《【書籍版・講談社ラノベ文庫様より8/2発売】いつも馬鹿にしてくるモデルの元カノも後輩も推しのメイドも全部絶縁して好き放題生きる事にしたら、何故かみんな俺のことが好きだったようだ。》絶縁、したよな?
翌日。
俺が以前と変わった事で、クラスメイトと俺との間には大きなというか、壁ができたようだった。
まぁ、元から特別仲が良かった人間はいないのだが。しかし、これはチャンスだ。俺に話しかけてくる好きがいない今、他人を良く観察して友達になりたい人間を探すとしよう。
俺は何も、全ての人間と絶縁したいわけではないのだ。もちろん友達はしいし、友との青春というやつにも憧れがある。
だが、友達とはどうすれば作れるのだろう。そもそも、意識して作るものなのか?
思い返せば俺は、いつも相手の機嫌を取ることばかりに気を取られ、心の通った友人というのがいなかった気がする。
高校2年の夏休み明け、既に友人関係は構築され、殆ど完に至っているといえる。そのに突然異がり込む事が出來るとは思えない。
そう考えると、今の時期から友達を作るのは至難の業かもしれないが、時間はまだまだある。まずは、授業中にでもゆっくり作戦を練るとするか。
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夢の高校生活を思い浮かべながら、俺は教室の扉を開く。
「ユウ、おはよ」
「………………」
昨日の涙のせいか、若干目の腫れた八頭浮気が俺の席に座っていた。右手をしだけ上げ、存在をアピールしている。何だそのラフな挨拶は。
昨日彼と絶縁したというのは、夢や幻ではなかったはすだ。これが夢ならば、俺の夏休み全てが妄想の産であるという説すら出てくる。そもそも、何故俺の席に座っている?
もしかして、俺と淺川の使用言語は違うのだろうか。迂闊だった。日本だからと言って甘えず、世界の共通語とされている英語を用いるべきだったのだ。
だが、殘念ながら俺は英語が得意ではない。以前道端で外國人に道を尋ねられた時、あまりに下手な英語だったのか聞き取ってもらえず、結局その人を番に屆ける事になったのを思い出す。
大変不本意だが、日本語での意思疎通を図るしか道はないだろう。夏休みの間に英語を勉強しなかったことが悔やまれる。
「そこは俺の席だ。どいてくれ」
「ユウ、やっと自分の気持ちを話してくれるようになったんだね。でも、流石に昨日のは冗談キツいよ。私の事を馴染だと思ってないだなんて、噓だって分かってても取りしちゃった。それに、昔みたいに私の事はユミって――」
「冗談なわけないだろ」
目の前にいるのは本當に同じ人間なのか?
言っている容が全く理解できない。俺が自分の気持ちを話しているのは分かっているのに、それを冗談だと思っている?
「ね、ねぇユウ? いつまでも怒ったフリしないで? 私も今までの事は謝るけど、それはユウの事を――」
「……謝る? 今更何を謝るっていうんだ。お前達がいつも俺を否定するから、俺の心はもうボロボロだ。ぐちゃぐちゃにした紙を開いて元の形に戻しても、一度ついたシワは消えないんだよ」
取り繕うようにこちらを見上げて言葉を紡いでいるが、彼の言葉全てが的外れだ。
淺川は他の二人とは違い、浮気して俺を捨てるという行まで起こしている。今頃謝られたって、砕け散った心は修復できない。
その言葉を聞いて、彼の表は凍り付いたように固まる。先程までとは違い、俺の言葉はしっかりと屆いたようだ。
「そ、そんな……。私の努力は……私は何のために……」
昨日と同じように、本來なら俺が流しているはずの涙を奪い、淺川は教室を飛び出していった。
しかし、前回と違いその口元は強張っていて、何かを認めたくないような、自分の全てを否定されたような、そんな絶的な表をしていた。結局彼は授業が始まっても戻って來ず、どうやら早退したみたいだ。
辺りは鬱とした空気に包まれていたが、俺のにはただ、変わらず自分の思いを伝えられた事と、思いの外上手い言い回しができた事による達だけが殘っており、清々しい気持ちで一日を過ごしたのだった。
――――――――――――――――――
帰宅した俺は怠けるのもほどほどに、既に日課となっている筋トレを始める事にした。
始めたばかりの頃より、格段に回數をこなせるようになってきている。取り組んでからはまだ一月ほどなので目に見える様な変化はないが、それでも以前より若干付きが良くなり、神的にも余裕が出てきたじがする。やはり継続が一番大切で、難しい事なのだろう。
次に俺は、報収集用に新たに作したSNSアカウントを開き、秋冬の服のトレンドを調べる事にした。
服なんて著れればなんでもいいと思っていたし、今でもそう思うところはあるが、當然格好いいと思う服裝はある。好きな服を著た時に、それが似合う男になりたいというのがモチベーションを維持する要因になっている。
前に、安い服を著た顔の優れた人間と、高い服を著た顔の優れていない人間を並べ、互いの服を換して著させる畫像を見た事がある。
結果はどちらも前者が似合っており、安い服であっても、雰囲気がある人間が著れば高級に見えた。
つまり、自分の好きな服を著こなすには、それに見合う雰囲気をに付けなければならないという事だ。世知辛い世の中である。
夕食を終わらせた後は、風呂にる前に眉を整える。別に朝でもいいのだが、なんとなく今日は先にやっておきたい気分だ。
インターネットで「眉で人の印象は大きく変わる」という記事を見た時は半信半疑だったが、実際きりっと揃えられた眉は凜々しい印象を與えていた。
最初に上手い事整えてくれた容師さんには頭が上がらない。若干失禮だったが。眉の後は指のも処理し、やっと浴タイムだ。
さて、ついに憩いの時間がやってきた。録畫しておいたアニメを見るのがかな楽しみである。
畫面では、主人公とヒロインが喧嘩していた。主人公にも非はあったが、ヒロインはそれにかこつけて大分酷い事をしていた。
しかし最後には、互いの非を認め合って謝罪し、再び良い関係へと戻っている。展開が気に食わなかったわけではないが、つい停止ボタンを押してしまった。
昔は好きだったラブコメも、最近はあまり魅力をじなくなってしまったようだ。きっと、に対する憧憬が消えたのだろう。
テレビの向こうの彼のように、自分の思いを素直にぶつけられるようになったのに、何故か語の主人公が眩しく見えた。
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