《悪役令嬢の中の人【書籍化・コミカライズ】》私達は家族だった

4話いっぺんに投稿してます。4話目

何がいけなかったのだろう。いや、分かってる、原因になった事は全部。……どこから、取り返しがつかなくなっていたんだろう。

星の乙が常に甘い香りの香水を纏うようになって、それからしずつ彼への対応が変わっていった。1番まとわりつかれる時間の長かった、殿下への影響が覿面だった。日を追うごとに、つい先日まで「勘弁してほしい」と真顔で私達にもらしていた同じ行に対して「やれやれ」と困ったように言うだけになっていた。

魅了か、薬か、一応調べたけど何も出ない。これはいよいよマズイのでは、義父を通じて城の中樞に訴え出るべきかと思った矢先にとある悪魔のいが自分の中で囁いた。

このままウィリアルド殿下が星の乙を選べば、姉さんを……レミリアをむ事が許されるのでは、と。

……これはとても魅力的な案に思えて、ステファンが「薬や魔は何も出なかったが、やっぱり城に星の乙を隔離するよう要請しようか」と提案したのを不自然でないように蹴っておく。歪みそうになる口の端をおさえて、私は本を読むふりをしながら頭の中で計算を始めた。

あり得ない話ではない……建國の際の逸話もあり、國民では星の乙の王妃というのはウケがいいだろう。実際婚約の解消がなるかと言うところでは、殿下が強くむとともにグラウプナー家の了承がいるが……もう後戻りができなくなった頃に、「これをれれば王家に貸しを作れる」と公爵に持ち掛ければ上手くいくかもしれない。その前に止められる可能もあるが、あの人は政界のドンを気取っているわりにそこまで有能でないから自分なら隠し通せるだろう。

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肝心の姉さんはウィリアルド殿下を慕っているが、慕っているが故に殿下の心変わりは悲しみつつもれる。あの人はそういう人だから。で傷心となったは付けりやすいと聞いた話も思い浮かんで自分の腹黒さにゾッとする。けどこの計畫を棄卻する事は私にはできなかった。父を亡くした私をれて、家族としてを注いでくれた姉さん。初を自覚したときにはすでに王太子の婚約者だった。弟として何年も過ごしたけど、あの人を想う気持ちは一切褪せていない。久しぶりに開けてしまった奧底の扉の向こうには昔と変わらぬ……昔よりも強くなった慕が橫たわっていた。……良き弟であろうと私はあの時心の中で誓った。誓ったのに……

王家の都合とは言え瑕疵がつくこととなるが、そのくらいで姉さんの魅力は打ち消せない。今から手を回して、そうなった時に新しい婚約者の話が浮上しないように潰しておかなければ。

先の話を考えすぎた私には、今ここで傷付いて追い詰められている姉さんの事がまったく目にっていなかった。

ピナ嬢につらく當たる姉さんを諫めるのに、私怨がっていなかったと言えば噓になる。「人をめたりするような人じゃないと思ってたのに、ウィリアルドのためならこんな苛烈な嫉妬をするのか」と私こそが嫉妬していた。

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星の乙に周りから好意を持たせるという力があるのだろうか? やっている事は嫌悪しか無いが、なぜかピナ本人を嫌いになれない。ありうるな、國全に加護を與えるような能力の持ち主だし、その一環で「周りが彼を好ましく思って守ろうとする」という効果があってもおかしくない。

大丈夫、私はまだ姉さんの……レミリアへの想いの方が強い。

ピナと殿下の仲を今までの姉さんの評判が良すぎたせいで、解消まで話をもっていく事はできずに夜會を迎えてしまった。裏工作の甲斐もなく、これで謝罪をしたら手打ち扱いで元の木阿彌か。レミリア姉さんの評判を落としただけで終わってしまう、と焦ったのも束の間。徹底的に罪を認めるのを拒否して謝罪をしなかった姉さんに、殿下が想を盡かして婚約破棄を言い渡した。まさか無いだろう、と思いつつも最後まで「こうなったら全部思い通りなのに」と考えていたようになって笑ってしまいそうになる。殿下の態度は明らかにおかしかった……ピナの、いつもの香水の匂いが強いのと関係しているのだろうか。

ありがとう星の乙、私の願いを葉えてくれて。

姉さんは婚約破棄をされて田舎の領地に押し込められた。ただ、陛下と王妃は姉さんの優秀さを惜しんでおり、田舎に行ったとしても再起するはず、そしたらその功績をもって王家に再度迎えれようと思っているらしいのがけて見えた。そうはさせないが。

