《悪役令嬢の中の人【書籍化・コミカライズ】》2
レミリア様に仕える私の朝は早い。と言ってもレミリア様本人は留守にしているのだが……
冬を前に、村の人數分の防寒と靴を揃えたい、とその資金のために冒険者稼業をこなしに行っている。何故そんなに盡くすのですか、これではレミリア様が養っているようなものではないですか。そうお尋ねした事もあるが、「これは投資よ?」と譲らない。そして今日も、命の危険すらある依頼を領地のためにこなしてくるのだ。
小さい村とは言え、領主であるレミリア様が自らだぞ……信じられるか? はぁ……本當にレミリア様には頭が下がる。
何度か「私もお供します!」と主張しているのだが、その度に「塀と堀があるとは言え、この村は子供が多いからスフィアみたいに戦える人には殘ってしいわ」「わたくしの留守の間にここをお願いしたいの」と心配そうに言われたら食い下がる事なんて出來ない。植者も増えて、それなりに戦闘が行える者がいるな! よし、私が抜けてもこれなら今までと防衛力は変わらない! と意気揚々と提案するたびに同じ返答だ。もう……っ、レミリア様は、もっと自分の事も大事にしてください……! と何度思ったことか。
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私達の主人(あるじ)が良い人すぎてつらい……!
これは村の住民の総意である。
さて、早起きして何をするかと言えば……軽い朝食をとった後はまず屋敷の掃除だ。領主の館……と村人は呼ぶがごく普通の二階建ての家屋である。しかも最近植者のために新築の家を數軒建てているため、それを見た後だと「ボロい」と思えてしまう。
私が一緒に住むようになってから、やっと腐った床を張り直したくらいだからな……ほんと良い人が過ぎる……! 自分のの回りのものは最低限で、先に村の公共の利益になるものを……となってしまうのだ。いくら言っても執務機やベッドもまともなを買おうとしないので、今度村人全員でお金をしずつ出してプレゼントしてしまおう、と計畫している。発起人は村長代理のソーンだ。
レミリア様に似合いの品を、しかしレミリア様に相応しい高貴な品はこの生活にそぐわない、と遠慮してしまうだろうからバランスが難しいな……。
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私は考え事をしつつも家中の掃除を終わらせた。他の家に比べて大きくはあるが、本來の貴族の屋敷よりはるかに小さいので私一人で難なく終わるのだ。
晝食までの時間は村の中を回って過ごす。村人達に挨拶をしつつ、何か困っていることやしいものは無いかを聞いていく。
「しいもの……? は無いけどレミリア様にお會いしたいなぁ……あのねスフィアさん、ぼく文字が書けるようになったんだよ。お手紙書いたの」
「そうか、それはすごいなぁ!」
この子はこの村の初期からいる元孤児で、村に來てすぐの頃調を崩して一晩中看病してもらった事があってからレミリア様に酷く懐いている。
私も當初は知らなかったが、この村の植者はほとんどが魔族のの混じったもので構されていた。魔族とは口承された話でしか聞いた事はなかったが、そうと分からないレベルで人に混じって暮らしているとは知らなかった。語の中では悪魔と同じようなものとして書かれていることもあるが、全く別の存在だと言うことも教えてもらった。悪魔の悪評のせいで魔族は人種を隠して生きる事を余儀なくされているため、各地で貧しい暮らしをしている事が多いらしい。難儀なことだ。
レミリア様に看病してもらったこの子供の調不良も魔族獨特のものだったそうで、治癒魔法は使えるが魔族のに詳しくなかったレミリア様はうまく治せず、手を握りながら添い寢しつつ一晩を共に過ごしたと聞いた。くっ、うらやま……ごほん。なんてお優しいんだレミリア様……!
