《【書籍版・講談社ラノベ文庫様より8/2発売】いつも馬鹿にしてくるモデルの元カノも後輩も推しのメイドも全部絶縁して好き放題生きる事にしたら、何故かみんな俺のことが好きだったようだ。》淺川由の理由 その2

こうして、私たちの人関係はあっけなく壊れてしまったのだ。

でも、それで全てを終わりにしようとは到底思わなかった。ユウはきっと、自分の気持ちを出すのが苦手になっているだけ。私達の絆が、こんな事で無くなるはずがないのだから、私がユウの力になってあげなくては。

まず、存在しない人と別れた事にするために、一週間を靜かに過ごす事にした。こんなに長い間ユウと會話をしなかったのは初めてで、想像を遙かに超えた寂しさと孤獨に、何度も聲をかけそうになる。でも、ユウも同じ気持ちのはず。そう思ったら、なんとか耐えることもできた。

長かった時間も過ぎ去り、覚悟を決めた私は、満を持して教室にいるユウに話しかける。

「おはよ、ユウ。私二日くらい前に彼氏と別れたから、これからは気を遣って話しかけるのを我慢しなくていいから」

「……そっか。何か用がある時は遠慮なく聲をかけるよ」

やっぱりだ。やっぱりユウは自分の心を見せようとしない。機械のような、何か大きな意識の奴隷になっているような反応を見せるだけ。でも、私も黙って見ているだけではない。またしても良い方法を考えついたのだ。

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次の朝、自分の席で眠そうにスマホを眺めているユウに聲をかける。

「おはよ、ユウ」

「おはよう、淺川」

彼の私への呼び方は、生まれて初めて他人をじさせるものへと変化していた。予想だにしていなかった攻撃に心臓がギュッと締め付けられ、呼吸が一瞬止まる。しかし、ダメージをけたくらいで立ち止まっていられない。私は予定通り、作戦を開始する。

「今日も一人で本なんて読んでるの? そんなんだからモテないんだよ」

俯いているユウの顔が微かに曇って、を噛んだように見えた。しかし、次の瞬間には元の穏やかな表に戻っており、弱々しい笑顔で私に返答する。

「……そうだよね。気をつけるよ」

「…………」

無言で自分の席に戻り、鞄を暴に置いて座る。苛立ちが抑えられない。

普通、あんな事を言われたら怒るんじゃないの?

なんでそんな優しい顔でれられるの?

あんなのはユウの本當の気持ちじゃない。私はその日から毎日、ユウと出會うたびに彼を罵倒した。そうすればいつか、彼にも我慢の限界が來て、笑顔の下に隠れている気持ちを見られると思ったからだ。

晴れの日も雨の日も、年が変わって2年生になっても、私は彼の仮面を剝がそうとし続けた。

そして、ついにその日はやってきた。

夏休みが終わって初めての登校日。私が教室に著くと、何やら教室はざわざわとしていた。たとえるなら、転校生が來ると分かった日の朝のようなざわめきだ。教室にると、その原因はすぐに見つかった。

外界との接を拒むかのようにばされていた髪はさっぱりと切られ、気そうな雰囲気はなりを潛めている。初めて會った人間であれば、元々活発であったとすらじさせるその人は、ユウだった。

別人のように変わった彼に、クラスメイトが驚くのも無理はない。一月足らずでこれほどの変化を遂げるというのは、並大抵の努力ではないのだろう。しかし、ユウはユウなのだ。ダルそうに首を回す癖も、時折髪のが気になるのかる癖も、何も変わっていない。私にとっては何一つ変わらない彼のままだ。だから、他の人間と違って聲をかけるのにも躊躇はなかった。

「あれ、もしかしてユウ?」

聲の主が私だということに気が付いた様子で、こちらへ振り返る。私を抜く視線は以前よりも遙かに冷たく、もしかしてと、鼓が速くなるのをじた。

「淺川か、何か用?」

「それ、夏休みデビューのつもり? めちゃくちゃ面白いね。見た目だけ変わっても意味なんてないのに」

冷靜さを全面に返答するユウの姿からは、やはり今までのような優しさがじられず、本當に彼は変わったのかもしれない。その真偽を確かめるため、私は間髪れず言葉の刃で斬りかかる。

「確かに見た目は変わったが、それだけだと勝手に決めつけないでもらえるか? なくとも面が終わってるお前よりはマシな長をしたと思うよ」

「……え? ユウ……?」

待ちんでいた反撃。青天の霹靂のような事態に、きっと私は口を開けて馬鹿みたいな顔をしていただろう。くことすら忘れて、ただ次の言葉を待っていた。

「だいたい、なんで俺に関わってくるんだ? 俺たちはもう馴染でもなんでもないのに」

「ち、違う! そんな事ない!」

私の知るユウなら絶対に言わない言葉の數々が、あまりに軽快に飛び出してくる。彼の追撃に返答しようとしても、興して言葉が出てこない。

「何が違うんだ? 浮気して、俺の事を裏切ったのに」

「そ、それは……。ただ、私はユウに――」

「もう俺に話しかけないでくれ。俺はお前のことを赤の他人としか思っていない」

その間も、私に向けられる憎悪がこもった言葉は止まらない。そんな思いをぶつけられる辛さと、ようやく念願葉った嬉しさが渦巻いて、自分がどんな顔をしているのかすらわからない。そして、絶縁にも取れる彼の言葉を皮切りに、クラスメイトがひそひそと會話を始める。

「み、みんな……違うの……」

そう、違うのだ。私と彼の間にある絆は、この程度で壊れることはないのだから、これは一時の喧嘩のようなものなのだから、勘違いしないでほしい。

この時ようやく、私の頬は熱い涙が伝っている事に気付いた。今の自分では、今のユウではお互いに気持ちの整理ができず、深い會話ができないだろう。離れ難いがここは一度、心を落ち著かせるためにどこかへ行くしかない。

最後にもう一度だけ、大好きな彼の姿を見ると、私は教室を飛び出した。

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