槍を下ろしたメズに代わり、今度はゴズが大斧を振り上げた。

「メズは弱じゃな！　儂なら一撃で砕見せようぞ！」

ゴズの全から、闇魔力が炎のように立ち昇った。

メズのな魔力作とは対照的に、荒々しく豪快な魔だ。度こそ劣るが、圧倒的な出力によって鎧のように包み込む。

それは斧を纏う魔力にも表れていて、刃全が魔によって強化されている。

「ダークスイングッ」

ゴズの攻撃も、防ぐのは簡単ではない。

王國近くの森で戦った時は、年を守るだけで一杯だった。レイニーさんの助太刀でなんとか撃破できたけど、私一人では斧を數秒止めることしかできなかった。

でも、今の私は違う。

私は再び不定形結界を展開した。

ゴズの斧は攻撃範囲が広いから、先ほどの盾ではサイズが足りない。かといって大きくすればいいという話でもないね。

イメージは一枚の布。

聖結界のように強固な壁を作るのではない。水のように流れく質を持った魔にしかできない、布のような盾だ。

「天の羽」

ふわり、と不定形結界が広がる。らかいように見えて、中は魔だ。

橫薙ぎに振るわれたゴズの斧を優しくけ止める。弾くのではない。魔の弾力によって衝撃を吸収し、勢いを殺していく。

「うぉおおおおお」

ゴズがさらに闇魔力の出力を上げた。

羽と斧の魔力がせめぎ合う。重量で押し切る大斧は、勢いが止まれば攻撃力を大きく減ずることになる。次第にゴズの力は弱まっていき、そして止まった。

「……ふう」

暴力の権化みたいなゴズの攻撃を防いだ！

心でガッツポーズしながら、ほっと息を吐く。まあ一撃防いだだけで勝ったわけではないんだけどね。

実踐では何度も止めないといけないし、反撃もしないといけない。でも、以前より長したのは間違いない。

「ふ、ふん、しは魔を使えるようになったみたいじゃの」

後頭部を掻くゴズも、どことなく悔しそうだ。

冥國にいる魔で、接近戦だけで言えば最強クラスの二人だ。完全に防ぐのは難しくても、なんとか凌ぐことが可能だと確認できたのはよかった。

「まあ私も長しているってことだよ！」

「我らは一度お主に負けているからな。今後もうかうかしていられないようだ。それに、あの年も強くなっているのだろう？」

「アレン？　うん、私がギフトを渡したからね」

祝福(ギフト)によって、アレンはギフトを手にした。しかも『聖』と並ぶ最高位の『勇者』だ。

ギフトを與えるなんて、ギフテッド教の教義からしたら神の領分を侵す行いだ。私の覚としては神様にお願いしている、くらいなものだけどね。

もし教會にバレたらアレンも危ないかもしれないけど、魔王と戦うならスキルなしでは危険だ。だから、半分は私の我がままで、アレンにギフトを渡した。

アレンならきっとギフトを使いこなして助けにきてくれる。そう信じている。

「そうか。また會うのが楽しみだ」

「意外だね。メズを殺した相手だよ？」

「だからこそ、である。奴のことは武人として認めている。再び槍をわしたいものだ」

「えー、できれば戦わないでほしい」

武人とか言われてもか弱いの子の私にはわかりません！

メズはククク、と楽しそうに笑う。戦闘民族怖い。

「儂もより訓練せねば！　次の戦爭ではぜひとも活躍して、今度こそ幹部になるのじゃ！」

「我とは違い、蟲どもに隨分と苦戦していたように見えたが？」

「なんじゃと？　メズなど、雑魚をちまちま突き刺していただけじゃろうが」

あーあ、また二人で爭い始めちゃった。

ゴズは相変わらず幹部になりたいらしい。ファンゲイル配下の幹部って、ミレイユ以外にもいるらしいけど見たことないんだよね。幹部になっても別にいいことなさそうだけど……。

二人はアンデッドになったことで、Ｂ＋ランクに達している。ファンゲイルの式は、死を條件として強制的にアンデッドへ進化させるものだからだ。

進化によって魔力が増え、疲労を知らぬになった。種類としてはグール系統に近いらしく、タフになり傷もし経てば消える。

生前と比べ筋は付きづらくなった、とぼやいていたけれど、それでもかなりの強化だ。

「帰ろうか」

「きゃきゃっ」

再び模擬戦を始めた二人をしり目に、そろーっと離れる。

カマキリの魔の言を信じるならば、殘り一か月。

『蟲の魔王』ネブラフィス、そしてその裏にいると思しき皇國との全面戦爭までの、つかの間の休息だ。

もちろん、ただ待つだけではなくて、それぞれ準備に追われている。

それに、敵戦力や本當に皇國がついているのか、など調査も必要だ。

ぼーっとするのはネブラフィスを倒して、真相を確かめた後！

いつかアレンとゆっくり過ごせる日が來ると信じて、頑張ろう。

修行パートでした。