《【書籍化決定】ネットの『推し』とリアルの『推し』が隣に引っ越してきた~夢のような生活が始まると思っていたけど、何か思ってたのと違う~》ひよりんの膝枕大作戦

投稿が滯ってしまい申し訳ありません。

書籍化作業に伴うシナリオ再構や、新作に関するあれやこれやでなかなか執筆サイクルが構築出來ない狀態になってしまいました。

今月中に安定して2作品並行連載する方法を見つけますので、まったりお待ち頂ければ幸いです。

「ひ、ひよりさん…………?」

「お姉ちゃん、でしょ?」

こちらを見上げ微笑むひよりんは、顔は笑っているのに聲が全く笑っていなかった。らかな笑顔とドスの効いた聲のギャップに俺の背筋は容易く凍りつく。まさか推しの聲優の演技力をこんな形で実するなんて、夢にも思わなかったな…………

「…………お、お姉ちゃん」

「よろしい!」

「うおっ!?」

ほくほく満足顔のひよりんが俺の手を取りぐいっと引き寄せてくる。ソファに突っかかった俺はひよりんにもたれるようにソファに倒れ込んだ。

「わぷっ────まったくもう、こどもちゃんったら。甘えんぼさんなんだから」

言葉だけ聞けば迷そうなそのセリフだが、ひよりんの聲は幸せに満ちていた。満ち満ち満ち満ちていた。どこからかい所に思い切り顔面から突っ込んでいた俺は、ひよりんの表を窺い知ることは出來なかったが、間違いなくけているんだろうなと確信出來るくらいにその聲にはが籠もっていた。

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ひよりんのいちファンとして、ここはひよりんの演技力の高さを誇りに思うべきなのか、それとも脳から必死にシャットアウトしているこのむっちりとしたと向き合うべきなのか。答えを知ってる人がいたら教えてくれ。

「私ね、ずっとこうしたかったんだあ」

ひよりんの手が俺のを僅かにずらすと、俺の顔面及び上半はひよりんのをズルズルとり落ちていく。俺の顔が今どこに當たっているのかなんて考えたくなかった。険しい丘陵地帯を越え、俺はしっとりとしたに包まれた。

「う…………」

これがどこかは流石にすぐ分かった。

────ひよりんの太ももは、ハッキリ言ってめちゃくちゃエロい。

ザニマスのLIVE終演後のツブヤッキーは「ひよりんの太ももエロすぎた」等の呟きで溢れかえるし、現地で周りのオタクが「気付いたら太ももしかみてなかった」と言っているのを何度も聞いた。「ちゃんとLIVE観ろよ…………」と思いながらも、正直俺もめっちゃ見てた。勝手に目が吸い寄せられてしまうんだ。理由は分からない。多分俺が男だからだと思う。

そんな太ももに────俺の顔がくっついている。酔いは完全に覚めていた。

「ほら、ちゃんとソファに乗って」

促されるまま俺はずり落ちていた下半をソファに這い上がらせた。上半を支えにしていたせいで顔が太ももに押し付けられて、俺はの芯から湧き上がる何かを必死に我慢した。頭の大半は困でいっぱいだったが、わずかに殘った部分が強烈に「幸せ」を発している。酔ったに対してこんな事を考えているのがバレたら幻滅されるだろうか。だとしてもどうしようもなかった。俺は健全な大學生だし、健全な大學生は『推し』に膝枕されたら幸せをじてしまうものなんだ。

「こどもちゃん、どう? 気持ちいい?」

「は、はい…………」

気持ちいいのかは正直自信が無かった。らかいのに、強烈に居心地が悪い。落ち著かないのだ。心臓の鼓がひよりんに聞こえてしまうんじゃないかと思うくらいにうるさい。

…………ひよりんが酒だというのは重々承知していたが、ここまでの癡態は今までに無かった。これはもう、殆ど犯罪じゃないか。罪とかそんなじの。ひよりんの太ももは世が世なら取り締まられている程の破壊力を有している。そういえば膝枕ってどうして膝枕って言うんだろう。実際に頭を乗せるのは太ももなんだから、格には枕じゃないか?

頭が暴走してんな思考を行ったり來たりする。でもそんなカオスな狀態が今は丁度良かった。深く考えると俺はひよりんに手を出してしまう気がした。健全な大學生男子は『推し』に枕されたら手を出してしまうものなんだ。

「…………こどもちゃん、お姉ちゃんのこと酔ってると思ってるでしょ」

「そりゃあ、まあ…………」

拗ねたようなひよりんの聲が頭上から降ってくる。

これで酔っていなかったら完全に癡だろう。ひよりんが酔ったふりをして大學生をする26歳になってしまう。そんなものは人向け漫畫の中でしか見たことがないし、現実には存在しないことを俺は知っている。

…………のだが。

「────酔ってないよ、蒼馬くん」

「えっ?」

────聴こえてきたのは、いつもスマホ越しに聞いているあの聲。その真剣な聲は、さっきまでのひよりんとはまるで別人だった。

「ひよりさ────ぶべべ」

今の言葉の真意を聞こうとした俺の頬を、ひよりんの手が押し留める。

「蒼馬くんに膝枕してあげたくてね、ついお酒の力を借りちゃった。私が癒やしてあげたいのは、こどもちゃんじゃなくて蒼馬くんだから」

「そ、そうなんですか…………」

「そうなんです」

…………ひよりん、やっぱり絶対酔ってるって。いくら俺に謝していたとしても、普段のひよりんなら絶対こんな事は言わない。今頃後悔して耳まで真っ赤になってるはずだ。頭を太ももに押し付けられている俺にそれを確認することは出來なかったが。

「…………いつもありがとね、蒼馬くん。今日だって付き合って貰っちゃって」

「いや…………こっちこそ…………ありがとうございます」

「うふふっ、何に対してのお禮なのそれ」

このらかいに対してです────とは、流石に言えなかった。

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