《悪役令嬢の中の人【書籍化・コミカライズ】》魔族の王の悩み事

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こんな事になると思っていなかった。深く考えずに口にした発言だったのにと後悔だけがの中に広がる。

「兄さん、頼むよ。理由を聞かせてくれないか?」

「いや……別に……特に理由はなくてだな」

「何の理由もなしにこんな事を言い出すなんて……そう言われて納得する訳ないだろう? 何があったんだよ……僕にも言えないような事なのか? 兄さん……」

城の料理長として毎日平穏に仕事をしているこの弟まで誰かが呼んできたらしい。余計な事を。

悲しそうな表のクリムトの目を真正面から見ることができずに、心の中の疚しさからつい俺は顔を伏せる。まずいな、レミリアやアンリに伝わる前にこの話に良い落とし所を見つけなければ。

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「だって、角を……角を切り落としたいだなんて!! 本當に、兄さんに一何が……!」

そう、この騒は俺が「角を切り落としたい」と言い出した事が発端になっている。正直周りがこれほど騒ぐと思っていなかったので、表には出していないが俺は心とても後悔していた。

問い詰められても何も言わない俺に痺れを切らしたのか、クリムトにしては珍しく聲を荒げている。しかし、理由を口にする訳にはいかない事が俺にはあるのだ。

「僕の角もそうだけど、兄さんの角も生え変わるものじゃないのは分かってるでしょう? 切り落としたら多分、二度と生えてこない」

「それは、分かっているが」

いや、確かめた訳ではないので生えてくるかもしれないが。そもそも魔族の生態は魔族である自分達もよく分かっていないのだ。個差が大きすぎると言うのもあるが、種族や伝などについて研究する余力が無かったというのが一番の理由だが。現に同じ魔族でも角が毎年自然と生え変わる者もいる。だが俺やクリムトのこの角は僅かずつだがび続けているし、本は皮の下に潛っていて強くぶつけると痛みもあるので恐らく便利に扱える角ではないだろう。それが分かっていても、この邪魔臭い角を切り落としてしまいたい。そう思ってしまったのだ。

「その、クリムトだってこの邪魔な角が無かったらと話した事があっただろう? 仰向けでしか寢られないし、被って著る服は著られないし……」

「そんな冗談まじりの話ではなかったと聞いてる。切斷面や痛覚の処理についてまで調べていたんだろう? の文獻まで外國から取り寄せて……」

「だ、誰だその話をお前にらしたのは……」

「誰かは問題ではない。兄さんの側近が心配してくれたってだけだ。俺や兄さんの角は魔を展開する時のとしても関わるのに……」

まぁ、確かに犯人探しは今解決するべき話ではない。今大事なのはこの騒ぎをいかに素早くおさめるかだ。

クリムトの言う通り、レミリアやレミリアが教え込んだ浄化師達が魔國全域を定期的に浄化してくれているので出現する魔の脅威度はそれ以前とは比べにならないくらいに低くなった。だが俺という戦力に影響が出るのは懸念だろうな。

「そうだな、まだ強い魔も完全に出なくなった訳ではないし……」

「いや、兄さんの事を戦力だけを惜しんでそう言ってる訳では……まさか何か病気に……? それで角を切斷する必要が……?!」

「いや! それはないから安心しろ」

「良かったぁ……でも……」

では何故? とその目が語る。俺のを本気で心配してそう言ったクリムトに罪悪が刺激されて、俺は再び目を逸らしてしまった。本當に、こんな大騒ぎになるとは思っていなかったんだ。

言えない……レミリアに膝枕されて「耳掃除」というものをされているアンリが羨ましくて「本気で角を切り落としたい」と思ったからだなんて……。いや、膝枕が羨ましかったということではなくて。俺がしかった家族団欒の姿を見たからそこにざりたいと思ったというとても純粋な理由だ。疾しい思いはない。本當だ。

俺もしてしいと申し出たら「アンヘルは角があるから膝枕は無理ね」と、人間の醫者が歯や耳を診る時用の椅子を使うって言われてすごくがっかりしたとか、それだけが理由ではない。

昔クリムトと話したような、切るなんてできないからこその「邪魔だな」という愚癡半分ではなく実際「どうにか角を切り落とせないものか」と本気で模索したのは認めよう。

だからと言って、周りの奴らがこんな一大事にするとは……。

「僕には話せない事なのか……やはりレミリアさんに……」

「それは本當にやめろ! 何でもない!! 何でもないから!!」

「そうだな、アンリ君もこの前風邪を引いて調を崩したばかりだし、余計な心配はかけたくないな……」

「頼むクリムトそうやって深刻な話にしないでくれ」

角の切斷についての調べをしていたのを見つかった時には「何でもない」と言って時間が経てばあいつらも忘れるだろうと思っていたのに。俺は心盛大に冷や汗をかきながら、「何て誤魔化したら納得してくれるだろうか」と言い訳を大急ぎで考えていた。

この後しばらくごまかしたが通用せず結局正直に話す羽目になってクリムト君とミザリーさんに「はぁ〜〜〜〜」ってクソデカため息をつかれる

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