《【書籍版・講談社ラノベ文庫様より8/2発売】いつも馬鹿にしてくるモデルの元カノも後輩も推しのメイドも全部絶縁して好き放題生きる事にしたら、何故かみんな俺のことが好きだったようだ。》男子高校生

「ごめんなさい先輩! 今日の放課後、友達と遊びに行ってもいいですか?」

「全然いいけど、どうしたの?」

晝休み、教室で読書をしながら優雅なランチタイムを過ごしていると、騒がしい様子で黒咲が謝りに來た。お察しの通り、めちゃくちゃ目立っている。

「いや、先輩が私と一緒に帰るのを楽しみにしてるんじゃないかと……」

「もちろん楽しみにしてるけど、黒咲が友達と遊ぶのには大賛だ。たまには友達付き合いしないと孤立しちゃうぞ」

「……説得力ありますね」

予想以上にに染みた様子の顔に渾のアイアンクローが決まり、失禮な後輩はき聲をらしながら苦しんでいる。ということで、この試合の勝者は俺に決まった。

「わざわざ言いに來てくれてありがとう。お晝ご飯食べてく?」

「いえ、そうしたいところなんですけど、周りの人の視線が痛いので帰ります! それじゃあ先輩、また明日です!」

「はいまた明日〜」

口調は元気そうなのだが、その目は名殘惜しそうな、エネルギーの補給が済んでいないような瞳でこちらを見つめていた。確かに凄い空気だもんな……。

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それはそうと、殘念なことに今日の放課後の予定はなくなってしまった。特にする事もないし、大人しく帰ってゲームでもしよう。

――と、以前までの俺なら考えていただろう。

しかし、単呪文が全呪文になるように、語中盤の勇者ばりの進化を遂げた今の俺には、何をすべきなのか手に取るようにわかる。

ゆっくりと席を立ち、黒板の近くで雑談しているグループへと足を進める。自分たちを目掛けて來ているのを理解したのか、の中の何人かは後退り、引き攣った笑みを浮かべている。だが、その中でも一際輝いて見える一人だけは、こちらへ気付くと満面の笑みを浮かべてた。彼に向けて、俺が言うことはただ一つ――

「俺、何かした?」

「いや、特に何もしてない」

「間違えた。片山、放課後遊ばないか?」

……ついに言えた。

これがぼっちへの第一歩「友達を遊びにってみる」だ。そうは言うものの、當然相手にも予定がある。もちろん了承してもらえるのが一番だが、こちとらいきなりったのだ。しかしたとえ斷られたとしても、友人をう行為そのものが大きな長を表している。

返答を貰うべく片山を見ると、何故か腕に顔をり付け、鼻を啜っていた。

……泣いてる?

「まさか……お前からってくれるなんて」

「い、忙しかったらまた今度でも……」

「忙しいわけあるか! 今日の予定なんて全部キャンセルだ! 服見に行こうぜ!」

彼の緒がだいぶ心配なのだが、何はともあれ、めでたく放課後に友達と遊ぶという一大イベントを開始する事ができるのである。

――――――――――――――――

「宮本ー!!! 原宿だ!!!」

服を見るということで、無駄にテンションの高い片山と共に原宿に來ていた。服といえば原宿。綺麗系からストリート系、名前の通り原宿系まで様々なタイプのアパレルショップが立ち並んでいる様子は、まさに服のデパートである。上手いようで全く上手くない例えだな。

「片山は行きたいところある? そういえばカナタマツモト好きだったよな」

「行っていいか? 奧の方にカナタの路面店があるから見たいんだよな」

「じゃあそこからにしよう」

人混みの中を十分後程歩くと、高校生には到底手の屆かなさそうなブランド店がひしめき合うエリアに辿り著き、その一角に目的の店はあった。

変わらず興したままの片山と店にると、背が高く雰囲気のあるお兄さんが出迎えてくれる。

「宮本、これどう思う?」

「あー、丈が長いから秋は羽織れるし、コートの下に著てもかっこいいと思う」

「やっぱかっこいいよなー。でも7萬かぁ……」

高校生に、いや高校生でなくとも7萬はポンと出せる金額ではない。それもシャツ一枚の値段がだ。ただ、俺も最初はおかしいと思っていたが、値の張る服はそれだけ工夫して作られているものだ。生地や、そもそものデザインが他の店にはない一店である事が多く、事実このシャツは服好きの中でも人気がある一枚で、片山が悩むのにも頷ける。

「そういえば片山はバイトか何かしてるのか? カナタって全的に高いから、小遣いだけで買うのは厳しいだろ」

「そりゃあもちろんバイト漬けよ。基本カラオケだけど、たまに掛け持ちしてる」

やはりバイトを掛け持ちしないと厳しいか。それだけ服に対する熱意があるということだろう。結局今日はシャツを買わなかったが、憧れの一枚をに纏った自分の姿を知ることができて、とても満足そうだった。しかし店を出ると、急に真面目な顔付きになって問いかけてくる。

「今朝の落書きの事なんだけど、犯人は探さないのか?」

「あの程度の被害だったらわざわざ探す必要はないかな」

「そうかぁ……。宮本、変なところで達観してるよな」

「そうかな? でも、流石に片山とか後輩とかに被害が及ぶようだったら、俺も行しなきゃならない」

自分に何かちょっかいをかけてくるだけなら許容できる。しかし、全く関係のない人間まで巻き込むというのなら話は別だ。高校生にもなって、そんな卑怯な嫌がらせしかできない奴がいるなんて思いたくはないが。

というかなんで片山は頬を赤くしているんだ。

「お前が俺の事をそんなに大切にしてくれてたなんて」

「……次見に行っていいか?」

「そうだな! まだまだ気になってる服は沢山ある!」

変わりが早すぎる友人に苦笑するが、これこそ高校生活というものだろう。俺たちはふざけ合いながら、軽い足取りで進んでいくのだった。

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