《【完結】処刑された聖は死霊となって舞い戻る【書籍化】》『聖』トアリ

ここはどこだろう。天使のタリスマンの中?

私はどうなったの……?

処刑されたあとの、ヒトダマになる前と同じだ。

意識だけがあって、覚がない。霊すらも失い、また魂だけになったみたいだ。

ギフトは魂に宿り、意識によって制される。

生前の私に何らかの方法でかけられたは、意識と魂を固定化し、霧散しないようにするものらしい。

全ては、天使のタリスマンに捧げるため。

人造人間にされた神たちも、私と同じように意識があったのかな。

生きたまま、あるいは殺されて魂を抜き取られ、仮初のれられる。想像を絶する死に方だ。

(私たちは皇國のおもちゃじゃないのに)

もちろん皇國の中でも、アザレアたち『革新派』だけなのだろうけど。

真面目にギフテッド教に盡くしていた神たちを使って、水面下で悪事を働いていたのだ。

完全に綺麗な組織だと盲信していたわけではないけど、なくとも民のためになることが教會の在り方だと思っていた。

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(これは……聖屬の魔力? でもなんか違う……)

どろりとした、重たい魔力が流れ込んできた。私の魂に侵して、中を満たす。

不思議と嫌なじはしない。聖屬の魔力に似ている。

ああ、そうか。

(これ、神様の魔力だ)

神託を使った時に、ほんのわずかだけどじたことがある。

神様って本當にいたんだね。てっきり、ギフテッド教の作り話だと思ってたよ。って、聖がそんなこと言ったらダメか。

アザレアの悲願とやらも、あながち夢語ではなかったらしい。

神を現世に降ろして、支配する。そんなことが可能なのかは不明だけど。

(やだなぁ。私、神様に乗っ取られちゃうのかな)

痛みもなく、魂が満たされていく。

意識が希薄になっていくのをじる。暖かい魔力に包まれて、まどろむような覚で心地いい。

でも、著実に自分が消えていくことに対する恐怖のほうが上回る。

必死に意識を保とうとするけど、おそろしい眠気が私を襲う。

(もー! 神様ならそっちで抵抗してよ! このままだと人間にいいように使われちゃうよ!)

ギフテッド教は唯一神様を信仰対象として崇めてきた。ギフトを授けてくれて、『神託』を使えば詳細に教えてくれる。そんな存在として。だから、『神託』を使える神たちは特権的な地位にあったし、ギフテッド教は大陸のほとんどの國で國教とされるほどに勢力をばしてきた。

もし、そこに本の神様の力が加わったら……世界統一も、不可能ではない。

神様にとってそれは、不本意なことではないの?

もしかしたら、神様に人格なんてないのかもしれないね。

流れてくる魔力は一定で、抵抗している様子はない。神様の魔力は絶え間なく流れ続け、私の魂を侵していく。

自分が自分でなくなっていく覚だ。

(やだ、死にたくない)

もう死んでるけど!

『聖』のギフトはあらゆるギフトの中で最高位のものだ。つまり、普通の人よりも強い魂を持っている。

神様を呼ぶのに聖の魂が必要だというのも納得できる話だった。こんな重たい魔力、聖屬に高い適正を持つ強靭な魂じゃないと耐えられない。

『セレナさん。可らしい聖さん』

音なんて聞こえないはずなのに、どこからか聲がした。

(だれ?)

『私はトアリ。五百年前の聖ですよ!』

(トアリさん……ファンゲイルの人の?)

『こ、人だなんて! ……間違ってはないです!』

聲から嬉しそうなのが伝わってくる。き通ったしい聲だ。

五百年前、ファンゲイルが人間だったころに聖をしていた……だよね。あのドレスを著た人骨の、生前の人格。

(とっくの昔に死んだんじゃ……まさか、お、オバケ!?)

『何言ってるんですか。セレナさんだってそうですよ』

(そうだった)

冥國は死者ばかりなので、驚くのもおかしな話だね。でも、アンデッドになったわけでもないのに意識が殘っているのはなんでだろう。ファンゲイルが知ったら喜ぶね。

『殘念ながら、私の魂が無事なわけじゃないですよ』

私の考えを見かしたように、トアリさんがそう言った。

『これは天使のタリスマンの中に殘った、魂の殘滓です。魂のほとんどは時間の経過とともに風化して、今ではちょこっとしか殘ってないんですよ』

(殘滓だけで意識を保ってるの?)

『死ぬ瞬間、ゲイルと離れたくない~って願ったらできました!』

えへへ、とはにかむ聲がする。この子、本當にファンゲイルが好きなんだなぁ。

願っただけで葉うなんて、さすがファンゲイルが史上最強の聖と評するだけある。……信仰心の差?

『ずっと封印されてたんですけど、ファンゲイルが見つけてくれました! その後は、タリスマンの中から様子を見ていたんですよ。ゲイルったら、あんなに私のを抱きしめてくれて……きゃぁああ』

ファンゲイル大変! 骨とイチャイチャするという変態行為が好きな人にバレてるよ!!

なんか喜んでるみたいだけど!

大先輩なのに、可いなぁという想しか浮かばない。

『こ、こほん。私がセレナさんに話しかけたのは、のろけるためでも、ゲイルをとらないでって牽制しにきたわけでも、あのミレイユって子なんなの!? ……って話をするためでもありません』

(は、はい)

『私はもうとっくに消滅した。でもセレナさん……あなたにはまだやることがあるはずです』

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