきゃっ」

クラウンが私を勵まそうと、くるくると踴った。可い。

ゴーストたちはいつも、寂しさや不安を紛らわせてくれる。

「クラウン～！　優しい！　可い！　最初は食べようとしてごめんね！」

ファンゲイルの命令で始めたゴースト研究は、今じゃ私のライフワークになっている。

進化も順調で、今ではほとんどのゴーストが戦える姿に変わっていた。

中でも多いのが、進化條件が簡単なサイレントゴーストだ。魂を千個集めてレベルを上げれば自的に進化するので、暇を見て魂を集めた。

「ひひひ……」

「あ、ちょっとサイレン。また勝手にどっか行こうとして！」

加えて魔晶石を必要素材とするウェイブゴーストも、かなりの數揃っている。私が発見した鍾には魔晶石がたくさんあって、いくら使ってもなくなりそうにない。なのでゴーストの中でも興味を示した個は、どんどんウェイブゴーストに進化させた。

ただし、霊でなければれない割れ目の奧にあるので、採掘は難航している。もしかしたらスケルトンなどの進化にも使えるかもしれないけど、こればかりは仕方ない。死霊と違って、魔晶石はをすり抜けることができないのだ。

「けらけら！」

「もう、ウェイブまで……。不定形結界」

功例がないのは、の発を條件とする進化先。

私もなったことがあるレイスは四だけしかいない。ゴーストはが希薄だから、自発的に願を持つことがないんだよね。一緒に過ごすことでしずつが芽生えることは確認しているけれど、なかなか上手くいかない。要研究だね。

その分、レイスは強いし頭もいいので、この四は他のゴーストたちのまとめ役として活躍している。

幻覚をるクラウンゴーストに至っては、まだ一しかいない。

悪戯心なんてどうやって芽生えるんだろう？　元々の気質としか言いようがないよね。意識が希薄だと言っても、ゴーストたちにも個はあるし。

「きゃっきゃっ」

デフォルメされた小さいスケルトンの幻影を出して、楽しそうに笑っている。

クラウンはいつも元気だ。私も見習わないと。

もし戦爭になったら、私はレイスやゴーストたちと一緒に戦うことになる。

「うん、頑張ろう！」

「けら！」「きゃっ」「ひひ」

拳を握りしめて決意を固めると、いつも一緒にいる三が応えてくれた。

うんうん、息もぴったりだね。

「そういえば、あれから村がどうなったか確認しないとね」

太も昇りきったので、一度山を降りることにした。