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ショックをけていたあの人をすぐさまめに行きたいが、今を翻しては私が計畫していた事が王家にバレる。さすがにそれをするわけにいかないので、下地は十分に作らなければならない。はやく殿下は星の乙に墮ちてもらわないと。殿下がピナに手を出せば、レミリア以外はウィリアルドの妻に認めないと言い張る王妃も折れるしか無いだろう。

ピナに殿下との既事実を作らせようか、星の乙を選ばざるを得ない狀況に追い込んでしまえばいい。そうすれば、姉さんは優秀だ、田舎ですぐ目立った手柄を立てるだろう。義父は姉さんから、莫大なロイヤリティを産む様々な商品の権利を取り上げてそれで翼をもいだ気になっていたが、あの人のポテンシャルはこんなものではない。

すぐに、王家からの婚約破棄と星の乙への加害によって地に落ちた評判を埋めて余りあるほどの評価を新しく得るだろう。……そう、次期グラウプナー公爵である私の妻に迎えれてもおかしくないほどの。

そう思っていたのに、姉さんがいなくなってからは思っていたように事が進まなくなっていた。いや、姉さんの村は順調に評価されている。廃村に周辺の領地から行き場のない者を住まわせ、仕事を與えて経済を産んでいる。私が予想していた通り、義父が取り上げた商品の上位互換にあたる容の発明もすぐさま行い、公爵領に影響のある土地へ流通させ始めた。あの人の優秀さをまだ甘く見ていたかもしれない。

予定通りにいっていないのは私の方だ。

最初はあからさまにを売るが見目は良い星の乙に陛下をはじめとした年配の男陣は脂(やに)下がっていたのに、近頃はピナの常識のなさや、いつまで経ってもまともに勉強もせずマナーもにつけず、何かあると人のせいにばかりしている彼に厳しい目が向けられている。「レミリア嬢の一件も、星の乙が騒ぎすぎただけでは」なんて気付き始めている聲も聞く。

逆に私達の方が、無理矢理好意を植え付けられたかのようにピナの事を好きにさせられていた。最初は他のと同じ……他のより蟲唾が走る仕草で言い寄ったりれてくる彼に嫌悪しかなかった。今はなぜか、あの時と同じことをされているのに嫌悪と同時に勝手には嬉しいと湧いている。

はやくこのから離れなければ、と私は功績を立てようと気が急いていた。私の婚約者は、レミリアを迎えれるにあたって邪魔になるからとピナに籠絡されたフリをしてステファンやデイビッドと同じく想を盡かされるように振る舞って婚約は解消されている。次の相手は最初いくつも舞い込んでいたが、私達が囲っているピナの評判が落ちるとともにぱたりと途絶えた。

マズイ、このままでは田舎で名を上げる、有能な領主を迎えるには劣ると周りに思われる。義父はこの頃やっと、縁を切ったことで「王家の批判をかった娘を見捨てることで損失を抑える事が出來た」と思っていたレミリアを、作った汚點以上の功績を打ち立て禊が済めばウィリアルドの婚約者に改めて據えようと王妃が考えていたのが今頃知れたのか……それとも姉さんの領地から出回り始めた魔資源の事を知ったのか、再度レミリアと縁を結ぼうと躍起になっている。

姉さんと結婚するために、私との姉弟の縁を切るのに利用した私がいうのもなんだが義父の言う事は都合が良すぎるだろう。それも仕方ないか、魔界からの易品と、姉さんが産み出した新しい発明で公爵領の収は大幅に減した。姉さんの領地から出回ってるものはことごとくグラウプナー公爵領の収源にダメージを與えている。全部考えて追い込んでいるのならさすがとしか言いようがない。

魔界側に姉さんがいる事を知れば、彼と確執がある我が家がやんわり商売から締め出されるのは當然だ。このままでは數年後に公爵領の財政が傾くのを自覚したのだろう。公爵も、奧方も節制とは無縁の人だ。今までは才覚などなくても公爵領のから稅収が黙ってても湧いてきていたが……これからは、今までと同じ覚で金を使っていたら収を軽く追い越すだろう。権力と財を失うことは、そのために娘を切り捨てた彼らへの何よりの罰に思える。これは自分の両親への復讐か。

さらには……側近にまだ私が殘っているからと、王家との縁については楽観していたが、ウィリアルドを廃太子とするという噂が耳にって余計に焦っているらしい。

側室を母に持つ第一王子エルハーシャの婚約者に、再度優秀であると名聲の高まりつつあるレミリアをあてがいたいのだろう。だがそれを通すわけにはいかない。

姉さんを迎えにいくための功績を立てようと思った私の打つ手はどれもこれもうまくいかない。私はこんなに無能だったろうか?