キラキラした瞳で「次はいつお會いできるかな」と楽しみにするこの子の気持ちはよく分かる。よく分かるが、レミリア様は素晴らしい領主様であるが故に留守がちなのだ……。
まだこの村には産業と言えるような産業は無く、畑も小さい。王都で魔道屋の店主をやっていたソーンが弱いポーションを作れるのと、たまにどこからか魔道を仕れて隣町かその先の大きい街まで行って売っているが、それで発生する納稅なんて微々たるものだ。ちなみに儲けをそのままレミリア様に渡そうとすると遠慮されてしまうので村の子供達に適當な手伝いを命じてその報酬にと頻繁に炊き出しをして還元しているそうだ。いい心がけだ。
しかし村の運営費はレミリア様の冒険者としての稼ぎに完全にほぼ依存している。この狀況は良くない。
ただ、魔族達は魔法の作に長けていて、人とは比べにならない生産力で農業や製造業が出來る可能をめている。これには魔族の子供も含まれるので、軌道に乗りさえすれば……と今は試行錯誤している毎日だ。今は村の中で食べるものを作るだけで一杯なので、早くレミリア様の負擔をしでも減らして差し上げたい。
かつてのレミリア様の発明した様々な便利な道をここでも作れれば儲けになるだろうが、殘念ながらそれらの特許はグラウプナー家が取り上げてガッチリ握っているので、こちらに発明者がいると言うのにどうする事も出來ない。
そうして狹い村の中、全員から話を聞いた結果「レミリア様、もっと休んでください」という要が今日も一番多かったです、と帳面にまとめた私は狩りに向かうために裝備をにつけた。
準備を終えて獲を乗せるために村の農耕馬を借りようと廄に向かう途中で旅人風の格好の男とすれ違う。當然村の住民では無い、というか彼らが王家が差し向けたレミリア様の監視だと言うことも知っているが。
最初はあのピナというに骨抜きにされた騎士が混じっていて「星の乙にまた危害を加えないか俺がしっかり見張らないと!」と寂れた村の周囲に詰めかけて來ていて大層目立ったそうだが。しばらくはレミリア様が隣の村に食料の買い出しに行くのにも、村の運営費を稼ぐために冒険者としてダンジョンに潛るのにもついて回っていたそうだ。なんと迷な。
私がこの村に移住する頃にはすっかり本格的な監視は無くなり、隣町に宿を構えて定期的に村に來ては村人にレミリア様が何をしたのか簡単に聞くだけになっていたが。レミリア様が潛るダンジョンに、実力的に彼らがついていけなくなったと言い換えても良いが。
……早いところ、レミリア様が心配なさらずに託せるほどの防衛力を充実させないと私もついていけなくなってしまいそうな気がする。まずい。
前は「俺達の目が屆かないダンジョンの中で何をしているやら!」と騒いでいた奴もいたが、毎回自分を顧みずに時には怪我まで負って、「これで新しい植者の住む家が造れるわ」と満面の笑みを浮かべるような慈悲深いレミリア様を見てきた他の監視役は白い目を向けていた。そう言えば最近その騒いでた男を見ないな。シフトの都合かと思っていたが結構結構。
近頃は監視役として度々村に訪れる彼らも、実際に目にしたレミリア様と王家から任務の際に聞かされた「悪レミリア」とどちらが真実か分かったようで、「今は俺達誰もあんな話信じちゃいないけど、國に大聲で反論する事もできないからなぁ」とボヤいているのを聞いた事もある。
その悔しさは分かる……よく分かるぞ……!
だが私もがむしゃらに真っ直ぐ走るだけの脳筋ではない。今聲を上げても王家に握り潰され、目を付けられて監視が再度厳しくなるだけと言うのは分かっている。
今は雌伏の時。住民を増やし、産業を興し、稅収を上げて領地として力を付けるのだ!
「目下の問題は今年の冬越しだな……」
住民の防寒著と靴はレミリア様が、各家庭にかまどを兼ねた暖爐はソーンが作り方を教えて各家庭で作業していると聞いた。
子供だけで暮らしている家には厚手の寢も用意してやりたい。後は……乾燥にかかる時間を考えると薪も準備しなくては。やる事が盛り沢山で毎日疲れ果て、その上決してかな暮らしとは言えないが、私を含めた住民に悲壯は一切無かった。
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ホビージャパン様より書籍化することになりました。 書籍化作業にあたりタイトルを変更することになりました。 3月1日にhj文庫より発売されます。 —————— 「俺は冒険者なんてさっさと辭めたいんだ。最初の約束どおり、俺は辭めるぞ」 「そんなこと言わないでください。後少し……後少しだけで良いですから、お願いします! 私たちを捨てないでください!」 「人聞きの悪いこと言ってんじゃねえよ! 俺は辭めるからな!」 「……でも実際のところ、チームリーダーの許可がないと抜けられませんよね? 絶対に許可なんてしませんから」 「くそっ! さっさと俺を解雇しろ! このクソ勇者!」 今より少し先の未來。エネルギー資源の枯渇をどうにかしようとある実験をしていた國があった。 だがその実験は失敗し、だがある意味では成功した。當初の目的どおり新たなエネルギーを見つけることに成功したのだ──望んだ形ではなかったが。 実験の失敗の結果、地球は異世界と繋がった。 異世界と繋がったことで魔力というエネルギーと出會うことができたが、代わりにその異世界と繋がった場所からモンスターと呼ばれる化け物達が地球側へと侵攻し始めた。 それを食い止めるべく魔力を扱う才に目覚めた冒険者。主人公はそんな冒険者の一人であるが、冒険者の中でも最低位の才能しかないと判斷された者の一人だった。 そんな主人公が、冒険者を育てるための學校に通う少女達と同じチームを組むこととなり、嫌々ながらも協力していく。そんな物語。
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