《【書籍版・講談社ラノベ文庫様より8/2発売】いつも馬鹿にしてくるモデルの元カノも後輩も推しのメイドも全部絶縁して好き放題生きる事にしたら、何故かみんな俺のことが好きだったようだ。》元カノとの決別

「なぁ、あれって宮本……だよな?」

「めっちゃかっこよくなってる! モデルさんみたい……」

「夏休みデビューってレベルじゃねぇぞ……」

突然だが俺は自惚れ屋ではない。先月の出來事のおで自分の事を客観的に見れるようになったし、元から自己評価は高くない。

だが、そんな俺でも斷言することができる。

夏休みの間に、レベルアップしすぎてしまった。

約一月の自由な時間を無駄に浪費したくなかった俺は、毎日をフルに使ってあらゆる努力をした。

容院に行って髪のを今風に切ってもらったり、服についての知識を片っ端かられ、実際に買いに行ったりもした。また、筋トレを継続する事で若干だが筋量も増えた。

全く知識のなかった俺は、それが幸いしてスポンジのように學習していき、遂にはキャから卻したというわけだ。見た目だけは。

そんな俺が堂々と現れて、クラスメイトが驚くのは無理もない。夏休みデビューと言われるのはしムカつくが、傍から見たらその通りだろう。

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教室の中を見回しても、男子も子も遠くから騒ぎ立てるばかりで、話しかけてくる勇者はいないようだ。

……ただ一人を除いて。

「あれ、もしかしてユウ?」

俺の後ろから馴れ馴れしそうに話しかけてきた、抑揚のないクールな聲の主は、淺川由馴染というやつだ。

背中の辺りまでばしたしい黒髪は、日頃のケアの賜だろう。その手間に見合うほどの整った顔立ちをしており、切れ長の目やすっと通った鼻は同じ日本人とは思えない。髪をかき上げるだけで、クライスメイトの視線は彼が獨占してしまう。

モデルをしているだけあって、スタイルも同年代子の中で群を抜いている。というか俺より長が高い。

これだけ聞くと、この人の馴染という特別な地位にいる俺を羨ましく思うだろうが、何を隠そう、こいつは俺の元カノで、浮気して俺の事を捨てやがった最低だ。

「淺川か、何か用?」

「それ、夏休みデビューのつもり? めちゃくちゃ面白いね。見た目だけ変わっても意味なんてないのに」

あくまで冷靜に返事をする俺に対し、彼はいきなり剣で斬りかかってくるような口ぶりだ。顔面が優れている人間の言葉は重みが増すのか、以前の俺どころか大抵の人間の心を折ることが出來そうな一撃。

だが、そんな攻撃に対抗するだけの訓練を俺は積んできたのだ。

「確かに見た目は変わったが、それだけだと勝手に決めつけないでもらえるか? なくとも面が終わってるお前よりはマシな長をしたと思うよ」

「……え? ユウ……?」

やはり反撃されると思っていなかったのだろう、口を開けて呆けたような顔をしていて、せっかくの人が臺無しだ。今日の俺は一味違う。的に言うと、店主の代に失敗したラーメン屋の味くらい違う。

さっきも言った通り、俺たちは馴染だ。心ついた時から一緒にいて、中學を卒業した辺りから、互いを異として意識し始めていた。一年前の春、どちらから告白したというわけではなく、自然な流れで俺たちは付き合い始めていた。

この頃、淺川はモデルとしてデビューし、その貌からメキメキと頭角を表し始めるようになる。そんな人間の彼氏であるということが誇らしかったが、同時に、俺は彼の隣に立てる男なのだろうかと疑問に思うようになっていた。輝いている淺川に認めてしくて、釣り合う男になりたくて俺は努力したが、ある日の放課後。俺は彼に呼び出されてこう告げられた。

「ごめん、撮影で一緒になった俳優さんと付き合う事にしたから。彼はユウと違って面白いし、一緒にいて安心する。だからさよなら」

もちろんショックだった。相手の事を考えていたのは俺だけだったのだ。だけど同時に「當然だ」とも思った。きっと俺の努力が足りなかったんだ。その俳優とやらは、俺よりも遙かに優しい男なのだろう。だから俺は、そのまま彼との別れをれる事にした。

「わかった。今までありがとう」

「……えっ? ユウはそれでいいの? 怒ろうと思わないの?」

「俺の魅力が足りなかったんだ、怒ることなんてないよ。安心して、この事は誰にも言わないから。それじゃあ、お幸せに」

そうして俺は、潔くを引いた。淺川が幸せになってくれるならそれでいいと。

しかし彼は、一週間も経たずに彼氏と別れてしまったらしい。それから、淺川は何事もなかったかのように俺に話しかけてくるようになった。

ただ一つ変わったのは、彼が俺を馬鹿にするようになった事。かつての俺は、それもまた仕方ない事だと、自分が釣り合わなかったのが悪いのだと笑って済ませていたが、今はもう違う。

淺川は俺を裏切った。その事実だけが俺の心に付いている。彼は俺の人生には必要ない。

未だに目の前で揺し、席につくことすら忘れている様子の淺川に話しかける。

「だいたい、なんで俺に関わってくるんだ? 俺たちはもう馴染でもなんでもないのに」

「ち、違う! そんな事ない!」

「何が違うんだ? 浮気して、俺の事を裏切ったのに」

「そ、それは……。ただ、私はユウに――」

「もう俺に話しかけないでくれ。俺はお前のことを赤の他人としか思っていない」

クラスがざわつき出す。俺は、淺川の蕓能活に支障が出ると考えて、浮気のことはおろか、付き合っていた事も一切口にしていなかったのだ。過去の事とはいえ、彼氏がいた事が知れれば炎上する可能もある。

だがそんな気遣いはとうに消え失せた。彼がどうなろうと、俺の知った事ではないのだから。

「え、淺川さん浮気してたの?」

「うわ、サイテー……」

「やっぱ人は格悪いって本當だったんだな」

「み、みんな……違うの……」

それが心からの非難なのか、それとも嫉妬なのかは分からないが、クラスメイトは俺の味方をしてくれているようだし、やはりこれが普通の反応だろう。俺の気持ちは間違っていなかったのだ。

淺川は、自を責めるように突き刺さる視線に耐えられなかったのだろう、大粒の涙が浮かんだ目でこちらを一瞥した後、どこかへ駆け出してしまい、授業が始まるまで戻ってくる事はなかった。

だが、その口元はどこか笑っているようだった。

……かくして、俺の新しい高校生活が始まる。

これで絶縁したのは二人目。後一人で、俺は本當の意味で生まれ変わることができる。

三人目は放課後にでも會うことができるだろう。

俺は逸る気持ちを抑えて、授業に臨むのだった。

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