ピナが殿下にあれこれ口を出していた発言に、昔姉さんも似たような社會システムについて話していた事があるなと自分なりにまとめてみた企畫書は、主に資金面について考えの甘さをダメ出しされて叩き臺にすら乗せてもらえない。姉さんが語っていた時にはとても魅力的で「どうしてどこの國も思い付かないんだ、すぐ採用すればいいのに」と思えるような策だったのに。人に言われて「なんでそんな欠點に気付かなかったのだろう」と恥ずかしくなるほど私の考えは足りていなかった。

初めて挫折を味わいながら私は混していた。何故? 姉さんと一緒に、新商品の開発や流通させるときの計畫を話し合っていた時はこんな事なかった。姉さんの大雑把な設計に私が改善點を見つけて「さすがクロードね」って褒められることも多かったのに。學園のレポートだっていつも優を取った上に上位數人として課題を張り出されてもいた。何が変わってしまったのか……。

そこで……私は思い當たった。姉さんだ。私はいつも姉さんと話をして、その會話の中からヒントを得て無意識に修正をしていた。あの人の才能に私は今まで寄りかかっていたのか……

「優秀な次期公爵」と評価をけていた自分が立っていた足元がガラガラと崩れる音がした。

私は次期公爵と目されているが実質的な権力は無い。ただの若い政務だ。自分の一存で婚約者を決められるではなく、グラウプナー公爵に「すべてを許すという言葉と引き換えにレミリア姉さんを呼び戻すのはいかがでしょう? まだあの人に利用価値のある知識や才能はありますから、私の妻にして公爵領に貢獻してもらうのは」と提案するほど切羽詰まっていた。

自分の力で迎えに行きたかったのに……。そのプライドを捨てるほど。幸い姉さんは王家の呼び出しは辺境の領主の登城拒否権を前に出して斷っている。姉さん自が嫌がっているのだろう。そうに違いない。しかし王家がもう星の乙を見限って、再度レミリア姉さんを婚約者に據えようとしているのは嗅ぎ取っていた。王家の命令ではさすがに拒否できない、その前に姉さんを私のものにしておかないと……!

今は魔界との國開始1年を記念して城中が慌ただしくしている。私自もそれにれなく政務としての仕事に追われていた。

この夜會が終わったら、王家は姉さんを陞爵するとの報を摑んでいる。おそらくその際に婚約を再度結ぶ打診をするのだろう。王家の本意に気付かなかったフリをしてその前にけばいい。

姉さんは……レミリアは何て言うかな。家族だったのに男として意識するなんて考えてなかったってびっくりするだろう。でももともと家族だったんだ、きっと私達は夫婦になっても仲睦まじくやっていける。この時までそう信じて疑ってもいなかった。

その夜會で、全てが遅かった事を知った。いや、「いつ」という話ではない。……私は全てを間違えたのだ。姉さんは……私の初は人を悪意をもって傷付けるような人では無かった。知っていたのに。私は知っていたはずなのに……私だけは気付けたのに。

姉さんに救ってもらったばかりの、まだい私が心の奧で泣いている。何であんな噓を信じたのか、姉様はそんな事しない、と今の私を責める。

ああ、そうだ、私は間違えた……

私はあのの呪いに完全に絡めとられていなかった。私だけはウィリアルド達を裏切って、姉さんの味方にもなれたのに。

姉さんは義父から縁を切られているため、実の姉弟ではなかった私達は書類上の家族ですらなくなっていた。

優しい彼なら斷れないだろうと打算ずくで設けてもらった謝罪の場で、悲しげな瞳に見つめられて発狂しそうになった。縋ろうとしたら靜かに拒絶されて、姉と呼ぶことさえ出來なくなったと理解して泣きびたくなる。

……姉さんが、ウィリアルド殿下を心からしていたのは知っていた。私が本當に姉さんをしているなら、その仲を応援だけして、こんな真似をするべきではなかった。分かっている。私が間違えた、私は愚かだった。

している人を手にれようとして、そのしている人をわざと傷付けた。そんな私はあの人に相応しくない……幸せを失ったのは、完全に自業自得だった。

課金アイテム使ってても、ちゃんと好かれてたわけじゃなかったって話

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