《【書籍版・講談社ラノベ文庫様より8/2発売】いつも馬鹿にしてくるモデルの元カノも後輩も推しのメイドも全部絶縁して好き放題生きる事にしたら、何故かみんな俺のことが好きだったようだ。》過去との決別、新しい自分
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「あははっ! 流石優太君、刑事さんみたい! 淺川さんって子とも仲直りできて良かったね!」
心から祝福してくれているであろうユイちゃんの聲が、スマホ越しに聞こえる。まぁ何というか、彼はこの件に関わっているわけではないが、一応の報告くらいはしておこうと思って、翌日の朝電話をかけてみたのだ。
「ありがとう。そういうじだって報告しておきたかったんだ。それじゃあまた遊びに行くから、いきなり電話かけてごめんね」
「ううん! 朝から優太君の聲が聞けて嬉しかったよ〜。あと、お店だけじゃなくてデートもしてね? それじゃ!」
殺し文句と共に電話が切れる。それにしても、機械を通してもその可らしい聲は健在で、朝からだいぶ癒されてしまった。著信音なり目覚まし音なりにしたらQOLがとてつもなく上がりそうだが、設定した時刻に起きる事は困難だろう。
おっと、話し込んでいたらこんな時間だ。余裕を持って電話をかけたつもりだったんだが。急いで持ちのチェックをして、玄関に向かう。今日は弁當もきちんと鞄にれた。
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「行ってきま〜す」
普段と変わらぬ出発をし、普段よりも急いで駅へ向かう。遅れるわけにはいかない。今日も黒咲が俺を待ってくれているからだ。
駅も近付き、そわそわと左右に揺れる黒髪が目にる。俺はバレないように、いつもとは逆の方向から黒咲に近付くと、背後から両肩を軽く叩いた。
「黒咲、おはよ」
「わぁっ!? びっくりしたぁ……。おはようございます、先輩!」
「どうしたんだ? そんなに息を上げて」
「先輩が驚かせたんですよ!?」
バシバシとこちらを叩いてくる後輩をでながら、二人で改札を抜ける。
「あのさ、この間の畫鋲の犯人は見つけたから、もう被害はないと思う。巻き込んでごめんな」
俺が撮影した証拠は、淺川が教師へ提出してくれると言っていたので任せることにした。遠くないうち、真壁には処分が下されるだろう。その事について、直接被害をけた二人にはきちんと謝罪と報告をしなければならない。
「わざわざ犯人を探してくれたんですか!? 嬉しいです、ありがとうございます!」
「いや、元々は俺のせいだからお禮言わなくていいんだけどね?」
「それでも、私のために何かしてくれたのが嬉しいんです!」
「……そうか。ありがとう」
場の空気を明るくしようとしてくれている後輩の思いを汲み取り、素直に謝をけれる。
と、そんな空気も束の間、黒咲は何やらもじもじと落ち著かない様子で口を開く。
「そ、そういえば先輩。今日の私、いつもと違うところがあるんですよ?」
「右耳に髪をかけてるよな」
「え、気付いてたんですか!? いつから!?」
「一眼見た時から。そりゃあ気付くよ」
日頃控えめに隠されている金髪が、幕のように綺麗に整えられていて、こんなにも目を引くのだ。それに気が付かないはずがない。同じように滅多に出しない耳も見えており、髪をかけ直す仕草も大人びていて、し艶かしく見える。率直に言って、とても似合っている。
「ど……どう……ですか?」
「めちゃくちゃ似合ってるよ。髪のかき揚げ方が特に」
「……変態」
変なことを言ったつもりはないのだが、じとっと目を細めて変態扱いされてしまった。そのくせ、黒咲の手は俺の制服の袖をそっと摑んでいる。本心では喜んでいるのかもしれない。気のせいか。
その後、新作のゲームの話なんかで盛り上がっているうちに、俺たちは學校へと到著した。下駄箱で靴を履き替えたあと、再び合流して黒咲を教室まで送り屆ける。
「それじゃあ先輩、また放課後に!」
「は〜い」
後輩に手を振りかえし、自分の教室へと足を進める。クラスは、事件の前のような平穏さを取り戻しており、各々が授業前の貴重な自由時間をしでも楽しもうと勤しんでいる。その中には、俺の數ない友人の姿もあった。
「片山、おはよう」
「宮本! おはよう」
「ちょっと聞いてしいんだけど、今大丈夫?」
そう言うと、彼は會話の容を察したのか、自分のいるグループのに一言斷り、こちらへ歩いてくる。メンバーも大理解したのだろう、特に疑問の眼差しなどはなく、落ち著いて二人で話す事ができた。
「なぁ〜んだ! てっきり犯人が50人くらいいたのかと思ったわ!」
「もはや軍隊だろ」
「ははっ! とにかく、頑張ってくれてありがとな!」
またしても謝されてしまった。話が暗くならないよう、軽くおちゃらけて場を和ませてくれる片山には謝するばかりだ。
「こちらこそ、ありがとう」
「気にすんなって言ったろ? それよりも、今度は下北沢に行かないか? 下北はハンドメイドのアクセサリーが――」
今度遊びに行く時の話で花を咲かせた後、ホームルームが始まった。
肝心の真壁は學校を休んでいるようで、姿はどこにも見當たらない。自分の悪事が暴かれた事で學校に來るのが怖くなったのだろう。彼が何か怪しいことをしていたという噂もささやかれており、俺が何もしなくとも、事態が収束していた可能すらあるのだった。
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